【川崎大輔の流通大陸】イースタンカーライナーに見る、ミャンマー中古車市場の課題と展望

業界 レスポンス

◆ミャンマービジネスでの成功要因は?

1989年からミャンマーに配船を開始していたイースタンカーライナー(ECL)。2012年10月に日本の物流会社では初めてとなるミャンマー現地法人ECL MYANMAR CO.,LTDを設立した。ECLミャンマーの成功要因は「30年以上の海上輸送実績の知名度と、ミャンマーでの信頼性」であると鈴木部長は語った。

現在月間で自動車専門輸送船を3便、多目的船を2〜3便、日本とヤンゴンを結んで配船している。日本からミャンマーまで通常14日ほどかかり、ティラワ港にある多目的船ターミナルで荷揚げされる。通関は約1週間必要である。大量の中古車の通関作業をマニュアルで行っており1週間に300台ほどが通関できるのみ。荷揚げ後の保管場所も少ないため、船が着岸できない事態の発生もある。そのため、ECLはディラワ港のターミナル内に荷揚げ後の専用の完成自動車保管ヤードを用意してスムーズに通関ができる仕組みを構築している。

アジア各国での30年にわたるこのような高品質の海上サービス提供として知名度があるのを前提としつつ、ミャンマーへの海上輸送サービスは1989年から開始している。特に1998年から2011年はミャンマーにとっては経済危機と規制強化の時代であった。1999年4月以降は完成自動車輸入が厳しく制限をされ、輸入台数は激減。このような厳しい時代で他者が撤退していく中においてもECLはミャンマーへの物流サービスを途絶えることなく配船を続けてきた。

こうしたミャンマーでの信頼感が現在のビジネスを成功に導いている大きな要因となっている。長期的な視点で地道に信頼を獲得し今の地位を築いていったECLだけに、これからミャンマーでビジネスを行っていく企業にとっては非常に重みのある言葉である。

◆ミャンマー中古車市場市場の規模

ミャンマーは2011年の民政移管の際に、中古車の個人輸入を解禁した。2014年現在で商用車を含めた日本からの実際の中古車輸入台数は約18万台(財務省の輸出台数に関する貿易統計は20万円以下の車はカウントされていないため実際の台数とは異なっている)。日本からの中古車輸出仕向け地として2014年で第3位の台数規模で大きな市場となっている。そのような日本からの中古車海上輸送においてECLは約3割のシェアを持ち、物流サービスでミャンマーのリーディングラインとしての地位を確立している。

◆車庫証明の提出義務による影響

車庫証明の提出義務による影響は大分落ち着いてきた、というのが鈴木部長からの返事であった。当初は、ティラワ港のヤードには引き取られていない日本からの輸入中古車が大量に滞留して、次に来る中古車が荷揚げできなくなるという事態も頻繁にあったようだ。

ミャンマーを訪問したことがある方は経験をしていると思うが、ヤンゴン市内の交通渋滞は異常だ。歩いて10分ほどの距離であっても朝夕の渋滞時間には1から2時間かかってしまうこともある。このような渋滞緩和のためにヤンゴン管区政府は2015年1月より自動車購入・輸入時の車庫証明取得を突然義務化した。ミャンマーは13区に分けて管轄されているが、車庫証明の提出義務化はヤンゴンのみである。60日間ルールも同時に作られ60日以降は超過保管料がかかる。この施策の影響もあり、2015年に入ってからヤンゴンでの自動車流通量は低下し、日本からミャンマーへの輸出が大きく減少する結果となった。

2015年7月に筆者がティラワ港を訪問したが、滞留していた車は随分と減ったような感じを受けた。車庫証明は現在では500ドルほどで流通しており、この車庫証明を中古車販売の販促としてさばいているとも聞いている。2015年1月から6月の半年で車庫証明は全部で2万発行された。確かに、古い車のナンバープレートを持っていれば、それと交換に車庫証明を発行されるが、個人的な感覚では少し車庫証明発行数は少ないように感じられた。

◆ミャンマー中古車市場の今後の展望

ミャンマーにおける中古車市場は、「徐々にこれから地方で拡大してくるだろう」と鈴木部長は指摘する。ヤンゴンでの中古車はある程度行き渡ったと感じるのが理由だ。現在、ヤンゴンには中古車ディーラーが150店舗ほどあると言われている。数年前の最盛期には約250店舗あったのに比べれば、競争市場によって淘汰(とうた)されたと判断できるだろう。車庫証明をヤンゴン以外では発行する必要はないのも1つの要因だ。

また、ミャンマーで唯一の日系自動車メディアの「カーサーチ」でのインタビューにおいても地方への中古車流通業車の進出、拡大の動きを感じた。現在カーサーチに広告を載せているミャンマーの中古車ディーラーは全部で25社。そのうちヤンゴンのディーラーは16社、残りはミャンマー第2の都市マンダレーのディーラー(9社)とのこと。ミャンマーで公的な自動車流通に関する統計はないが、足元でのミャンマーの自動車保有台数は60万台と言われている。そのうちの7割がヤンゴンに集まっている。今まではヤンゴンへの1極集中型の歪(いびつ)な自動車市場構成であったが、今後はマンダレーを中心とした地方都市への流れは現実的であろう。

◆今後のイースタンカーライナー様の課題

今後の課題は、中古車の海上輸送以外の新しい収益源確保のため、「ミャンマー国内の陸送サービス」が必要であると鈴木部長は言う。中古車輸入の規制緩和に伴い日本から中古車輸入が急増した。このような原因からヤンゴン市内に中古車があふれかえっている。一方で、マンダレーを中心とする地方都市での需要が徐々に増えてきている。

マンダレーまで陸路で片道10時間以上かかるが、ヤンゴンで購入した車をナンバーなどが取れていないにも関わらず顧客が自ら自走して持ち帰っているという現状があるようだ。普及させるには法整備なども必要ではあるが、積載車を用意しカーキャリアサービスを提供することで地方の顧客のニーズにこたえることができると考えている。

また、新車に関してもメーカー側より陸送サービスの要望が出てきていると聞く。既に、ECLミャンマーでは5台積みの積載車で近場への陸送サービスを行っているという実績もあり、今後更にサービスの範囲、規模を拡大させていきたいとの意気込みだ。

ミャンマーの中古車市場は、ヤンゴンだけ、若しくは中古車販売だけを見ていると誤った見方をしてしまう可能性が高い。ECLミャンマーのような長期的な視点でビジネスをとらえ、国内陸送などを含む自動車アフターサービス市場の開拓がミャンマービジネスの成長の鍵になるのではないだろうか。

<川崎大輔 プロフィール>

大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科特別研究員。

  • 川崎 大輔
  • ヤードの保管自動車《撮影 川崎大輔》
  • 保管されている新車《撮影 川崎大輔》
  • 自動車ヤード《撮影 川崎大輔》
  • カーキャリア(ECL)《撮影 川崎大輔》
  • 多目的船ターミナル《撮影 川崎大輔》
  • 本船(ECL)《撮影 川崎大輔》
  • ECL自動車保管ヤード《撮影 川崎大輔》
  • ヤードの保管自動車《撮影 川崎大輔》
  • 自動車ヤード《撮影 川崎大輔》
  • カーキャリア(ECL)《撮影 川崎大輔》
  • 多目的船ターミナル《撮影 川崎大輔》
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  • 保管されている新車《撮影 川崎大輔》
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