【未来対談 1】最初に飛び込むのが信条、FCVはこれ一台で勝負できる…松下宏

エコカー レスポンス

自動車を取り巻く環境、そして資源エネルギー問題への解決に向けた「未来への第一歩」として、トヨタは水素で走る燃料電池自動車(FCV)『MIRAI(ミライ)』を他社に先駆け市販化した。

今回、いち早くMIRAIを購入した松下宏氏は自動車評論家に加えてMIRAIオーナーとして、トヨタ自動車製品企画本部 の田中義和主査に取材を申し込んだ。田中氏はMIRAIだけでなく『プリウスPHV』をはじめ先進パワートレーンの開発を主導してきた。そこでプリウスPHVオーナーでもあるレスポンスの三浦和也も行司役として対談に参加。「MIRAIのある生活」、「MIRAIに求めるもの」について本音をぶつけあった。

第一弾は、なぜFCV、PHVを選んだのか。所有することで見えてきた、次世代カーの課題について取り上げる。

◆MIRAIはこれ一台だけで勝負できる

三浦:今日は松下さんの自宅にMIRAIが納車されたことを受け、トヨタの新型FCVであるMIRAIを通して、真剣に自動車の未来を考えたいと思います。松下さんがMIRAIを購入された理由をまずお聞きしたいのですが。

松下:そう、自動車の未来を知りたくてマイカーをMIRAIにしました。やっぱり新しいパワートレインに惹かれました。自動車評論家としてもそうだけど、個人としても、まったく新しいパワートレインのクルマに乗りたいと思いましてね。実は、トヨタを購入するのは、初代『プリウス』以来ですよ。初代プリウスも、正式な発売前に「買いますよ」と言って手に入れました。私、そういうのには飛びつきます。

MIRAIを買うと決める前、『リーフ』もPHVも候補にしていました。だけど、私が住む東京の集合住宅では1階に駐車場があっても充電設備が置けないので、現実的に買えないのです。なおかつ、EVの場合、日産は「これ1台ですべて間に合いますよ」と売り出しましたが、箱根への片道も行けないようなクルマでは取材にも使えませんから、実用面では無理。そういう意味でMIRAIは、水素ステーションの制約がものすごくあるとはいえ、これ1台だけで勝負ができる。それが買った理由のひとつです。

さらに言うと、FCV開発のスタートはメルセデスベンツの方が早かった。他にもGMなどのライバルがいる中で、MIRAIが量産車として最初に市販できた。日本のメーカーが最初にやったというのは、初もの好きの日本人としては誇ること。「これはなんとしても買わなければ!」と。だから、もしもホンダが先に出していればホンダに飛びついていたというわけです(笑)。

三浦:田中さんはMIRAIの開発の前にはプリウスPHVを担当していらっしゃいました。僕は3年前にプリウスPHVを購入して、すでに2月に最初の車検を迎えました。

田中:ありがとうございます。PHVも6年間担当していましたね。最初は、ほんの少量の実証試験車を10台くらい、2代目プリウスを改造して作りました。それから3代目プリウスが出て間もないころに、充電口を前のフェンダーに置いたのを作りました。それで使っていただいた結果、いろいろと直して作ったのが、2012年の頭に販売を開始したクルマになります。そういう意味で、プラグインも思い入れのあるクルマです。

三浦:僕も松下さんと同じようにプロトタイプの段階で購入を決めました。この先、プラグインハイブリッドがあたりまえになる時代が来ると信じて、国内で発売されたはじめてのプラグイン・ハイブリッド車をエポックメイキングな車両として購入しました。ナンバーに選んだ2020は、購入することで誰よりも早く2020年の未来を見てみたいという気持ちです。モデルチェンジを経て、もっと安く、もっと良い性能のPHVがでてくることは百も承知ですが、タイムマシンを買うと思えば安いもんです。

田中:うちにもプリウスPHVがあります。家内がよく乗るんで、ちょこちょこと短距離走行がメインですから、たぶん8割強がEVですね。

三浦:僕の場合、3年ちょっとの総走行距離は2.6万kmで距離のEV比率は47%でした。ドライブ回数での比率はおそらく9割以上です。EV走行の割合が落ちるのは年間数回の長距離ドライブですね。プリウスPHVの場合約20kmはEV走行できるので、20kmの短距離ドライブを毎日10日連続繰返してもEV比率は100%です。しかし1日で200km走る長距離ドライブではEV比率は10%程度になってしまう。

買い物や送り迎えなど日常の短距離用途では自宅にEVがあるのと変わらない。その上で長距離ドライブ用にレンタカーでハイブリッドを借りていると同じようなものです。というわけで私は実感しているのですが、トヨタの戦略としても、今はハイブリッドが普及していますが、次のステップはPHVということですよね?

田中:それは間違いありません。トヨタのハイブリッドシステムは構造的にPHVにし易いというメリットがあります。

◆FCVはEVの先にあるものではない

三浦:では、その先にFCVの社会がくるだろうと?

田中:これは言い方が難しいんですけれど…。電気って、すごくいいんですよ。電気は、しっかりと広げていくべきだと思います。それはPHVだけでなくピュアEVも。

たとえば、日本はこれから高齢化社会になります。そうなったときに、うちの母親もそうなんですけれど、足が悪くなると、移動はしたいんだけど動けない。そうするとパーソナル・モビリティみたいなものが絶対に必要なんですね。じゃあ、パーソナル・モビリティをFCVで作れるかというと、FCVには水素タンクが必要なのでそう簡単に小さくできません。また近距離移動のモビリティは、大きな装置ではなくてもよくて、そういう意味ではEVが一番いい。一方で、PHVは近距離も長距離も両方カバーできるので、それもすごくいい。そこは絶対に手を緩めずにやっていきます。

ですからFCVは、EVの先にあるものではないんですよ。今、FCVは一歩目を踏み出したところなんですけれど、僕は共存していくと思うんです。もっと言うと、FCVの普及は「オール・オア・ナッシング」ではないと思っています。

松下:オール・オア・ナッシングではない、というのは。

田中:全国に必ず、グローバルに完璧に広がらないとダメということではないということです。たとえば、大エネルギー消費地である東京のようなエリアにステーションを作ればいい。エリアごとでもいいと思うんですね。極端に、すべてが水素にならなければいけないとか、すべてが電気とか。そういう極端なことを言うと、なかなか普及は難しい。用途に応じてとか、エリアを限定してうまく使えば、いろいろなエネルギーミックスが実現できるということではないかと思います。

三浦:水素社会が訪れることと、PHVやEVが普及していくことは、全く違う話じゃないと。水素をどこか別の場所から持ってきて、それで発電して電気で動くのも水素社会ということですね。

松下:エネファームのような、家庭用燃料電池も、ますます増えていくでしょうしね。

三浦:その中の一部のクルマが、直接、水素で走ることができる、と。

田中:そうです。水素で発電した電気をパーソナル・モビリティに使っても、CO2フリーになります。そういう意味では、決して電気と水素というのは、相反するものではない。電気、水素、再生可能エネルギーをうまく使うことが、本当の意味の水素社会です。リニューアブル、かつ、サスティナブルな社会だと思いますね。

  • 鈴木ケンイチ
  • 自動車評論家の松下宏氏、トヨタ田中義和主査、レスポンス三浦和也によるスペシャル対談《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家の松下宏氏《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家の松下宏氏、トヨタ田中義和主査、レスポンス三浦和也によるスペシャル対談《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家の松下宏氏、トヨタ田中義和主査、レスポンス三浦和也によるスペシャル対談《撮影 太宰吉崇》
  • レスポンス編集長三浦和也《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家の松下宏氏、トヨタ田中義和主査、レスポンス三浦和也によるスペシャル対談《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家の松下宏氏《撮影 太宰吉崇》
  • トヨタ自動車 製品企画本部 の田中義和主査《撮影 太宰吉崇》
  • FCV向け水素ステーション《撮影 太宰吉崇》
  • トヨタMIRAIの水素充填口《撮影 太宰吉崇》
  • 自動車評論家松下宏氏とMIRAI《撮影 太宰吉崇》
  • FCV向け水素ステーション《撮影 太宰吉崇》
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