【インタビュー】感動ムービーに隠されたトヨタの安全思想…Toyota Safety Sense 企画開発担当者

テクノロジー レスポンス

トヨタによる父の日向けショートムービー「Loving Eyes」が、6月12日に公開されて以来、400万再生を超えるなど大きな話題になっている。父と娘の約30年間を、それぞれの視点から描いた感動ムービーの背後にあるのは、「Toyota Safety Sense(トヨタ・セーフティ・センス)」だ。

様々な事故に備える衝突回避支援パッケージであるトヨタ・セーフティ・センスは、2015年3月の『カローラ』マイナーチェンジモデル、および同年4月の『オーリス』マイナーチェンジモデルから搭載が開始された。先述のショートムービーでは、「愛とは、見えないところで見守ること。」というキャッチコピーとともに、トヨタ・セーフティ・センスの一部であるプリクラッシュセーフティシステムが登場している。

ショートムービーを通して伝えたかった、トヨタ・セーフティ・センスとは何なのか? 同社で安全技術の企画開発に携わる池田幸洋主査にうかがった。

◆2種類のセンサーで、性能と信頼性を確保

----:自動ブレーキなどの先進安全技術が世の中に急速に浸透しつつある中で、トヨタ独自の予防安全パッケージであるトヨタ・セーフティ・センスの特徴について簡単にお聞かせください。

池田幸洋主査(以下、敬称略):トヨタ・セーフティ・センスにおける第一の特徴は、前方確認のために、2種類の異なるセンサーを持つという点です。現時点で世の中には様々なセンサーがありますが、単一のセンサーでは、例えば悪天候や夜間など、すべてをまかなうのはなかなか難しい。そこでトヨタ・セーフティ・センスでは2種類のセンサーを使い、それぞれのセンサーの利点を活かすことで、高い性能や信頼性を確保しています。

トヨタ・セーフティ・センスには、2種類のタイプがあります。レーザーレーダーとカメラを使う「トヨタ・セーフティ・センスC」と、ミリ波レーダーとカメラを使う「トヨタ・セーフティ・センスP」です。"C"と"P"は、それぞれ構成が若干違いますが、2種類のセンサーを持つという点では同じです。

----:2種類を用意した理由は?

池田:こういった安全システムは、やはり普及させることが重要です。しかし、トヨタは、レクサスも含めてラインナップが大変幅広いですから、短期間で一気に展開させるのが難しい。

例えば、すでにミリ波レーダーを搭載している車種に、同じくミリ波レーダーを使用しているトヨタ・セーフティ・センスPを搭載するのは比較的容易なのですが、ミリ波レーダーを使用していないコンパクトクラスに搭載するには新たにエンジンの前やエンブレムの裏などにスペースを確保しなくてはなりません。そこで、フルモデルチェンジを待たずに短期間でトヨタ・セーフティ・センスをコンパクトクラスに投入するために、搭載性や展開性に優れたシステムを開発することになりました。それがトヨタ・セーフティ・センスCです。

トヨタ・セーフティ・センスCは、今のカローラ(アクシオ/フィールダー)を見ても分かるように、センサーユニットをフロントガラスの室内側に接着することで取付けできます。

----:ちなみにCとPは、何の頭文字ですか。

池田:名称に特に意味は持たせていません。あえて"C"と"P"にもネーミングの理由や特定の語意は持たせず、単に記号的に名づけています。それでも"P"であれば、例えばPedestrian(歩行者)とかPlusなど、いろいろな言葉をイメージできます。シンボリックにアルファベットを選びつつ、意味を想像できる文字にしたかったのです。

◆死傷者低減に効果があるシステムを開発したかった

----:レーザーを使った自動ブレーキは、他社のコンパクトカーや軽自動車では比較的早くから採用されています。トヨタ・セーフティ・センスCの投入はそれに比べて遅かったという印象を受けます。

池田:トヨタは、2003年にミリ波レーダーを使用したプリクラッシュセーフティシステム搭載車を発売しましたが、それはどちらかと言えば高級車のための贅沢装備で、コンパクトクラスには普及しませんでした。

一方で、他社がレーザーベースの廉価なシステムを展開しているのは認識していましたが、トヨタではレーザーのみのシステムは採用しませんでした。これは、こういった予防安全装備の開発において、我々には「死傷者低減」という目標が念頭にあったからです。

おそらくレーザーのみのシステムでも、30km/h以下ではキチッと動作し、いわゆるコッツン事故や頚椎捻挫といった軽傷事故の低減には十分効果があると思っています。ただし日本で起きている交通事故では、速度が30km/hを超えると、衝突によって亡くなる方の死亡率がぐんと上がるんですね。

だからこそ、トヨタとしては交通事故死者をいかに減らせるか、ということを考えて30km/h以上の中速域でしっかり作動して、衝突回避もしくは衝突被害を軽減できる減速制御や回避支援制御をするシステムを開発したいと思いました。

そのため、トヨタ・セーフティ・センスCでは中速域でも自動ブレーキの動作を確保したかった。それはレーザーだけでは難しく、カメラからの情報と組み合わせることで実現できたのです。トヨタでは"C"と"P"を合わせたトヨタ・セーフティ・センスを、2017年末までに日米欧ほとんどすべての乗用車に展開する予定です。

◆影でドライバーを支える

----:最近、世の中では「自動運転」が話題ですが、トヨタ・セーフティ・センスはあくまでドライバーの運転を支援するシステムですね。

池田:自動運転とトヨタ・セーフティ・センスでは、もちろん考え方は大きく違います。例えばトヨタ・セーフティ・センスCのプリクラッシュセーフティシステム、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームは決して前面に出てくるものではなく、「これがあって良かったね」「安心だね」と思っていただけるような性質のものにしています。本当に危険がある時、最後の最後でドライバーを助けてくれる。それがトヨタ・セーフティ・センスに対する考え方です。

----:動画の中で「愛とは、見えないところで見守ること。」という言葉が出てきますが、つまり、普段はあまりドライバーに意識させずに支援するのがトヨタ・セーフティ・センスだということでしょうか。

池田:その通りです。裏方というか、影でドライバーを支えてあげて、危険な時に手を差し伸べる。そういうシステムになればと思っています。

例えば警報であれば、衝突する可能性が高い状況に対して、まず警報を鳴らして、ドライバーに気づいてもらう。そしてドライバーにブレーキを踏んでもらうなど回避行動を促します。この警報についてはギリギリまで待たず、むしろ積極的に行います。

ただし自動ブレーキに関しては、あまり早めに作動させると、違和感が生じますので、その点は考慮しています。トヨタとしては、ドライバーの能力をきちんと引き出して、ドライバーに安全に対する責任をきちんと果たしていただきたい、というつもりでやっています。

◆究極の願いは死傷者ゼロ

----:最後に、トヨタの考える「安全」とはどういうものか教えてください。

池田:それは単純明快で、「死傷者ゼロ」です。トヨタ車に乗っている方が亡くならない。トヨタ車をお客様が運転することで他の方も亡くならない。それが究極の願いだと考えています。

ただし、それは簡単なことではありません。もともと我々が言う“安全なクルマ社会”は、クルマだけでは実現できない側面があります。それはドライバーの意識や、歩行者の意識、それに道路環境ですね。我々がよく言う「三位一体」、つまりクルマ、人、道、その3つが全部お互いに補完しあって、初めて本当に安全なクルマ社会が実現できると思っています。

  • 丹羽圭@DAYS
  • Loving Eyes -Toyota Safety Sense
  • Loving Eyes -Toyota Safety Sense
  • Loving Eyes -Toyota Safety Sense
  • トヨタ自動車 池田幸洋主査《撮影 谷瀬 弘》
  • トヨタ自動車 池田幸洋主査《撮影 谷瀬 弘》
  • トヨタ自動車 池田幸洋主査《撮影 谷瀬 弘》
  • Loving Eyes -Toyota Safety Sense
  • Loving Eyes -Toyota Safety Sense
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