高速道路でプロボックスが飛ばしてる理由が判明【その2】

コラム Clicccar

先日、「高速道路でプロボックスが飛ばしてる理由が判明(http://clicccar.com/2015/09/30/330133/)」というタイトルで、その件に関するイベントをご紹介したんですが、想像以上に反響が大きく、驚きました。

やっぱりみんな気になっていたんですね。ただ、イベントもすでに終了してしまってますので、その「飛ばしてる理由」について、こちらの本で記述されている部分を抜粋してご紹介します。

本のタイトルは「営業バンが高速道路をぶっ飛ばせる理由」です。

モータージャーナリストの森慶太さんが、サスペンションの神様の異名をとるサスペンションエンジニアの國政久郎さんに、道具として気持ちのいいクルマをどのように選らべばいいのかを解明していきます。「いまは性能が上がったから、どのクルマを買ってもいっしょ」という世間の定説を壊してくれるそうです。

では、どうぞ。

「某メーカーの技術者いわく、バン車は“貨物車です”と。要はトラックと同じような扱いで、乗用車とはハッキリ区分けが違うということです。バン車のほかにタクシー車両も貨物車扱いだそうです。つまり、人を運ぶ貨物車(笑)ですね」

−−ほう。

「乗ってみると、貨物車は明らかに車体の強度が違っている感じがあります」

−−もちろん、乗用車よりも高いわけですね。

「なぜそうかというと、貨物車は重たい荷物を運ぶためのクルマだからです。強度や剛性や耐久性といったところに関して、乗用車とは考えかたが違います」

−−はい。

「貨物車の車体はたんに頑丈なだけではダメで、軽さも求められます。これは大型トラックの場合を考えるとわかりやすいと思いますが、クルマ側の重量が増えるとそのぶん、最大積載重量が減ることになります」

−−クルマと荷物の合計で最大何トンまで、というレギュレーションがありますね。あとはそう、荷物でもない余計な重さはジャマなだけ。

「バン車と乗用車の違いに関しては、余計な装備がついていないぶんバン車は軽い、というのがあります」

−−はい。あとは、音がやかましい(笑)とかですか。

「防音や防振の対策が簡素なぶん、乗用車基準だとそういえるかもしれません。ノイズが大きめだとかバイブレーションが強めだとか。室内の足元にはうすーいカーペットかゴムマットぐらいしかなくて、だから音がする。振動がくる。でもそんなのは、計測したら数値が大きいだけともいえます」

−−はあ。

静かなようで静かでない乗用車もある

「その一方、ドライバーにとっては、走行中の騒音や振動もある種の信号、判断材料です。音圧やピッチの違いで路面の状況がよくわかったり、そのときのクルマの速度を体感で正確に把握できたりもします」

−−騒音や振動は、消してあればいいというものでは必ずしもない、と。

「判断材料として必要な音や振動が消されてしまっているせいで、目でみて判断できる速度と身体のほかの部分で感じている速度が一致しないクルマ。そういうのは乗っていて気色悪いですよ。“速度感がない”なんていったりしますが」

−−速度感、ですか。

「いかにも静かで滑らかなようでいて、速度感がない。そうかと思うと、車体が弱いから実はガタガタやブルブルがけっこうでていたりもします。乗用車は」

−−なるほど。

「“ブル感”といったりします。一見快適そうでいて、そうでもない。誰でもすぐにそれとわかるような騒音や振動よりもかえってたちが悪かったりします」

−−んー。

安心して出せる速度上限が高い

「あるいは。たとえばショックのカドを丸めるためにゴムブッシュをやわらかくすると、往々にしてその弊害がでます。ある手の入力への対策としてはすごく有効でも、ほかのところでは……というふうに。しっかり踏ん張っていてほしいところでぐにゃっとしたり。“グニャ感”ですね」

−−ゴムで逃げるテは万能ではない、ということですね。

「そこへいくと、バン車の車体にはゴマカシがありません。ダイレクト感があるというか。おかしなガタガタやブルブルはないし、実際の速度と速度感がキレイに連動して変わります。オトシン(音と振動)環境に関していうと、バン車のそれは、単に“うるさい”といって斬って捨てていいようなものではないと思います」

−−でも、バンはシートが安っぽかったりしますね。

「見た目は安くても、ヘンにこねくりまわした作りになっていないぶんスッキリしています。長時間体重がかかっていてもツブれにくいスポンジがクッションに使われていたりもして、だから、いいヤスモノ感といえます」

−−んー。

「重たい荷物を運ぶためのクルマであるからには、重たい状態でちゃんと走れないといけません。つまり、それなりの駆動力が必要になります。ということで、バン車はトランスミッションのギア比の設定が低めです」

−−最近の乗用車と違って、エンジン回転数の極端に低いところを使って巡航するような設定にはなっていない、ということですね。

「同じスピードで走っていても、乗用車よりもエンジンの回転数の高いところを使っているわけです。そこはトルク特性上余裕のある、おいしい領域で、したがって、積み荷が軽い場合は気持ちよく加速してくれます。レスポンスがいい。また、アクセルペダルを離すとしっかりエンジンブレーキがききます。“空走感”がない」

−−そういうクルマだから運転しやすくて、だからついついトバしてしまうことにもなりかねないと。

「運転手にとって速度の管理がしやすいクルマになっている、ということです。絶対的な速さというよりは、安心して出せる速度の上限が高い。エンジンの特性に関しても、バン車はカタログ上の5psや10psの違いよりも低速トルク重視です。ガソリンエンジンでも、普段使うところでしっかり力が出るようになっています」

−−はい。

乗り心地を決めるのはボディ

「サスペンション関係はどうでしょう。やはり重さを支えることがバン車では重要になってくるので、バネやダンパーの設定はカタめです。ソフトな乗り心地よりも、底突きしないこと。それと、ヨタヨタしないこと。サスペンションのアームやリンクは、高荷重を想定した頑丈な作りのものになっています」

−−はい。

「アームやリンクに関しては、それぞれ単体で頑丈なだけでなく、全体としてもガッチリしていないといけません。機構はシンプルに。取り付け部の剛性を高くするためには関節部のラバーブッシュもカタめになります」

−−で、乗り心地はカタい。

「乗り心地というと、バネやダンパーをカタくすると悪くなるイメージが一般にあります。でも本当は、決してそうではありません。簡単にいってしまうと、車体がガッチリできていれば乗り心地はよくなります」

−−そうですか。

「すぐにワナワナするような車体だと乗り心地はよくならないし、たとえアシをカタめたとしても走りはしっかりしません」

−−いずれにしろキモは車体、ということですね。はい。

「それと、バン車はタイヤも違います」

−−幅広でペタンコなサイズのものは使われませんね。

「偏平率でいうと、たとえば75とか。サイドウォールをみると、4PRとか6PRとか、乗用車用のタイヤでは見かけない記号が書いてありますが、耐荷重の指標です。当然ながら、商用車用は高荷重対応型です。LTと書いてあるのはライト・トラック用」

−−PRはプライ・レイティングの頭文字ですね。昔使われていた綿糸のコードの何枚重ね相当か、という。

「商用車用のタイヤは簡単にいうとカタいタイヤという印象ですが、振動の吸収がよくてあとを引かないので、実は乗り心地がいいといえます。サスペンションとしての能力が高いタイヤ。それと、サイズ的に太すぎたり偏平すぎたりしないので、ハンドル操作に対する反応が穏やか、というよさもあります。余裕をもって進路を管理できる、神経質さのないタイヤ」

−−あー。

レーシングカーに公道用ラジアル

「ハンドル操作に対する反応が穏やかなタイヤは、真っ直ぐ走るのがラクなタイヤでもあります。車体やサスペンションがしっかりしているのも真っ直ぐ走ることに関してはプラスの要因です。さらに、ハンドルのギア比がクイックではないこと。少々のことではタイヤの向きがフラついたりしない、あるいはクルマの進路が意図せずグラついたりしない性能が、バン車には備わっています。進路を管理するにあたっての、しっかり感。扱いやすさ」

−−それによってもまたトバせてしまう。

「たとえていうなら、レーシングカーに公道用のラジアルタイヤを履かせたような感じでしょうか。タイヤとドライバーの間にぐにゃぐにゃしたアイマイなところがなくて、道路の状況や速度が体感でわかりやすい。進路の管理がやりやすい。アクセル操作に対するレスポンスがいい。おかしなブルブルやガタガタがないから快適で、タイヤの素の特性のとおりに動いてくれる」

−−なんだかすごくいいものに思えてきました。

「こうしてバン車の特性をみてくると、どうでしょう。いいスポーツカーに望まれるものがズラッと揃っているとはいえないでしょうか」

−−いえそうですね。

「余計な飾りやスペックを取り払った、素の状態のクルマ。素の状態がいいクルマ。視界がいいとか四隅の見切りがいいとか、そういったよさもバン車にはあります。おかしな色つきガラスが使われていたりもしません」

−−はい。

 

個タクのロイヤルは……。

タクシーのコンフォート性能

「まとめると、バン車には“道具感がある”ということになります。手応えをはじめ、さわるところの感触がどこもわかりやすい。操作した結果としておきていることがわかりやすくて、その反応に対する次の操作も決めやすい。反応がリニア、といったりします。自分が運転するクルマが、常に自分の手の内にいてくれる感じ、ですね。自分の管理下に置けている感じ」

−−んー……。

「たとえばの話、柄を握った感じがフワフワで、しかも気がついたらまな板まで切ってしまっていた−−なんていう包丁は、道具としてマズいですよね」

−−はい。コワいです。危ないです。手の内にあって手の内にない道具。

「そういえば先日、タクシーに乗って驚きました」

−−ほう。

「某社のタクシー車両でしたが、乗り心地がものすごく快適で」

−−あ、コンフォートの性能が高かったんですね。

「降りるとき運転手さんに“ちょっと待って”といって、タイヤの銘柄を確認してしまいました」

−−(笑)。

「減りにくいこと重視の、普通のタクシー専用タイヤでした。次に乗った個人タクシーのクルマは乗用車で、ロイヤルなんとかという豪華な仕様でしたが乗り心地はよくありませんでした。その格差にまたビックリ。あの2台の乗り心地を較べたら誰もが、おそらく10人中9人は、貨物車(タクシー車両)の乗り心地のほうが断然いいというでしょう」

−−はい。というわけで、営業バンの速さのヒミツがわかってきました。

「でも、高速道路の追い越し車線をトバしているバン車が多い大きな要因は、燃料代が自腹ではないことかもしれません。だから安心してトバしてしまう」

−−(笑)。

いかがだったでしょうか。プロボックス/サクシードなどは、意外に安心して走れるから飛ばせるんだってことがわかってきました。一部、業界人にも人気がありますもんね。

あ、だからといって、くれぐれも営業車向きのクルマで飛ばしてくださいとオススメしているわけじゃないので、安全な速度で余裕を持って走ってくださいね。

(clicccar編集長 小林 和久)

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