【インタビュー】マツダ 越KOERU は「革新性と普遍性そなえる“品格”を表現」…小泉チーフデザイナー

新車 レスポンス

フランクフルトモーターショー15において世界初公開されたマツダのコンセプトカー『越KOERU』は、SKYACTIV技術を全面採用し、デザインテーマ「魂動(こどう)」をベースにさらなる進化をはかったクロスオーバーコンセプトだ。

世界的に成長しつつあるクロスオーバー市場に、マツダはどのような提案で挑むのか。『ロードスター』の「艶」と『CX-3』の「凛」で対となる魂動デザインのブックエンドを、どのような表現で「越えた」のか。チーフデザイナーの小泉巌氏に訊いた。

◆マツダが持つ全ての技術を考慮したデザイン

----:越KOERUをデザインするにあたって、パッケージのベースとなったモデルはあるか。量販車への展開は想定している?

小泉巌チーフデザイナー(以下敬称略):デザインスタディモデルなので量産車へのつながりはアナウンスしないが、新しいカテゴリーにチャレンジするクロスオーバーの提案として作っている。ベースとは言えないが、全長やホイールベースなどパッケージそのものは『マツダ3(日本名:アクセラ』のセダンと、空間的に近いディメンジョンを持っている。

----:デザインする際には、パワートレインやアーキテクチャなども想定していたか。

小泉:これまで私は新世代商品群の骨格を手がけてきたので、それらの特性を最も表現できるようにデザインを考えた。新世代商品群のアーキテクチャ全てを加味しており、エンジンもガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、二駆四駆も両方、今我々が持っているものは全て入れることができるという前提でデザインした。

量産車においては、「カテゴリのお約束」というか市場とのコンセンサスが必要になってくる。そのお約束を破ってしまうと競合に入らない、お客さまのショッピングリストに載らないということになるので、カテゴリに入るときは必ずそれを守る必要があると思う。しかし、越KOERUはそういったカテゴリを外してメッセージを出していこうというモデルなので、より自分たちの感情を表現しやすいピュアなデザインになったと言える。

◆より「動き」を表現した造形

----:越KOERUで実現した新たな魂動デザインのキーワードとは?

小泉:バイタリティ(生命感)とディグニティ(品格)をキーワードとしている。生命感は魂動デザインの基礎となるものなのでそれは保ちつつ、品格を一段上に上げる試みを行った。その手段としてデザインランゲージを、グラフィカルな抑揚ではなくて、ボリュームの大きな変化と、プランビューの動きからハイライトを使ったトラクションの表現に求めていった。そういった進化の中で、次のステージを模索しているという状況。

----:2011年に発表されたコンセプトカー『雄(TAKERI)』や『アテンザ』においても「品格」という言葉は使われていたが、小泉氏の考える「品格」とは?

小泉:日本文化という視点で見た時に、革新的だが普遍性もあるというのが美点だと解釈している。シンプルで研ぎ澄まされ、品格も備えたもの…例えば、桂離宮は西洋人が見ても美しいプロポーション持っており、時代を考えても素晴らしいことだと思う。そういった、革新的ながらも一つの様式美として普遍的な美しさを持った日本文化に対するリスペクトがあるので、それに近づきたいという希望を持っている。

----:越KOERUで初めて取り入れたデザイン的要素は?

小泉:ホイールプリント(ホイールベース、トレッド)の内側に出来るだけテンションを集め、その外側にはボリュームを感じさせるようなテンションをあまり持たせない基本骨格を作りたいという理想を持っている。しかし、開発的に避けられないハードポイントがあったりして、量産車の場合はどうしてもそうできないことがある。そのため、初代マツダ6(日本名:アテンザ)の際やこれまでの新世代商品群もそういう理想から離れてしまうことがあったが、これはショーカーなので達成することができた。

----:近年のクロスオーバーは、リアピラー(Dピラー)をブラックアウトしてクーペスタイルを強調するものが多いが、なぜAピラーをブラックアウトさせたのか?

小泉:造形的には、キャノピーにする狙いがある。サルーンやキャビンというと“部屋”になってしまう。部屋というのは前(前面)があり、横(側面)があり、屋根があるという概念なので、それを(デザイン手法で)なくしてキャノピーにし、流体力学的な視点で航空機に近いカプセル状の形にすることで、動きをより確実に表現できると考えた。

◆新しいクロスオーバーの提案とは

----:CX-3の場合は「ライフスタイルをクロスオーバーする」というテーマがあったが、越KOERU以降のクロスオーバーの意味は変わってくるのか?

量産車という考え方からすると、自分たちが持っているハードウェアの都合とコンペティターとの相対関係を考え、一番メリットが伝わるようなメッセージを考えて発信するが、KOERUの場合はショーカーなので、クロスオーバーの定義よりも「越える」というメッセージの方を優先している。もう少しピュアなデザイン表現として、クロスオーバーの捉え方を提示した。若いエリート層に向けて、魅力的なライフスタイルを経験してほしいという提案の表れでもある。

----:顧客のターゲットはその「若いエリート層」を想定しているのか。

小泉:どの市場を見ても、若くて教養もセンスもあり、皆が憧れを持つような層の市場はあると思う。今は若者がコストを重視した車に乗ってたりするので、夢がない。充実したライフスタイルの中で人生をエンジョイしたいと思えるような、憧れを抱かれるような、車のイメージやメッセージを発したかった。

----:マツダは「量産モデルのイメージできないコンセプトだけのショーカーは作らない」としているが、ボディサイズやデザインは変更の余地を持たせているか。

小泉:越KOERUを発表して、今後皆さん(市場)の反応をいただきながらどうするのが良いのか社内でディスカッションしていくことになる。これはマツダブランドにとってのこのクルマのバリューをどう持たせるかにつながってくるので、現時点では今後の展開について具体的に決まっている部分はない。

----:量産化する場合には「CX-◯」というネーミングになるのか。

小泉:ブランド全体の中でどういう役割を持たせるか未決定のため何ともいえないが、クロスオーバーなので、「CX」になるだろう。しかし、どんなナンバーを与えていくかは未確定。ヒエラルキーやカテゴリーのボーダーを越えるというメッセージを発しているので、どの枠に入れるという意図はない。既存のラインナップには3と5があるが、その間なのかその上になるかは皆さんからの意見をいただいて決めることになる。

  • 吉田 瑶子
  • マツダ 越KOERU と小泉巌チーフデザイナー《撮影 吉田瑶子》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダ 越KOERU(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • 小泉巌チーフデザイナー《撮影 太宰吉崇》
  • 小泉巌チーフデザイナー《撮影 太宰吉崇》
  • 小泉巌チーフデザイナー《撮影 太宰吉崇》
  • 小泉巌チーフデザイナー(左)と前田育男デザイン本部長(右)《撮影 吉田瑶子》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
  • マツダブース(フランクフルト・モーターショー15)《撮影 太宰吉崇》
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