【土井正己のMove the World】フォードが発信する“世界危機”の警告

業界 レスポンス

7月末にフォードが、「純利益、前年比9%減」と4-6月の決算を発表したが、今後の見通しにおいて“世界的にリスクが高まりつつある”との見解を明確にした。続いて、発表された米国の7月販売実績においても、フォードは、前年同月比マイナス3%とふるわない。

前年割れとなったのは、フォードだけではない。1位のGM、3位のトヨタも前年をそれぞれ、マイナス1.9%、マイナス 1.4%と前年同月を下回った。フォードは、6年続いた米市場の活況が停滞し始めていると警告を発した。

◆Brexit騒ぎの影響で10億ドルと試算

フォードは、今回、唯一好調であった欧州市場においても、今後、大きな停滞が予想されると述べている。具体的には、Brexit(英国のEU離脱)騒ぎの影響でポンドが下落したことや英市場の混乱で、今後2年間で約10億ドルの損失が予想されると述べた。Brexit騒ぎを明確にコスト化したのは、フォードが最初であろう。実際に離脱するともっと大きな影響があり、英国の工場も今後どうなるかわからないと明確に述べている。中国も南米も停滞に入っていることから、世界的に危機が高まっているという警告をフォードは発信している。

◆フォードの危機予測は当たる

フォードのこうした将来予測は結構当たる。2009年、リーマン・ショックで、GMやクライスラーは経営破綻し、政府の資本注入で再生したわけだが、フォードだけは破綻しなかった。フォードは、危機が訪れる数か月前に今後の市場が混乱することを予想して、デトロイト本社など、保有資産を大量に担保に入れて、銀行から莫大な資金借り入れを行った。もし、この判断が少し遅れていれば、金融市場の混乱で銀行からの借り入れは実現せず、フォードも破綻していたはずだ。

今回のフォードの世界市場に関する警告は、的を得ているものが多いと思う。米国市場は、いくら原油安が続いているとは言え、6年連続での前年超えは異常で、ピークアウトが近づいていることは間違いない。中国市場にも過去のような盛り上がりは当面期待できない。そして欧州だが、英国のEU離脱が欧州市場全体に大きな影響を及ぼすことは明らかだ。

フォードは、英国でエンジンを生産しているが、部品は大陸側からの調達も多い。完成したエンジンは、大陸側に輸出し、車両組み立てが終わったら、またその車両を英国に輸入して販売している。まさにボーダーレス前提でのビジネスが定着している。英国フォードは、年間33.5万台(2015実績)を販売しており、シェア13%で英国1位だ。よって、経済の混乱により受ける影響も大きい。

今回のフォードの発表を受けフォード株は一時10%も下落したが、将来の見通しを直視し、公表したことは評価に値する。日本の自動車会社にとっても示唆に富むもので、この危機感(少なくともリスク認識)は、共有しておきたいと思う。

<土井正己 プロフィール>

グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形 大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年 までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

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