【川崎大輔の流通大陸】創世記のベトナム中古車ウェブサイト

業界 レスポンス

◆自動車の急速な増加による渋滞が深刻化するベトナム

ベトナム自動車工業会(VAMA)加盟23社の2014年の新車販売台数は13万3000台、前年実績に比べて36%増加となった(図表1参照)。

2015年9月に私が訪問した時のハノイの新聞には、「個人用車両が急速に増加し渋滞が深刻化している」と報じられていた。ハノイ市公安(警察)によると、1〜8月に新たに登録された車両は18万2000台(自動車が3万9000台、バイクが14万3000台)に上り、累計の登録車両は約550万台(自動車が53万5000台、バイクが490万台)に達しており、自動車市場の拡大に道路インフラ整備が追いついていない模様だ。

一般的に国民1人あたりGDPが3000ドルを超えるころからモータリゼーションが始まると言われている。一方でベトナムの1人あたりGDPは2,053ドル(2014)であり、まだモータリゼーションの入り口にも入っていないと推定される。これから道路インフラをしっかりと整えられるかがベトナム自動車市場拡大に向けての大きな課題だ。

◆中古車販売のウェブサイトへの流れ

このようにモータリゼーション導入期に近づいているベトナムにおいて、中古車ウェブサイトを活用し中古車の売買を取り持つ専業者やブローカーが少しずつ増えてきた。中古車販売店と一般消費者の取り引きであるB to C(Business to Consumer)、また一般消費者間で行われる取り引きであるC to C(Consumer to Consumer)、主としてこの2種類の取り引き形態がある。

ウェブサイトの規模を、中古車のサイト掲載台数ということでみれば、ベトナムの中古車ウェブサイトMuabanが9万台と最も多い。新車販売台数が10万台前後として考えると9万台というのは大きな台数だ。Muabanはベトナムで最も大きなC to Cの売買情報が載っているサイトである。売却済みになっても載せたままになっている中古車、また同じ車両がダブって掲載されている可能性もある。そのため正確な台数は把握できない。

次に規模が大きいサイトはOtovietnamで2.6万台だ。それ以外のサイトは5000台前後の掲載台数である。各社とも利益は、企業の広告掲載料(バナー広告)と自動車登録料から得ているようである。掲載登録料は各社の戦略に合わせたそれぞれの設定料金を確認できた。

◆ベトナムの主要中古車5ウェブサイト

ベトナムの中古車メディアをリサーチした結果、主要と思われる中古車ウェブは5サイトである。「Muabanoto」「Banbanh」「Carmudi」「Otovietnam」「Muaban」だ(図表2参照)。

「Muabanoto」は、掲載料金では最も安く1か月/5台までの掲載で20万ドン(約1000円)。3か月掲載すれば1か月分が無料になるという割り引きもあり、売り手としては最も気軽に試せるウェブサイトとなっている。

「Carmudi」はドイツの世界最大のインターネットインキュベーターであるロケットインターネット傘下の中古車ウェブサイトだ。近年アジアで積極的な展開を見せており。Carmudiのブランドとして現在世界11か国でサービス提供。うち6か国はアジア(バングラデシュ・インドネシア・ミャンマー・パキスタン・フィリピン・ベトナム)で運営をしている。掲載料としては、他社より高めの設定で1か月/5台までの掲載で70万ドン(約3,500円)。車両も比較的高額な中古車が掲載されているイメージである。

特徴的なのは「Otovietnam」で、掲載料は会社単位で提示しており、掲載台数は特に明示されていない。値段も高く495万ドン(約2.5万円)/1社となり他社との差別化が際立っている。

◆中古車ウェブサイトの課題と方向性

ベトナム中古車ウェブサイトの課題として不正確な情報が指摘されている。ベトナム中古車市場の主導権を握っているのは中古車販売店とブローカーである。購入者は自動車に対する情報量が少なく彼らの言い値で購入せざるを得ない状況だ。掲載されている中古車も値段がないものが多い。つまり、購入者をみて値段を変えるのだ。当然、走行距離や修復歴は一切提示されていない。値段やサービスの交渉は多くの情報を持つ中古車販売店やブローカー達(たち)との直接交渉で値段が決定される。情報量が少ない購入者が弱い立場にならざるを得ないのだ。ルールを定め正確な情報を開示していくことが必要である。

更に、このウェブサイトが中古車販売店やブローカーのための仲介ビジネス(コミッション)になっていることも注目すべき点だ。つまり、公平な競争が阻害される恐れがある。形式上はB to Cを取っているが、実態はほぼC to C サイトである可能性が高い。B to Cの場合、運営車(中古車販売店)は多額の運転資金を必要とする。1度中古車を旧所有者から買い取り、それを新しい所有者に販売すると相当な資金が寝ることになる。それだけの資金を賄えるだけの中古車販売店はベトナムにはなかなか存在しない。

更に、C to Cでの利点は10%の取得税を免れることができることだ。となれば、同じ中古車を販売する場合、まじめに販売をしている中古車販売店は価格競争力で勝ち目がない。税金の10%分高い価格設定になってしまうためである。このようなウェブサイトの活用方法がベトナムで主流になってきている。仲介ビジネスを行う中古車販売店やブローカーのみが、売り手と買い手の情報の非対称性を利用して利益を得るいびつな市場になりかねない。

仲介ビジネスが悪いというわけではない。しかし、本当にC to Cの場にウェブサイトを利用した仲介が必要なのだろうか?購入者にとっても便益があるような透明な中古車市場を創(つく)り上げていくことが、新車を含めた自動車市場の拡大につながっていくものと今回のベトナム訪問で改めて考えた。

ベトナムの中古車市場は日本の30年以上前と同じ状況だ。ただ、1つ異なる点はインターネットが存在するということ。ベトナムの中古車ウェブサイトは創世記。道路のインフラだけでなく顧客に安心なウェブサイト取り引きの仕組みづくりも、健全な自動車市場を拡大していくために必要であると考える。

<川崎大輔 プロフィール>

大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

  • 川崎 大輔
  • ベトナム中古車ディーラー【撮影 川崎大輔】
  • 図表1 新車販売台数推移【川崎大輔作成】
  • 図表2 ベトナム主要ウェブサイト【川崎大輔作成】
  • ハノイ中心街【撮影 川崎大輔】
  • ベトナム中古車ディーラー(2)【撮影 川崎大輔】
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