パクスロマーナ(ローマの平和)!意外にも普通に乗れるSクラス並みの「フェラーリ・ローマ」(その2)【プレミアムカー厳正テスト】

コラム Clicccar

「チーム パルクフェルメ」は、利益を優先せず、優良かつ良質な自動車評論を展開することを目指したコンテンツ制作チームです。前回紹介したフェラーリローマでいよいよ試乗に繰り出します。

前後ともにブレーキキャリパーを車両中央寄りに配置、トランスアクスルレイアウトもあり前後重量配分50:50を実現。

いざローマと対面してみると、その佇まいは写真で感ずるよりさらにセクシーです。絞れるところはしっかり絞り、そうでないところは上品に膨らみ、そして嫌味がない程度に尖っています。ほかの現行フェラーリにくらべて刺々しさはありません。

左がフロントノーズのエンブレム、右がキーフォブ

フロントノーズのエンブレムを象ったキーフォブを携えて乗り込みます。インテリアは上質かつ個性的であり、超高級車ならではの職人技を感じさせるものです。

ダッシュボードの複雑な凹凸にはふんわりとレザーが貼り込まれ、炎天下に長時間停めておくことは想定していないものと思われます。シートは大ぶりですが、サイドサポートやランバーサポートなど多くの箇所が電動で調整できます。

運転席と助手席に別々の空間を生み出す“セル”コンセプトを採用した室内

そして眼前は、液晶パネルの洪水。一度説明を受ければ、その配置が理路整然としたものであり、ドライバーの視線を前方に集中させる意図が汲み取れますが、ウィンカーをステアリングホイール上のスイッチで操作することにだけは、最後まで慣れませんでした。

ロードカー用V8エンジンとしては採用例の少ないフラットプレーンクランクだけあって、アイドリングからは硬質な肌触りを感じます。ときおりブルっと震えるのは、厩舎(スクーデリア)で前足を掻くサラブレッドのようなものでしょうか。

幾ばくかの緊張とともに(なにしろ2682万円です)ステアリングを握ると、実にふんわりとして手触り良く、まるでメルセデスSクラスでも運転しているような高級感を覚えます。思わずのんびり走りたくなりますが、せっかくのサラブレッドですから、それらしく走らせてみましょう。

“F154BH”エンジンは排気量3,855ccのV8ツインターボで620馬力を発揮する

さすがフェラーリというべきか、エンジンのレスポンスは鋭く、トップエンドまで軽快に回転数を上げて行きます。どこかが圧倒的にスウィートということもなくて、フラットプレーンV8らしいビートをずっと放ち続けながらレブリミットである7400rpmまで回っていき、まだパワーが出そうだというところで自動シフトアップします。

ドラマティックではないけれど、全域におけるこのパワフルさには好感が持てます。

ステアリングは切り始めからクイックですが、直進性も両立しており、不自然な感じはありません。切り足していってもヨーに山谷はなく、加えてしなやかなサスペンションは段差も巧妙にいなすので、高速コーナリングでも思い通りの軌跡を辿ることができます。スロットル/ブレーキの各ペダルもストロークの初期から敏感に反応し、操作と反応との間に不整合を感じる事はありませんでした。

ステアリング/スロットル/ブレーキ、この3つの敏感さが見事に揃っているので、飛ばしても、ゆっくり走っても、ドライバーは心地よく楽しめることでしょう。

エンジンのスタートとストップは下スポーク上部の表示をタッチして行う。左右スポークの上にウインカーボタンが備わる。パドルはコラム固定式

敏感さは、それだけが敢然と物理スイッチとして残されているマネッティーノダイヤルによっていかようにも変わります。そのポジションはマイルドな方から「ウェット」「コンフォート」「スポーツ」「レース」「ESCオフ」の5種類ですが、「レース」から上はクローズドコース用のようです。

我々のいつものコース(都内一般道と首都高速)では、せいぜい「コンフォート」までで十分でした。「スポーツ」だとサスペンションの減衰力が上がり、操作に対するレスポンスも過敏なように思えたのです。街中を徘徊するお買い物車としてなら「ウェット」でもいいくらいです。レスポンスの最も怠いモードですが、鋭さが程よく緩和され、一般的な運転感覚になります。取扱説明書にも、雨でなくても市街地での快適性を求めるならこれを薦める、と書いてあります。

横一直線のデイタイム・ランニング・ライトはフェラーリ・MONZA SPのそれの流れを汲むデザイン

マネッティーノダイヤルで「ウェット」もしくは「コンフォート」を選んでいる限り、乗り心地は低い車高から想像するよりはるかにマイルドで、路面の継ぎ目をしなやかにいなします。平坦路なら50km/hを超えるあたりですでに8速に入っており、街中のちょっとした勾配もそのままクリアするほどの柔軟性を備えています。

ステアリングは軸の剛性感も申し分なく、そのフィールは繊細ながらも信頼がおける類のものです。また、クルマ自体も前後バランスが取れていて非常に運転しやすく、小回りも十分に効きます。

なにしろ100km/hでも1450rpmですから、コクピットは全般に静かです。エンジンは音質こそ硬質ですが、音量そのものはよく抑えられており、ロードノイズや風切り音など何か一つが突出するようなこともありません。

総じて、ローマはフェラーリと聞いて想像するより静粛性に優れています。乗り心地もタイヤサイズを考えれば望外に好ましく、こうなってくると逆にエンジンの硬質な唸りが邪魔になる、という意見もありました。それほどまでに快適な移動空間が保たれるのです。大昔のことゆえ想像するだけですが、パクスロマーナ(ローマの平和)とはこのことか、と歴史の授業を思い出してしまいました。

スペック的には十分ですが、エンジンのトップエンドのフィーリングや、サスペンションのスムーズさから察するに、ハードウェアにはまだまだ余裕がありそうです。フェラーリの持てる開発・製造能力をすべて使いきったフルスイングのドライバーショットというよりも、ターゲットの性能・快適性・価格に合わせた正確なアイアンのアプローチという感じです。

あまりにもバランスが取れたいいクルマであることが、このローマの数少ない弱点であるかもしれません。

フェラーリも今や上場企業です。収益の拡大を続けていかなければ株主の信頼を失ってしまいます。もしかしてフェラーリはこれから、メルセデスやBMWなどのスムーズなGT、たとえばSクラスクーペや8シリーズの牙城を本気で狙いに行くのではないか。ローマでの1泊2日のドライブはそんな予感を抱かせるものでした。

(文:チーム パルクフェルメ/写真:J.ハイド)

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