ゴルフGTEはひつまぶしのように異なる3つの味わいが楽しめる
エコカーは、走りの楽しさを犠牲にして燃費や環境性能に重要視する傾向が強いですが、今回試乗したプラグインハイブリッドカーのVW・ゴルフGTEもフツーのエコカー枠に収まってしまうのか、それとも“GT”の称号に相応しい走りを体感できるのか、とても気になるところです。

VWゴルフGTEのパワートレインは、最高出力110kW(150ps)/最大トルク250N・mを発生する1.4L直噴ガソリンターボTSIと、最高出力80kW(109ps)/最大トルク330N・mを発生する電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載しています。
そして、ハイブリッドモデル専用にチューニングされた6速DSGは、電気モーターと遮断クラッチが一体化され非常にコンパクトです。


電気モーターに電力供給を行うリチウムイオンバッテリーはリアアクスル前方に取り付けられ、フロントエンブレムに内蔵された充電ポートによって約3時間でフル充電することができ、EVとしてJC08モード燃費で53.1km、最高速度は130km/hまで走行することができます。
シート下にバッテリーを搭載するため、スペースが狭くなるというデメリットもありません。


ゴルフGTIとの違いは、GTIは赤のバッチとチェックのシートが特徴ですが、GTEは青のバッチとチェックのシートになっています。
また、メーター内にはパワーインジケーターがメインで設置され、その下側にタコメーターが配置されています。その違いを除けばGTIとの違いは少ないです。




ゴルフGTEはシフト横のボタンによって3つのモードで走りを選ぶことができます。まずはピュアEVのEモード。次に、エンジンとモーターをバッテリーの容量や走行状況に応じて最適なパワーソースを選択するハイブリッドモード。さらに、エンジン+モーターという2つのパワーソースをフルに活用したGTEモード。
またハイブリッドモードではバッテリーチャージモードも選べます。これはエンジンがメインの駆動力となり、電気モーターはオルタネーターとして機能し、リチウムイオンバッテリーをチャージするというものです。
今回はこの3つの走行モードを試すことができました。




スターターボタンを押して、まずはEモードで走行します。
EVは電気モーターのトルクによってゼロ発進の加速はガソリン車に比べて鋭いのですが、このゴルフGTEもレスポンスが鋭く、シームレスな加速は十分GTの称号に相応しい走り。高速道路ではあっという間に法定速度一杯まで加速してしまいます。
その圧倒的なパワーを225/45R17インチのタイヤがしっかりと路面に伝え、まるで滑るような軽快な走りはゼロエミッション・ホットハッチと言えます。




続いては、試したのはGTEモード。
モードを切り替えたとたん、エキゾーストノートも変わりエンジン+モーターが生み出す圧倒的なパフォーマンスは、これまでの滑るような走りから、路面をしっかりと捉えて走る「GT」の走りに変わります。
リチウムイオンバッテリーを搭載した低重心と、見事に調律されたサスペンションによる走りは、自分の思うままにコーナーをトレースし、圧倒的な安定感を感じられます。この高いパフォーマンスはこれまでのPHVとはまさに一線を画す走りです。
最後はハイブリッドモード。なぜ、このモードが最後になったのかというとEモードで電池を使い切ったからです。
したがって、バッテリーチャージモードで走行しました。充電を優先させたため、エンジンが掛かっている時間が長くなりましたが、街乗りで約10kmの間バッテリーチャージモードで走行していると、高効率なバッテリーはどんどん充電され、15km走行可能まで充電されました。


今回はEモード で市街地と高速道路。そしてGTEモードで高速道路、HVモードで市街地走行を行いましたが、どのシーンにおいても絶妙にセッティングされた足回りによって走りを楽しむことができました。
最初は充電器がチャデモ対応ではないということがネガに思えましたが、モードを切り替えることで走行中にバッテリーは充電可能なので、EV特有の電欠の恐怖を味わうこともなく、それほど不便さは感じないのではないでしょうか。
退屈なエコカーではなく、シーンによって走りの変わるプラグインハイブリッドのゴルフGTEは、ひつまぶしのような3つの走りが楽しめる新しいエコカーだと言えますし、プラグインハイブリッドカーが特別なものではないと実感できます。
(萩原文博)