マツダ「G-VECTORING CONTROL」、派手ではないがこだわりつまった新技術

業界 レスポンス

マツダは、この5月の自動車技術会で学会発表をするという新しい技術の試乗・説明会を開催した。マツダが唱える「人馬一体」を人間中心の考え方でさらに進化させた新しいコンセプトである「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」と、その最初の実装技術となる「G-VECTORING CONTROL(ジーベクタリングコントロール、GVC)」である。

マツダは、これまでSKYACTIVシリーズの技術として、エンジン、トランスミッション、シャシー、ボディなどの新機軸を打ち出してきている。しかし、「これらはユニットごとの技術であり、いわば要素技術による部分最適に過ぎない。これを統合制御することで全体最適へと機能を高め、マツダが追い求める人馬一体を、より人間中心へと進化させる」と、マツダ 専務執行役員 藤原清志氏は「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICSコンセプト」を発表した。その第1弾が、エンジン制御によってシャシー性能を向上させる「G-VECTORING CONTROL」技術だ。

どういうことかというと、ドライバーのステアリング操作に応じて、エンジンのトルクを瞬間的かつ微妙な範囲での制御を行うことで、走行中の4輪の設置荷重を細かく最適化する。それによって発進時から加速、高速クルージングまで、あるいはコーナリング中、砂利道や凍結路など、あらゆる走行条件のステアリングの応答性、走行安定性を向上させるというものだ。

コーナリング中や雨、凍結路などでトルク制御を行う技術は、とくに目新しいものには見えないが、ポイントは、この制御をスリップしたときなど限定的な制御ではなく、発進したときからすぐに制御が有効になり、制御のための入力情報は、車速とステアリングの舵角のみだ。トルク制御は常に有効なため、その制御は非常に小さく、人間の知覚しきい値以下の細かい制御でもある。

カメラもジャイロセンサーも使わずトルク制御だけ? となると、ますます大したものではないのではと疑問に思うかもしれない。藤原氏もプレゼンでは「でもマツダなので地味です」と自虐的に語るくらいだ。

しかし、マツダの技術は地味なほど注目したほうがよい。SKYACTIVエンジンでも、当時のガソリンエンジン設計の本流ではない高圧縮比、しかもディーゼルでは低圧縮比という、すべて逆張り技術で競合エンジンより高環境性能、低燃費性能を実現している。

では、このような制御がどのような効果をもたらすのか。人馬一体とどのような関係があるのか。

まず、運転中のステアリング操作が最小限になり、応答性とリニアリティが向上する。結果として余分な修正操舵を低減させ、通常のコーナリング、緊急回避のレーンチェンジの横Gの発生をなめらかにし、不快な揺れを抑えてくれる。無駄な操作や車の動きを抑えてくれるため、燃費もよくなる可能性があり、運転中のストレスを低減してくれる。

Gの発生や荷重移動がスムースになるということは、ドライバーの負担だけでなく同乗者の負担、ストレスも低減させ、乗り物酔いしにくい車にもなる。

どのような制御をしているかというと、例えばコーナリング中、タイヤの荷重は、ターンインでフロントのアウト側が最大となるこれによってコーナリングフォースが生まれる。そして他のタイヤは、フロント・イン、リア・アウト、リア・インの順で荷重は低くなる。定常旋回中は、アウト側の前後のタイヤの荷重が高く、ターンアウト時に加速すると、リア・アウト、フロント・アウト、リア・イン、フロント・インの順で荷重が下がっていく。

ステアリング角度によって適切なトルク制御を行うことで、このような動きをより安定方向に向かわせる。直進時の細かいステアリング操作(路面の状況などで無意識のうち操作が発生している)、悪路での修正操作に対しても、同様な制御を行う。しかも、制御は5ミリ秒単位と、通常のトルク制御の間隔より短く、制御するトルクの精度も細かいもので、人間が制御の介入を感じることはない。藤原氏のいう人馬一体とはこのことだそうだ。

実は、このような制御は、運転のうまい人は自然に行っている。運転のうまい人は、アクセルコントロールで車の向きを変えられることを知っており、ハンドルやブレーキ操作だけで曲がっているわけではない。つまり、コーナーや路面に合わせ、微妙なアクセルコントロールによって、ステアリングだけによる車の動きを、よりスムースになるように(悪路ならば、スリップしたりグリップが抜けないように)意識しないレベルで制御している。

G-VECTORING CONTROLでは、このようなベテランドライバーの操作を、5ミリ秒という人間技以上の領域で実現しているといえる。

と、ここまで聞いても「そんな制御なら他のメーカー、車両でもできそうだ。なぜこれまで実現していなかったのか」という疑問が残るかもしれない。

その理由は、「これまでのエンジンのトルク制御の精度では、0.05Gといった微妙な加速度の制御はできなかった。SKYACTIVエンジンだから、くわえてその微妙な制御にしっかり反応するSKYACTIVシャシーがそろって初めて実現できた」(車両開発本部 シニアスペシャリスト 梅津大輔氏)からだという。

G-VECTORING CONTROLの市販車への投入だが、量産体制は整っているとし「それほど待たない近い将来」(藤原氏)とのことだ。

今回の発表は、テストコースでの試乗も行われた。インプレッションは別記事に詳細を譲るが、比較試乗すると、なめらかなG、悪路での運転のしやすさ、レーンチェンジのしやすさなど実感できた。実車投入が楽しみな技術だといえる。

  • 中尾真二
  • G-VECTORING CONTROLの制御イメージ
  • 専務執行役員 藤原清志氏《撮影 中尾真二》
  • SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICSの概要
  • 車両開発本部 シニアスペシャリスト 梅津大輔氏《撮影 中尾真二》
  • 走行中の車のGをいままでにない精度で細かく制御
  • 基本は横Gに合わせてトルク制御で前後のGも制御し、最適な荷重移動を実現
  • 試乗会では砂利道での修正操舵の少なさを実感
  • コーナリング中も余分な修正操舵は必要なく、加減速もなめらか
  • マツダ 新技術マツダ「G-VECTORING CONTROL」説明会《撮影 吉田瑶子》
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