【土井正己のMove the World】中国経済のスローダウンは日本に追い風

業界 レスポンス

今年は、年初からこれまで、株価が2割ほど下がっている(2月14日現在)。1月29日には、日銀のマイナス金利が発表され、少し戻したが2日と持たず、すぐに下落へと押し戻された感じだ。株価下落と同時に、円高も進んでいる。主な要因は、中国経済のスローダウン、原油価格の一層の下落、シリア問題など昨年からの継続する問題に加え、北朝鮮の核問題が加わって、世界情勢の不安定さが増しているということだろう。

◆株価が春闘に影響か

モノづくりにとっては、あまり関係のない話に聞こえるが、経営者の心理が暗くなると、この時期は春闘の数字に影響を及ぼす。すなわち、日本の経営者にとって、賃金アップに踏み切るかかどうかという時に、「将来への不安材料が山積」という状況である。

◆中国経済の問題点

中国経済は、リーマンショック後、多額の財政投資によって経済を支えた。以前にも書いたが、中国は経済の約5割がインフラなどの政府投資にもとづくもので、結果として地方政府の債務が大きく増大し、これまでのように投資による経済成長は成り立たなくなってきている。よって、国民消費による経済成長へと転換が必要になっている。また、賃金が上昇しており、輸出競争力を失いつつあり、生産効率を高める必要があるが、それができていない。さらには、環境汚染が激しく、このままでの生産拡大は、国民の日常生活を大きく阻害しかねない。これまで急激に拡大してきた中国経済は、国家自らがブレーキをかけざるをえない状況にあるということだ。中国経済がスローダウンすると、中国への輸出に頼ってきたアジアの国々の経済が停滞し、さらには、原油の需要が減り、原油価格の下落に拍車をかけ、産油国の経済を悪化させるという連鎖を生んでいる。

◆日本車の絶好調など日本には追い風

しかし、この中国経済の変化は、中長期的に見ると日本にとってプラスと言える。まず、第一に中国政府が、環境規制を強化したり、国民も環境志向が強くなってきている。実際、昨年のトヨタ車販売は、112万台を突破して、2年連続過去最高を記録している。ホンダも前年比32%増と過去最高だ。日本車にとっては、「中国経済スローダウンなどどこ吹く風」という状況だ。また、環境性能の高い日本の火力発電技術やコジェネシステムにも大きなビジネスチャンスがある。

第2に中間層が増えており、「多少高くても品質の良いものを買いたい」というムードが高まっている。中国から日本への観光客は、昨年は約500万人となり、一昨年の2倍となった。一人当たりの消費額は27万円と外国客平均の17万円を大きく上回っている。

第3に中国の製造業賃金が上昇していることで、日本製品の価格競争力が相対的にアップしている。これは、円安の為替の影響ももちろんある。すなわち、中国やアジアで、日本製品を売り込むチャンスは大きくなってきている。また、日本の競争力が高まった結果、インドのマヒンドラ社が、三菱重工と島根県でトラクターの共同生産を始めたように、外資も加わって日本の製造業が活気を取り戻しつつある。

このように現在の中国の経済や社会環境の変化は、日本にとって決してマイナスではない。やり方次第では、この状況を逆手にとってプラスに転じることは十分可能だ。日本はそういうポジションにある。春闘においては、是非、こういう中長期的視点で、中国経済、日本経済を捉え、株価などに右往左往せずに、労使での議論を深めていただきたいと思う。

<土井正己 プロフィール>

グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

  • 土井 正己
  • 日産 ラニア(上海モーターショー15)《撮影 吉田瑶子》
  • ホンダ ヴェゼル中国仕様《提供 ホンダ》
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