【JALと働くクルマ】ハイテク航空機を押す、「職人技」というローテクの極み

業界 レスポンス

最新のハイテク機器を満載した航空機。しかし、どんなに最新のモデルでもできないことがある。それが地上での後進だ。ターミナルに頭を向けて停機する航空機が滑走路に向かうためには、補助となる地上の車両が必要となる。それが「トーイングカー」だ。今回、羽田空港でJALが運用する「トーイングカー」と、その訓練の風景を見学することができた。

見学できたのは、「トーバー」という金属のバーを利用する方式の「トーイングカー」だ。取材陣の前に現れた小松製作所製の「トーイングカー」は、全長8.6m×全幅3.2m×全高2.8m、車両重量50.5tにもなる羽田空港の中でも最大規模のモデルであった。

エンジンは1万1040ccの6気筒ディーゼル・ターボ。最高出力295ps/最大トルク123.2kg-mものパワーを前進4速・後退2速のセミオートマを介して、4輪に伝える。フルタイム4WDは、4WS機構も備わる。最高速度は30km/hだが、航空機を押すときは10〜15km/hほどだという。

この巨体と重量、大パワーは、100tをゆうに超える巨大な航空機を押して移動するためにある。50t超えという驚くべき車両重量は、その重さを使ってタイヤに荷重をかけるため。荷重がたりないと、パワーが空回りしてしまうからだ。

広い滑走路の端に設定された訓練エリアにあったのは、棒を三角形に組んだダミーであった。格好はそっけないが、航空機と同じように前1輪、後ろ2輪の3輪車。これを使って、約1か月半の研修を行い、その後、約3か月の実地訓練を経て、実機を押すようになるという。

この訓練の難所は、「トーバー」という棒を介して航空機を押す場面。「トーイングカー」が直接、航空機を押すのではない。しかも、航空機と「トーイングカー」の間にある「トーバー」は、ただの金属棒。ショックを減衰する機構もなれば、左右をどうこうする機構もない。操作できるのは「トーイングカー」のステアリングのみ。つまり、まったくの人間による技巧のみが求められる作業であった。

「お客様にショックを与えないように、押している最中ギヤは2速のまま。変速はしません。ハンドルを左右に切ると、ブルブルという振動が航空機に伝わりますので、それも行わないようにします」とは「トーイングカー」訓練の教官を務めるJALグランドサービス東京国内事業部ランプコントロール課の渡辺恭尚氏。つまり、押し出したら修正舵としてハンドルを切ることもいけないし、速度も一定を守らなければならない。まさに一発勝負なのだ。

そうした訓練の結果、通常業務では、「失敗して押しなおすようなことは、ほとんど発生しません。もちろん、そのようになったときは、安全を第一にして、押しなおす選択はするようにしていますよ」と渡辺氏。

しかし、技量が上がれば、また別の問題も発生するとか。

「訓練生から1年くらいのときにありがちなんですけれど…。私たちの中にも、きれいに決めよう! と思うと、理想のラインがあったりします。“あと、もう少し押すと自分の理想になる”というポジションがあります。しかし、それをすることで3m、5m長く押すことになってしまいます。その場合、お客様にとっては、その3m、5mが無駄な時間でしかありません。コンテストをやっているわけではありませんからね。何が大切かというと、お客様の時間と、定時性と安全です。そういう戒めもあわせて腕を磨いています」

職人芸とでもいうべき技量へのこだわり。こうしたこだわりが、旅客機の運用を支えているのだ。

  • 鈴木ケンイチ
  • 巨大な航空機を押すトーイングカー《撮影 鈴木ケンイチ》
  • 巨大な航空機を押すトーイングカー《撮影 鈴木ケンイチ》
  • 巨大な航空機を押すトーイングカー《撮影 鈴木ケンイチ》
  • 巨大な航空機を押すトーイングカー《撮影 鈴木ケンイチ》
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  • 巨大な航空機を押すトーイングカー《撮影 鈴木ケンイチ》
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