【今井武のテレマ革命】生きる人々の行動に“広くあまねく”繋げる、データの可能性

社会 レスポンス

前回(第2回)のコラムから間が空いてしまった事を、お許しいただきたい。この間も、ベンチャー起業の代表として目まぐるしい毎日を送っていたわけだが、そんな日常をがらっと変えてしまう出来事が、この日本では起こった。

4月14日(木)21時26分、熊本県熊本地方で震度7の大地震が発生した。以降、大分も含め震度6、6強の地震が立て続けて発生しており、4月24日時点では、震度3以上の地震が起こった回数が200回以上にもなっている。現在もまだまだ余震は続いている。被災された皆様に対し、心からのお見舞いを申し上げると共に、一日も早く、笑顔の日常を取り戻すことができるように、お祈り申しあげたい。

この震災発生後、各自動車会社は東日本大震災時の教訓を生かし、各社の車両プローブデータ使用し、「道路通行実績情報」を生成し、被災地の移動支援のために公開した。

通行実績から、今どの道が本当に通れるのかが解かる情報だが、現時点で通行実績情報がどれだけ役立っているかは評価が難しいだろうと考えている。

◆東日本大震災から学んだこと

2011年の東日本大震災では、津波によって極めて広域な被害がもたらされ、かつ沿岸部は特に深刻な被害を受けたため、海岸線の道路や橋はその殆どが破壊されてしまった。被災地救援に向かうには、どの道路が通行可能なのかが、全く分からなくなったのだ。また、電気や通信網もやられてしまったため、被災直後の道路状況の収集は非常に難しい状況であった。

そんな状況でも、通信機能を持つナビ搭載車両は、震災発生時に被災地を走行しながら、プローブデータとして走行情報を収集して、ナビのメモリに蓄えていた。そしてその車両が、通信可能エリアに入ると、自動的にナビのテレマティクスサーバにアップロードしたのだ。自動車メーカーがこのデータをビッグデータとして集め、加工編集する事で、通行実績があった道路が浮かび上がらせることができる。

その代表的な取り組み例として、災害時の防災・減災に東日大震災以前より取り組み、私も関わってきたホンダを挙げる。中越沖地震の経験から、震災発生後の「72時間」が特に重要であると、震災発生直後に速やかにプローブ情報を集め、上記作業をスタッフ総出で行い、翌朝には公開した。(多くの人に使ってもらえる形式である必要があると判断し、地図関連やIT知識がある人が扱いやすい、KLMフォーマットの道路リンクデータで公開)

各自動車会社は東日本大震災以降、こういった取り組みを加速させ、自動的に道路通行実績データを生成できる様にしていたため、今回の熊本地震の発生後、直ちに「道路通行実績情報」を直ちに公開する事ができるようになっていた。今回も、データとして“通行した”という情報に基づき、通れる事を青い線が、地図上に示していた。

だが、この青い線が示された「道路通行実績情報」が、今回の地震においてどれだけ本当に、被災地を走るドライバーの役に立ったかは分からないのだ。

◆熊本地震の違い

その理由は、今回の地震の被害が「建物の倒壊、道路の損傷」が特に酷く、これが道路渋滞を引き起こしている、という点にある。つまり、「通れた/通れない」という情報だけではなく、被災地のドライバーに必要なのは、道路の状況と、渋滞状況の状況が、今回は重要であったのである。また、地震で地盤がゆるんでいる中で、雨が降れば土砂崩れなどの二次災害発生の恐れの危険など、天候が特に気になるだろう。これら必要な情報まで、きちんと一度にカバーすることができると、本当に役に立つことができる。

◆被災地のために今できること

手前味噌で大変恐縮だが、アマネクでは第2回のコラムでも紹介させていただいたスタジオでナビゲータが使っている”Amanekスタジオモニター”の機能を、これらの情報を必要とする方が自由にスマートフォンやPCからアクセスできるよう取り出し公開した。

これは「アマネク・トラフィックスコープ」というもので、道路の混雑状況だけでなく、降雨情報や浸水リスク情報も合わせて確認できるというものである。協力会社のスピーディな対応のお陰で、17日日曜日の夕方より公開している。

そして、18日月曜日にはアマネクで特番を組み、“Amanekスタジオモニター”の情報を常時ウォッチしながら、アナウンサーが道路の混雑状況に気象情報、運転中に地震に遭遇した時の注意や車の中でエコノミー症候群にならない為のアドバイス等、クルマの中で過ごす人等が必要としている情報を中心に伝えた。

また、この「アマネク・トラフィックスコープ」は、同じく被災エリアで、被災地の為に情報を伝えているエフエム熊本にも活用して頂いている。こうした皆の支え合いが必要な時に、多くのプレイヤーによって、本当に役立てる情報を伝え合う社会を実現していきたい。

◆データの可能性

社会の中で発生する問題は災害に限らず、様々である。また対応が迅速に求められる中で、必要となる情報はワンパターンではない。状況に応じ、いくつものデータを何種類もマッシュアップする事で、意味がみえてくる。

ビッグデータとIoTへの取り組みは自動車各社だけでなく、自動車業界に参入するIT企業にとっても取り組みを加速するテーマである。収集されたデータの処理の深化、最適な加工編集、これが、社会課題や生活そしてビジネス上の問題や課題の解決やスケールに繋がる。特に、社会や生活という“広くあまねく“多くの人に接点を持つ場面においては、データから見える意味を、しっかりコミュニケーションし、その中で生きる人々の行動に繋げることが重要だ。改めて熊本震災を通じて、その重要性を実感している。

ビッグデータを開拓し豊かなモビリティ社会を創造していくために、自社だけでそれらを企画し開発する時代は終わった。各社が目指す姿を共有し早期実現を図るために、必要な技術を保有している企業の提携が加速し始めた。

次回からはダイナミックに動き始めたビッグデータやIoTと連動したモビリティ社会について、その歴史を振り返りなが解決された問題と、解決されていない問題などを解説していく。

<今井 武プロフィール>

株式会社アマネク・テレマティクスデザイン Founder/代表取締役社長。自動車技術会フェロー。2015年2月までホンダに勤める。ホンダでは、ナビゲーション・テレマティクス分野の企画開発・事業化に従事。2002年ホンダ双方向通信型テレマティクス「インターナビ」を立ち上げる。2012年役員待遇参事・グローバルテレマティクス部部長。

2011年、第61回自動車技術会開発技術賞受賞。東日本大震災でのインターナビによる取り組み『通行実績情報マップ』でグッドデザイン大賞受賞。2015年「第6回国際自動車通信技術展」で特別功労賞受賞。

  • 今井武
  • アマネク・トラフィックスコープ(スクリーンショット)
  • GPS付移動体向け防災デジタルラジオ《撮影 松木和成》
  • Amanekドローン《撮影 松木和成》
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