【池原照雄の単眼複眼】トヨタ決算にもうひとつの最高更新…合併後初の2ケタ利益率

業界 レスポンス

◆営業利益率が新生トヨタでは最高の10.1%に

トヨタ自動車の2015年3月期連結業績は営業利益、純利益ともに2期連続で最高を更新した。そのなかでマスメディアにはほとんど報道されなかった、もうひとつの最高更新があった。それは本業収益のバロメーターである売上高営業利益率であり、前期は10.1%だった。1982年7月に工販が合併して今のトヨタになってからは初めての2ケタ乗せであり、直近のピークだった2007年3月期の9.3%を上回った。

トヨタの15年3月期決算は、2兆1733億円(前期比19%増)と日本企業として初めて2兆円台に乗せた純利益が注目されたが、営業利益も20%の増益を確保し2兆7505億円に達した。営業損益段階では対米ドルを中心とした円安による「為替影響」が2800億円の増益効果となったのが大きいが、「原価改善」も同額で最高益に寄与した。

世界を見渡すと、自動車製造業で営業利益率が2ケタになるのは稀だ。前期では北米で記録的な販売が続き、為替効果も満喫している富士重工業が自身の記録を更新する14.7%となった。これは少量生産の高級スポーツカーメーカーを除く世界の量産型メーカーでは最高だ。トヨタと同じ1000万台メーカーでは、独VW(フォルクスワーゲン)が6.3%、米GM(ゼネラルモーターズ)が4.2%(いずれも14年12月期)であり、トヨタはライバルを大きくリードしている。

◆台数成長に距離を置くことで加速した体質改善

決算発表会見でトヨタは、合併後32年間で過去最高になった利益率に言及することはなく、経理を担当する小平信因副社長は「粗利の改善など販売面の努力もあって収益構造の改善が進んだ」と、さらっと評価した。リーマン・ショックによる赤字転落直後に就任した豊田章男社長が、ここまで一貫して「どのような外部環境の変化にも利益を出し続けられる体質への転換」を優先してきた取り組みが、実ってきた。

この間、トップとして台数の成長には、むしろ距離を置いた。トヨタの前期のグループ販売は1017万台で14年3月期からは、わずか3万5000台しか増えておらず、14年度の販売実績では独VW(フォルクスワーゲン)に首位の座を譲っている。VWとは対照的に台数を前面に出さないトヨタの舵取りは、むしろ体質転換を確実に早めたといえる。

赤字からの業績再建でトヨタが掲げたキーワードは「粗利の改善」だった。あらゆる経費や投資の見直しにより、だぶついていた固定費を徹底して削減。さらに仕入先と一体になった原価低減との相乗効果で、価格競争力に磨きをかけた。そうした地合いのなかで、台数を求めるのでなく、粗利を優先した。営業部門に過度な台数の圧力をかけないことが、着実に収益力を高めた。

◆今期は為替が減益要因でも最高益更新へ

もっとも、前期は円安効果が2800億円に及んだ。首脳陣が2ケタ利益率に言及しなかったのも、外部環境の影響大と見ているからだろう。だが、今期(16年3月期)の業績予想には「収益構造の改善」が更に進む姿が散りばめられている。営業利益は2兆8000億円と、今期も最高を更新するが、増益幅は2%。いつもながら、トヨタの期初時点の予想は保守的であり、今期もそれは変わらない。

グループ販売台数は1015万台で0.2%のマイナス成長とした。販売台数面では、なお「意思ある踊り場」ともいえる状態だ。為替レートも1ドル115円と足元より円高に見ており、営業損益段階では為替全体で450億円の減益要因になる。注目すべきはここであり、円安効果が削ぎ落されても、営業利益は最高を更新、その利益率も10.2%と前期を少し上回る予想としているのだ。

ただ、今期は新しい開発手法であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)による1号車の投入や、3年凍結した新規工場投資の再開(メキシコ新工場と中国新ライン)が動き始める。決算会見で豊田社長は「“意思ある踊り場”から持続的成長への“実践段階”に入る。まさにこれからが正念場」と強調した。過去最高の利益率に高揚するにはまだ早すぎる、と言わんばかりだった。

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