【川崎大輔の流通大陸】狙いはアセアン自動車アフターマーケット

業界 レスポンス

2016年7月にタイ、ミャンマー、ラオス、スリランカ、インド、中国を訪問した。これらの国の市場を自らの目で見る中で、アセアンにおける自動車アフターマーケットの拡大が加速していくことを確信した。

◆急成長するアセアン市場

東南アジア諸国連合(アセアン)の市場が急成長している。現在のアセアンと日本の交易額は2000年の1280億ドルから2倍ほども大きくなっている。以前よりアセアンは日本の企業にとって重要な生産拠点であった。産業の中で大きな割合を占める自動車産業を見てみると、1964年にトヨタがアセアンで最初の工場を建てたのを皮切りに、現在ではホンダ、日産、三菱、スズキなど8つの日本の自動車メーカーがタイに工場をつくり、自動車を製造している。タイで生産される自動車だけでも年間およそ200万台に達している。

そのようなアセアンであったが徐々に進出の目的も変化してきている。以前は自動車の製造コスト削減が主たる目的であったが、現在はアセアン市場での販売拡大にシフトし「獲得すべき市場」としてとらえられている。

日本国内の消費が年々減少傾向を続ける中、日本の自動車メーカーは各社とも新たに収益の獲得が見込まれる市場への参入を本格化させようとする動きが出てきている。その中でも、多くの自動車メーカーが目を向けているのがまさにアセアン市場だ。

◆アセアン自動車市場の大きな変化

これからのアセアン自動車市場の大きな変化として、4つの大きな変化に注目していきたい。変化の1つ目は、エコカー及び低燃費小型車政策だ。これによって各アセアン国の自動車市場の中に新しいセグメントが生まれている。タイではエコカー政策、インドネシアではLCGC(ローコストグリーンカー)政策によって小型車の市場が拡大してきた。

2つ目として環境対策による代替エネルギー推進、排ガス・燃費規制の強化である。これによってCNGなどの代替エネルギーやハイブリッド、電気自動車の市場が少しずつ大きくなり既存のセグメントが変化していく可能性がある。

3つ目はCLMV市場の成長である。カンボジアやラオス、ミャンマーやベトナムなどの新興市場の成長によって獲得市場としての魅力が増加、更に製造業のサプライチェーン創出による自動車部品製造拠点としての実現性が増すことだろう。

最後は、最も需要な変化と考える「市場の統合」だ。2015年末のACE(アセアン経済共同体)により、これから更なる域内市場の拡大、流通活性化が期待されている。統合によって新規ビジネスやニッチセグメントへの新規参入者が増える時代が到来するためだ。

このようなアセアンにおける自動車市場の変化を見据えながら、ある程度成熟した自動車市場に新たな商品とサービスを提供していくという動きが出てきている。特に特に日系企業にとってはチャンスである。

なぜならタイやインドネシアでは日本車の市場シェアは90%を超え、周辺のアセアン諸国においても自動車の市場が拡大してきている。新車販売では既に一定規模の現地の財閥を中心としたプレーヤーが各国に存在しており、ブルーオーシャンとは言い難い状況になってきている。そこでこれから注目するのが、日系企業主導によるアセアンの自動車アフターマーケットビジネスである。

◆自動車アフターマーケット

自動車アフターマーケットとは新車販売後に発生してくるビジネスの総称だ。大きく中古車、カー用品・補修部品、自動車整備、自動車賃貸、自動車金融、その他関連サービスの6分野で構成される一連の取引行為を含む市場となる。

中古車市場に含まれる主な参入ビジネスとしては新車ディーラー(中古車部門)、中古車ディーラー、中古車輸出事業、オートオークションなどを指す。カー用品・補修部品市場はカー用品販売、交換部品、中古やリビルドのリサイクル部品販売など、自動車整備市場は文字通りの整備業者で修理や補修メンテナンス、自動車賃貸業市場は自動車リース、レンタカー、カーシェアリングなど。自動車金融市場はオートローン、自動車保険などがある。最後にその他関連サービスは、自動車情報誌、中古車サイト、顧客管理システムなどが主なビジネスとなっている。これらの一連の取引を含む市場を自動車のアフターマーケットと呼ぶ。

アセアンにおける自動車アフターマーケットは、市場を把握することが非常に難しい。なぜなら、流通システムの整備が未熟であり、更に統計データもないためだ。しかしながら自動車アフターマーケットは、一般的に新車市場が成長することによって、マーケットが生まれ成長をしていくことになる。

自動車の需要が拡大しているアセアン地域は、中間所得層の急増が新車市場の拡大を支えている。この旺盛な新車購買欲に比例して、アセアンで急速に伸びる可能性を持つ市場が自動車アフターマーケットと言える。アセアン地域の人々の所得向上とともに、「安かろう、悪かろう」から「多少高くても品質重視」と考えにシフトしてきている。実際に現地を訪問して自らの目で市場を見て、現地のユーザーの話を聞いてみれば「日本の製品・サービスが欲しい」という層が確実に増えているのを理解するだろう。

長期的な視野を持ちアセアンの市場をしっかりと確保していくことが、自動車関連ビジネスの中で需要な意味を持つことになっていく。自動車メーカーにしても新車販売だけに注力するのではなく、アフターマーケットも視野にビジネス展開を考える必要があるだろう。ACEの発足とともに自動車アフタービジネスの動きが急速に加速されていると個人的に強く感じている。

<川崎大輔 プロフィール>

大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

  • 川崎 大輔
  • ミャンマーの日系整備会社《撮影 川崎大輔》
  • ミャンマーの日系自動車情報誌《撮影 川崎大輔》
  • スリランカの中古車販売店《撮影 川崎大輔》
  • インドの中古車街《撮影 川崎大輔》
  • 中国の中古車サイト《撮影 川崎大輔》
  • ラオスの日系オークション会場《撮影 川崎大輔》
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