【川崎大輔の流通大陸】「メイドインジャパンは必要ない」タイで生きる日系ブランド

業界 レスポンス

トヨタディーラー向けのラグジュアリーパーツ「LX-MODE」の企画・開発・デザイン・販売を行う株式会社バックアップデザインの小島氏に「LX-MODE」のタイ進出における課題と今後の展望について話を聞いた。

◆LX-MODEのタイ進出

2013年にLX-MODE ASIAを立ち上げて、本格的なタイでのビジネスをスタートした。実は2006年からタイへのビジネスにはかかわっていた。当時、タイの自動車販売店からの要望で日本からパーツの輸出を始めたのだ。当初は比較的好調に見えたが、年々売り上げが減少していき利益が出づらい状況になっていった。

タイへの本格的な進出のきっかけになったのが、2012年に開催された第1回バンコクオートサロンへの訪問だ。トヨタから開発依頼を受けたLX-MODE仕様の特注車『86(ハチロク)』がバンコクオートサロンに出展、それに合わせてタイで市場調査を行う機会を得た。その結果、日本からの自動車関連の輸入関税が高いため、現地では非常に高い販売価格となってしまっている現状を知ることになる。同時に、当時のタイアクセサリーパーツ市場は15年前の日本と似ていると感じた。タイはまさに自動車の黎明期。2012年当時、過去最高の新車販売台数の約140万台超えを記録しており、「タイで自動車をカスタムすれば必ず伸びる。しかし高い関税を避けるには現地で調達をしていくしか方法がない。タイを生産拠点のハブにして周辺国に輸出というアイデアが浮かんだ。」と小島氏は語ってくれた。輸出ビジネスは為替に左右されやすく、現地の市場動向によってビジネスが不安定だ。そこで、自らのネットワークを活用し現地パートナーと合弁会社を設立するに至った。

◆他の人と違う車に乗りたいタイ人

タイでは新車購入の際に、ボディーキットをオマケでつける文化がある。多くの自動車購入者は他者と違う車を乗りたいと考えているためだ。日本ではパーツがディーラーによって取り付けられた状態で販売されアフターパーツ市場が縮小している。一方、今の日本とは大きく異なりタイでは新車購入後に取り付けるためアフターパーツ市場に関心度合いが高い。特にハイエンド層ほどその傾向が強く潜在的市場がまだ残っている。更に、ものづくりに対する環境が整っており、タイアフターパーツ市場にとっての魅力といるだろう。

◆タイビジネスにおける成功要因は?

「日本のおごりがある以上、タイでのビジネスは成功しない」と小島氏が指摘する。よくアセアンに進出する企業が孤軍奮闘して、ビジネスが立ち上がらず撤退してしまうことが多々ある。日本の商品・サービスをそのまま持ち込むが、現地のニーズに合わせられないことが原因だ。

小島氏もタイビジネスにかかわった当時は失敗を経験している。メイドインジャパンだから売れると思って勢い勇んできたが、しばらくしてメイドインジャパンは必要ないと気がついたという。ジャパンクオリティーというところを前面に出していたが、日本から来た高いパーツなどタイ側は求めていなかったのだ。トヨタ車はタイで現地生産されているのだから、パーツも同じで良かった。そのことに気づいてからは、トヨタ用のパーツは現地調達100%で行っている。

◆タイのアフターパーツ市場における課題

2015年のタイ国内の新車販売台数は前年比9.3%減の79万9594台で、3年連続で前年実績を下回った。タイにおける新車販売台数の回復が遅れてはいるが、そこがアフターパーツ市場の最も大きな課題ではなかった。

重要な課題は「タイには安かろう悪かろうの文化が残っている」ことだと小島氏はいう。2013年からタイでの本格的なビジネスをスタートして、トヨタ車でいえば『ヤリス』『ヴィオス』『アルティス』などのレベルの自動車購入者は価格にシビアで安いパーツには勝てない。しかし、『カムリ』『ハイラックス』更には『フォーチュナー』のレベルになるとLX-MODEのラグジュアリー感がいきてくる。

そういった意味で今後は「トヨタのボリュームゾーンであるヤリス・ヴィオスのカスタマー層をしっかりと顧客にしていくことが重要である」と小島氏は考えている。当然、トヨタ自動車購入者のハイエンド層は現在の重要なターゲット顧客。そこではしっかりとした商材・バリエーション展開を考えていく。一方で、それ以外の顧客に対してもラグジュアリー感があるが、コストパフォーマンスが高い製品の開発が鍵となる。

すべてのLX-MODEのデザインは小島氏が自身で担当している。ラグジュアリーという高級感とコストパフォーマンスという低価格、相反するものをどのようにバランスを取っていくのか興味があるところだ。

◆LX-MODE ASIAのこれからの展望

「アフターパーツのラグジュアリーブランドとしてタイに根付かせたい」と小島氏は熱く語ってくれた。日本でもアフターパーツブランドは気がつくとブランドの方向性がぶれてしまっている場合が多い。はやっている車のパーツを追いかけていき、ブランドのコンセプトがなくなってしまうためである。確かにタイにおいてもアフターパーツでのブランディングはなされていない。一方で日本のコンセプトをそのまま持ってきても現地では受け入れられないだろう。

アセアン自動車市場においては、日本自動車メーカーはタイ産日本ブランドとなっている。日本産日本ブランドを作ればそれで良いというのではアジアでは厳しい時代に突入したのだ。現地のニーズに合わせた現地産日本ブランドを構築することが、これからアセアン諸国に進出する日系自動車アフター企業に求められて来くることなのだと思う。

<川崎大輔 プロフィール>

大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

  • 川崎 大輔
  • LX-MODEを装着したカローラ アルティス《撮影 川崎大輔》
  • 小島社長《撮影 川崎大輔》
  • LX-MODE使用《撮影 川崎大輔》
  • LX-MODEを装着したハイラックス《撮影 川崎大輔》
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