【土井正己のMove the World】「東京モデル」を世界へ…No.1都市となったのはなぜか

社会 レスポンス

先日、海外からの客人を案内し、銀座のディオール、エルメスなどの高級ブランド店を徘徊した。土曜日の朝にもかかわらず、銀座は外人客で賑わっており、歩いていても、中国語、韓国語、英語、仏語など色々な言語が飛び交っている。

そして、同日に目にしたニュース。英総合月刊誌「モノクル」が「世界の住み良い都市ランキング」で東京を1位に選んだ。大都市にもかかわらず、犯罪が少ないことや静かで緑が多いことが評価されたという。福岡(12位)、京都(14位)も上位に入っている。企業ブランドや収益ランキングでは、どんどんと順位を落としているのに、こうした都市の順位では日本の都市が必ず上位にランクされている。

◆「失われた20年」ではなく「構造変革への20年」

日本経済を語る時、良く使うワードとして「失われた20年」というのがある。これは、1992年頃のバブル崩壊から20年間、日本の成長がなかったという意味で使われている。

しかし、この見方は誤っていないか。失われたのではなく、「構造変革への20年」というのが正しい見方であろう。構造変革とは、まず、銀座の街にみられるような「コスモポリタン化」が挙げられる。今や東京は世界の人が集まる魅力ある街になった。そして、もう一つは「自然環境化」だ。東京は、私が住み始めた30年前と比べると緑が増え、川が澄み、空気もきれいになった。道にゴミを捨てる人も見かけないし、交通渋滞も減ったし、ハイブリッドカー比率も高い。他の巨大都市には見られない「クール」な光景だ。自然環境を重視しているからこそ、世界から人が集まってくるのだろう。

◆経済活動を「量」で規制しなかった東京

東京も、1960〜70年代には公害に悩まされた時代はあったが、経済を「量」で規制したことはない。例えば、シンガポールでは、自動車の新規登録台数(クルマのナンバープレート発行枚数)を規制している。クルマを買うには、まず、ナンバープレートを買わなければならないが、それがオークションであるため100万円以上もする。クルマで街の中心に入るにもトールゲートで課金される。とにかく経済活動を「量」で規制する。こうした都市運営モデルは、昨今、上海、北京、広州など中国に導入されてきている。「量」での規制は、中国の経済活動の停滞に多少なりとも繋がっている。

日本は、1970年のマスキー法以来、燃費や排ガス規制などクルマの環境規制を厳しいものにしてきた。そして工場にも排水や排ガスに厳しいルールを課すなど、経済活動の「質」の分野で規制強化を図った。東京では、ディーゼルの排ガスに大変厳しい基準を設けている。こうした厳しい規制に対して企業は、各社が環境技術競争を繰り広げ、よりクリーンなクルマの開発に取り組んだ。

結果として、日本は、「環境」と「経済」の両立ができたということだろう。企業も世界での競争力が大いに高まった。歴史感を持って言えば、日本は、過去20年間経済が停滞したのではなく「環境と経済のバランスある成長ができる構造転換を成しえた」と評価したい。その証拠が、「世界の住み良い都市ランキング」で東京が1位になったということだ。

◆「東京モデル」で世界に貢献

2020年には、東京オリンピック/パラリンピックを迎える。それに向けて多くの外国人の方が日本を訪れるだろう。その時に東京が何を発信するのかが重要だ。私は、この「環境と経済のバランスある成長」の軌跡をモデル化し、さらに障害者の方への配慮をさらに高めた都市のあり方を取り入れ、「東京モデル」として世界に発信してはどうかと考える。

東京は、アジアからの観光客にあふれ、アジアの高度成長をエンジョイできる立場にある。一方、アジアの諸都市は、現在、都市問題に苦しんでいる。「東京モデル」でアジアの諸都市をサポートし、各国の健全な経済成長に貢献できれば、本当の「No.1都市」になれるのではないだろうか。

<土井正己 プロフィール>

グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事

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