スバルが「動的質感」と突然のように言い出したワケ

業界 レスポンス

先日開催されたスバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会において、同社 技術本部車両研究実験第一部長(兼)スバル研究実験センターセンター長である藤貫哲郎氏は、現在のスバルの運動性能開発への取り組みを説明した。藤貫氏は、現在のスバル車の動力性能を司る人物である。

「我々は新型の『レガシィ』から“動的質感”という言葉を使って開発を進めています。今まで新車説明会などで性能やスペックを示していた数字は、いわゆるピーク値でした。それだけでなく、その先にあるスムーズさや気持ちよさといった感性領域をきちんと作り込んでいこうという取り組みです」と言うのだ。

確かに最近のスバルの新型車の説明では、「ハンドルを切った後の反応時間の短さ」や「振動の少なさ」「剛性の高さ」などの数値の良さが盛んにアピールされていた。しかし藤貫氏は、こうした数字を「それは定常領域の数字です。旋回でいえば旋回しきった最後の姿。ロールの大きさや限界の高さなど、ピークの数字です。それは必ずしもクルマの良さを示していません。そこには質感がないと思っています」と言う。そして大切なのは、限界までいく途中の「過程」にあるという。ハンドリングでいえば、ドライバーがハンドルを切り始めた後、ロールしきるまでの間の動き。ほんのコンマ秒の動きだ。そうした過渡領域をコントロールすることが、気持ちの良さなどの感性領域を高めることになるという。

ではなぜ、スバルは突然のように、そのような主張を始めたのだろうか?

「この考えは新しいわけではありません。もともとスバルでは、ドライバーの官能評価を大切にしてきました。ただ、そうした部分を計れる技術がなかったんですね」というのは藤貫氏の下で、共に開発を行う荒井英樹氏だ。藤貫氏も「動的質感って、数字で表しづらいですよね。だから避けていたんですよ」と同意する。

しかし、その結果、新車の説明ではしきりにピーク値の数字が飛び交うことになってしまった。

「社内的に変な方向に行きつつあるという危惧もありました。“前よりもピーク値で良くしていきましょう”と、ずっと進んでいたので、これで本当に良い方向に進んでいるのかな? と。ピーク値は、それはそれで大切なんだけど、それだけじゃあクルマづくりをしていることにはなりません。そこを今回はきちんと言おう! ということです」と藤貫氏。

また、スバルでは20年以上も前から欧州車の走りを目指していたが、「20年たっても追いつかない」という思いもあった。その悲願を達成するには、現実をしっかりと直視する必要がある。そして、欧州車のレベルを実現するには、開発チームから生産の現場まで感性領域を理解しなくてもならない。

「欧州に4年間駐在していて、それを痛感しましたね。向こうのメーカーの開発の進め方はそうなんですね。あるキーマンがいて、そこから枝葉の開発メンバーまでみんな同じ考えでやっています。工場の人も、毎日、200kmを通勤したりしますから、話が早いんですね」と荒井氏。

しかし、日本では、そうした環境にない。そのために藤貫氏たちは、測定や評価の技術を磨いた。計測手法や機器を新たに開発したのだ。その努力の末に、これまで見えなかった感性領域が少しずつ見えてきた。そして数値化できるようになれば開発のメンバー内やサプライヤーとの共通認識が生まれ、製品に落としこむことが可能になる。だからこその冒頭の発言である。いわば、決意表明と言ってもいいだろう。

「現状は、まだハッキリと明言できるようなものはありません。ですが、少しずつでも分かったことは、年次改良などで取り入れていきます。そして2020年ごろには欧州車のレベルに近づけるように努力していきたいと思います」と藤貫氏は語った。

  • 鈴木ケンイチ
  • スバル技術本部車両研究実験第一部長(兼)スバル研究実験センターセンター長である藤貫哲郎氏(左)と荒井英樹氏(右)《撮影 鈴木ケンイチ》
  • スバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会《撮影 鈴木ケンイチ》
  • スバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会《撮影 鈴木ケンイチ》
  • スバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会《撮影 鈴木ケンイチ》
  • スバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会《撮影 鈴木ケンイチ》
  • スバル2014年モデルの各車ラインアップ試乗会《撮影 鈴木ケンイチ》
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