【土井正己のMove the World】英国がEU離脱なら日本メーカーは英国離脱

業界 レスポンス

英国のEU離脱に関する国民投票が、6月23日に実施される。最近の世論調査では、離脱派が存続派を上回っており、離脱の可能性が高まってきた。英国がEUから離脱となると、日本の自動車産業にも大きな影響を与える。

◆1980年代から英国進出

英国には、日産、ホンダ、トヨタとそれぞれが、大きな工場を持っているが、これらは、日本と欧州の貿易摩擦が問題となった1980年代、90年代に進出したもので、欧州全体への生産拠点として活動するためであった。当時から、英国は、EC(欧州共同体)に加盟しており、英国で生産すれば、EC向け関税の10%が免除された。10%関税はEUにも引き継がれているので、もし、英国がEUから離脱すれば、10%がEU向け輸出車にかかってくることになる。

◆英国がEU離脱となれば生産は成り立たない

さらに、EUから英国への輸入部品にも関税がかかる。通関手続きも複雑となり、物流コストも跳ね上がる。英国生産の8割程度がEU域内に輸出されていることを考えると、おそらく、英国での生産は、成り立たなくなるだろう。また、日本メーカーが、最初の欧州生産拠点として英国を選んだのは、英語でのコミュニケーションが可能であったことが大きいが、今やチェコやハンガリーにも日本の自動車工場はあり、英語圏というメリットはほとんどない。EU離脱が決定した場合でも、3年間はEUに存続するので、日本の自動車メーカーは、その間に英国から出て行くことになるだろう。

離脱派には、「ノルウェーやスイスのように、EUに参加せずとも無関税など強い経済関係を保持できる」という人もいるが、これは難しい。なぜなら、ノルウェーやスイスは、EUの割当てる移民を受け入れている。また、EUへの拠出金も受け入れている。この2つ(移民と拠出金)が離脱の最大の理由であることを考えると、離脱後の関係でもこれは拒否するだろう。すると経済関係だけは続けたいというのは通らない。すなわち「いいところ取り」はできないということになる。

◆英国はどうなるのか

では、本当に英国はEUから離脱するのだろうか。個人的には、国民投票の本番では、「存続派が勝つ」と見ている。現在の世論調査は、「離脱か存続か」の選択になっており、「まだ決めていない」という選択肢がない。この浮動票がどう転ぶかで決まるわけだが、「いいところ取りはできない」ということを知るにつれ「今のままでいいではないか」と直前に判断すると思う。

2014年のスコットランド独立についての国民投票の時も、事前の世論調査では「独立支持派」が多数を占めた。そして、結果は「独立反対」が圧勝した。今回も、同様の現象となるのではないかと思う。また、スコトランドはEU存続を強く希望しているので、英国がEUから離脱すると「スコットランドは独立してEUに加盟する」という動きが出てくるものと考えられる。

6月23日の英国の国民投票は、日本の自動車産業にとっても目の離せないイベントだ。また、今回の離脱騒ぎは、シリアやアフリカの紛争、貧困問題が根底にある。私たちにとっては、こうしたところにも関心を持ちながら、これからの日本の自動車産業を考える良い機会である。

<土井正己 プロフィール>

グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

  • 土井 正己
  • 英国製の主な乗用車
  • ホンダの英国スウィンドン工場で生産が開始された新型シビック タイプR
  • MINI ジャーミン《撮影 野口岳彦》
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