【ロードスター開発者への10の質問】Q5.燃費性能と走行性能はどう両立させたのか?

新車 レスポンス

新型『ロードスター』の心臓部には、「SKYACTIV-G 1.5」が搭載される。スポーツカーという性格上「エンジンを回して楽しむクルマ」における燃費性能は走行性能とどう両立させたのか。

開発のNO.2である車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏(「高」は、はしごだか)、商品本部 商品企画部 主幹の中村幸雄氏、そしてQ4でもご登場頂いたパワートレーン開発本部 走行・環境性能開発部の兼為(かねい)正義氏の3名に話を伺った。

Q5.燃費性能と走行性能はどう両立させたのか?

A5.エンジンだけでなく軽量化や効率を最大限に仕上げていくことで、実用燃費をきちんと出せるようにした。

◆何も起こらない6速ギアは作りたくなかった

----:まず大前提というか、スポーツカーにおける「燃費」の関わり方についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。

高松仁氏(以下敬称略):(燃費も)軽量化と同じように、理想は効率をマックスにしていくということで、燃費であっても他の機能であっても同じことなのです。結果、実際にコンパクトなサイズになっています。「人間中心のパッケージング」とスタート時に言っていますが、軽量化すれば燃費は当然良くなるし効率も高くなっていきます。そうするとエンジンやミッションも小さくできる。タイヤだって小さいサイズで済む。そこで、このクルマのポテンシャルの高さが決まってくるわけです。

----:そこで決まったポテンシャルは燃費にどう影響を与えているのでしょうか。

高松:今はガソリンをぶちまけながら走るような時代では無いわけですよね。このクルマの場合にも我々は当然「サステイナブル“Zoom-Zoom”」を念頭に置いています。ただ、あまり燃費に大きく軸足を置ききっているわけではないのも事実です。しかし実際乗っていただいたら分かるのですが、実は…すごく燃費はいいです(笑)。

----:実際試乗をした人の多くが感じていることだと思いますが、確かに実走行燃費がいいですね。

高松:ただ誤解があってはいけないのでしっかりお伝えしたいのですが、燃費はどうでもいいという発想では全くありません。SKYACTIVというのは燃費のために何かをしようという発想ではなくて、燃費は結果論であって、クルマの最高の効率を実現する、ということなんです。

それは、その時代の最先端技術を使った上で(燃費と走りの)どちらにもう少しウエイトを置いていくか、という時に使い分けるポテンシャル、言い換えればマスを広げていくという考え方です。

----:MT車の6速のギア比は1000に設定していますが。

高松:このクルマの場合、おっしゃるように特にトップをどう選ぶかという時に私としては「走り」を選びました。特に6速での高速巡航時に「何も起こらない」「アクセルに何も応えない」というクルマには絶対したくなかったのです。

----:燃費を稼ぎたいならばギア比はもっと変えられるはずですよね。

高松:でも効率としては、今できる最高の状態に持ってきていますから、そういう意味では少し燃費に振ったギアにはなっています。ただ、何のために6速を付けるかって言うと、燃費のため? クルージング専用ギア? この車はそうではない、というのが考え方のベースなのです。

中村幸雄氏(以下敬称略):お客様に対する提供価値という意味では、すごく走るけど燃費が悪いクルマだとか、シフトアップしながら走っていると普段は気持ち良い走りではないけど、ある程度のところでガツンと走るというようなクルマが多かったわけです。確かに今回は燃費が一番、という考えではありません。しかしお客様がどこでも、気持良く「ガーッと走っても」燃費のことを気にしなくてもいいような実用燃費をきちんと出すようにしました。つまり本当の意味で、全開でエンジンを使い切るような走り方をお客様に楽しんでもらおうと考えたのです。

----:結局、どの領域でもロードスターが狙っている楽しみは体感できますし、燃費に関してもSKYACTIVを基本とする今の技術を使えばバランスよく仕上げることができる、ということでしょうか。

中村:今回のようなワインディングが多いコース(伊豆スカイラインなど)でも高回転まで引っ張ってもそんなに燃費が悪くかったでしょう?

----:あくまでも個人的感覚ですが、本当は燃費が良いにこしたことはないけど、いいよいいよ、俺はロードスター乗っているのが楽しいんだから燃費なんか気にしないよ、ってヤセ我慢している人がいるかもしれないし、本当にそう思ってる人がいるかもしれない、っていう人達に守られていた領域が、これからもっと、楽しく乗りたいって、いろんな人が外から入ってきていると思います。輸入車の乗り換えなどもありますし、その時に、環境面など性能も担保してくれているっていうのはありがたいな、と。じゃあその秘密はどうなんでしょうか?

兼為正義氏(以下敬称略):走りと燃費の関係で言えば今回、抵抗の低減をかなり行っています。

----:ミッションやデフが新設計されているわけですよね。

兼為:はい、これによって抵抗もかなり低減されています。抵抗が少なくなったら、もちろんトルクのロスが減りますから加速度も上がります。走る時のロスが減ればその分燃費も良くなります。動かすための車重が軽くなれば、必要なエネルギーが少なくなるし、少ないエネルギーで加速できます。つまり軽くて抵抗が少ないというのは走りにも燃費にも両方効いているのです。

----:今回のお話を聞いていても、人間中心に物を作っていくことで、結果としてみな良い方へ向かっていくという印象を受けます。

高松:そうなんです。例えば、何のために1g軽くする話をするのかというと、全部がある意味正しい方向に付いてくるからなんです。「小さくする」という表現は適切ではなくて、「最適なサイズにしていく」ことによって軽量化のポテンシャルを引き出す。当然、運動性能上もまさにライトウエイトスポーツが体現できて、さらにモノの効率を上げていくというSKYACTIVの技術を持ってくれば、燃費も付いてくるという考え方、コンセプトなんです。ただ、一方で「トレード」という言い方もあるのです。

----:トレードですか?

高松:兼為が言った、フリクションを落とすという話ですが、最たるものがタイヤです。抵抗という意味では、空力とタイヤのバランスが重要です。タイヤは転がり抵抗もさることながら、軽量化のテーマも非常に大きい。タイヤのグリップ力と転がり抵抗とウエイトは反比例するわけです。

しかしそこをなんとかするというのがタイヤの中では大きなテーマとしてありますし、ロードスターは特に、タイヤにあまり依存しない性能を出さなくてはいけないというのがあります。

◆タイヤの力に頼らないダイナミクス性能を達成した

----:興味深いですね。それは何故でしょうか。

高松:たぶん直感的にお分かりだと思いますが、タイヤを変えることでクルマが持っている色々な操安性を変えたくないですよね。

このクルマは特に、それがコンセプトなのです。確かに100点にはなっていませんが市販タイヤに履き替えた時に性能が大きく変わってしまうようなクルマには絶対したくない。逆に言うと、タイヤにあまり依存しない性能の育成ができるポテンシャルを作らないといけない。そのためにサスペンションの開発もやっています。結局それらにも全て「クルマの軽量化」が効いてきています。タイヤ自身も、軽量化と転がり抵抗、そしていわゆる走安性能は、グリップ領域のバランスを取るために、もう最後の最後まで頑張りました。

そしてもう1つ、あまり特殊なタイヤにし過ぎると一般のタイヤを持ってきた時に性能が変わりすぎる。三つ巴、四つ巴の開発をやってきたというのが事実です。

----:タイヤに頼らない走りを実現するための具体策は?

中村:原理原則で考えると、軽いクルマというのは垂直荷重が少ないので、タイヤが仕事をしづらいのです。だから、何にも考えなかったらタイヤは回らないわけです。先ほど高松が言ったように、タイヤに頼ってしまうとグリップ力の高いタイヤを履かないと曲がらなくなります。しかしタイヤに頼らないというのは、荷重移動をきちっと使ってタイヤの力を引き出すような、そういうダイナミクス性能の作り方をしているのです。

兼為:パフォーマンスフィールから行ったら、自分は軽いタイヤを選びます。エンジンのイナーシャ(慣性モーメント)が軽いほうがレスポンスが良くなるのと同じように、タイヤも軽いほうがレスポンスが良くなるんですよ。グリップがいいとその分抵抗になるので、低いほうが加速は良くなります。ですからすごくハイグリップのタイヤを履いたら、コーナーはいいかもしれませんけど、加速しなくなります。そのバランスの中で自分が好きなタイヤをチョイスしている。で、このクルマは、その中でチョイスした通りに性能を発揮できるので、好みのタイヤを選ぶのが一番いいんじゃないかなと思います。燃費から言ったら転がり抵抗が低いほうががいいですけどね。

----:軽量化がいかにロードスターの走りと燃費に大きな影響を及ぼしているかについてはわかりました。一方でマツダには最新の省燃費技術もあります。「i-ELOOP」や「i-STOP」などは手が加えられているのでしょうか?

高松:まず、物の配置です。i-ELOOPのようなキャパシタはトータルでは重量物なのです。特にライトウエイトスポーツという観点から見ると、ウエイトの比率が高いシステムになります。その配置は当初『デミオ』を含めシステムを共通化してコストを抑えていくというのがコンセプトとしてありました。とはいえ、そのままでは搭載したい場所に搭載しきれないので、キャパシタの配置はこのロードスター専用として左のタイヤハウスの極力後ろに持ってきています。

一般的に、例えばハイブリッドではよく使われますが、大電流のハーネスを使用するときには径の大きなハーネスを通すことがあって、それも重量物となります。今回はそこにアルミの電線を使っています。

ハイブリッドほどの電流は流れませんが、普通の車両ハーネスよりも太いハーネスを使うことになるので、軽いアルミのハーネスを使っているんです。ですから、i-ELOOPの搭載でも軽量化と重量配分という点では、部分的には新設しながら相当こだわって決めています。

----:達成すべき目標に対して、お金をかける部分はしっかりかけるということですね。しかしそれでもちょっと高いかな? という気もしています。

高松:そうですね。ただスポーツカー全体として同じだと思いますけど、業界を挙げて主流になっていけばコストは安くなります。キャパシタはやっぱりまだ微妙ですよね。ハイブリッドの世界が主流になるのか、はたまたキャパシタの世界か、というのは今、見直されている時期だという理解をしていますので、今後もっと標準化が進んで、よりリーズナブルになっていくことを期待しています。

----:それはやっぱり、作った方としては付けて欲しいですよね(笑)

高松:そこはお客さんの好みだと思います。やっぱり最初は、ロードスターというクルマでアイドルストップの採用はどうなのっていう考え方も…。

----:やはりありますか。

高松:ありましたね。ただこの時代のスポーツカーを考えた時に、ロードスターは人馬一体だから、というその一言だけで無視できないくらい、環境視点は重要です。それを全く無視する、ということはあり得ないね、と。特にヨーロッパに行くと環境に対する意識が皆さん高いですから、そういう意味でも、しっかりやろうということです。

◆気持ち良い走りのために、効いているのはSKYACTIV技術

----:軽量化、デバイスとお話を伺い、最後は環境性能を含めた燃費に寄与する部分やちょっとした裏話をお聞きしたいのですが。

兼為:寄与するというか、高回転まで回しても燃費がそれほど落ちないという話も出ましたが、それは大きく言えばSKYACTIVの成果です。先代だと、高回転まで回せば回すほど、回転が増えた分だけ燃費は悪くなったわけです。ノッキングとか制御的な問題ですね。それまではこれを回避するのに燃料を多めに吹いていましたが、SKYACTIVはそこの制御性が上がっていて、燃料増量をほとんどすることなく行けるので高回転まで回していっても、燃費への影響を最大限抑えられるわけです。

高松:意外と高回転あたりが良いからね。

兼為:そうですね。高回転はずーっと「ラムダ1」をキープできますから。

----:ラムダ1とは?

兼為:空燃比というのがあって、空気と燃料の比率が1:1の時が一番燃費が良いわけですが、先代は高回転になると1:1ではエンジン側が制御しきれなくて多めに燃料を吹いていたんです。それが、今回SKYACTIVエンジンになったことで、ずっと1、ほとんどトップエンドで行けるようになった。

----:それが、1:1で行けるというわけですね。

兼為:ですから、気持よく走っても、燃費が悪くならない。本当の意味で、全開で楽しめるクルマになっている、ということなんです。

  • 高山 正寛
  • 左から、商品本部 商品企画部 主幹の中村幸雄氏、パワートレーン開発本部 走行・環境性能開発部の兼為(かねい)正義氏、車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ ロードスター《撮影 太宰吉崇》
  • 車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏《撮影 太宰吉崇》
  • 商品本部 商品企画部 主幹の中村幸雄氏《撮影 太宰吉崇》
  • パワートレーン開発本部 走行・環境性能開発部の兼為(かねい)正義氏《撮影 太宰吉崇》
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