「2018 パフォーマンスカー オブ ザ イヤー」決行! 今年もっとも楽しいスポーツカーはどれか?

コラム Clicccar

2018年は記憶に残るハイパフォーマンスカーが次々に発表になった年だった。そのなかから、私たち試乗チームは白熱した議論のすえ、ベスト6にまで絞りこんだ。「アルピーヌA110」、「BMW M2コンペティション」、「アストンマーティン ヴァンテージ」、「マクラーレン セナ」、「フェラーリ488ピスタ」、そして「ポルシェ911 GT2 RS」の6台だ。

排気量も販売価格もバラバラだが、ひとつだけ共通点があるのにお気づきだろうか。そう、どれもRWDである。だから私たちは、絶対的な動力性能ではなく、ズバリ「操縦の楽しさ」を選考基準に設定した。

今年登場した数多いクルマのなかで、私たちのハートを一番掴んだのはどれか? さあ、「2018 パフォーマンスカー オブ ザ イヤー」の幕を開けることにしよう。

試乗の舞台はシルキュイ・ド・シャラード。フランスのクレルモン-フェランにある、かつてはF1フランスGPが開催されたサーキットだ。カーブと起伏に富む全長8kmの、クルマにも乗り手にも難しいコース。サーキット走行を中心に付近の公道での乗り味を勘案してランクをつけていくことにした。

私たちの試乗は太陽が昇るとともに始まった。アルピーヌは今日の6台中もっともコンパクトで軽量、252psのパワーも一番温和しい。ケイマンより全長で180mm短いコンパクトなボディは、低い着座位置からも実感できる。ボディの四隅の位置を正確に把握できるのは、今どきのスポーツカーでは希有な美点だろう。わずか1110kgの車重もアルピーヌの名に恥じない。

敏捷であることと、極上のデリカシーの持ち主であることはサーキットを走り始めてすぐにわかる。ステアリングのわずかな入力に反応してノーズが向きを変える。フロントに履く205セクションのミシュラン パイロットスポーツ4の微妙な動きが手に伝わってくる。乗り心地がしなやかなのも印象的で、縁石にタイヤを乗り上げてもサスペンションがショックを見事に吸収する。

踏み心地が秀逸な4ピストンブレーキで減速、ステアリングを切り込んでターンインの態勢に入ると比較的スプリングが柔らかいこともあってロール量はやや大きい。ドライバーのヒップポイント辺りを中心に向きを変えていく。ブレーキングを残しつつ舵角を増やしていくと軽くテールを振り出すが、スロットルによるラインの修正は容易だ。

A110に乗るとスポーツカーにとってハイパワーは重要だが、決定的な要素ではないことがわかる。アルピーヌならパワーを使い切って限界領域に踏み込める。その楽しさときたら、ちょっと比べるものがない。

乾燥重量1530kgのアストンマーティン ヴァンテージは、サーキットの素早い切り返しの連続では、大きなマスを感じざるを得ない。コーナー進入時のブレーキングで、前輪に荷重が一気に移動してアンダーステアに陥る。

従って、ターンインではスロットル開度を控え目にしてノーズの方向が決まるのを待ち、旋回の後半で加速するのがコツだ。そうすると穏やかなオーバーステアを伴って脱出できる。なお、ESPはトラックモードでも頻繁に介入し過ぎる。

ステアリングはセンターの直進位置がビシッと決まる一方、微少舵角にも反応する。ただしコーナーの曲率によっては旋回中に舵角を修正する必要があり、あともう一歩、直感的な操作ができるといいと思った。

ヴァンテージが最良の面を発揮するのは、穏やかな起伏に富んだ公道を飛ばすときだ。オーナーの大半は主に公道を走らせると思われるので、これは重要な資質である。

ちなみに、ヴァンテージは価格に比してチープな内装で損をしている。特にエアベントの仕上げなど、アストンの名に相応しいとは言いかねる。

BMW M2コンペティションはコンパクトなボディの割に軽快感に欠ける。ドライバーと路面との間に1枚毛布を敷いたような感覚がつきまとうのだ。エンジンは410psと充分にパワフルなのだが、BMW直6らしいメリハリが伝わってこない。

この日走ったサーキットは鋭く左に回り込んだあと、2つのライトハンダーを抜けて直線にいたる区間がある。私は最終コーナーをできるだけ高速で抜けるべく、スロットルを大きく開けたのだが、その瞬間、デフロックが効いて後輪の回転スピードが前輪を上回ってしまった。結果としてオーバーステアに陥り、なすすべもなく周回を終えたのだった。

もちろんM2にも美点はある。シートは快適だし、足は硬められたとはいえ、実用に供せる範囲内にある。

ポルシェ911GT2 RSは、サーキット走行に焦点を絞ったクルマにしては、内装の造りがいい。建て付けがソリッドだ。骨格がCFRPのシートは包み込むように身体をホールドし、なおかつ長時間の高速走行でも快適。私たちの試乗車はヴァイザッハ仕様で、備え付けのチタン製ロールケージ一つ取っても、その造作は申し分なかった。

しかしこれは本質的には公道も走れるレースマシンだ。700psと750Nmのパワー&トルクを駆使して、ニュルブルクリンクを6分47秒3で周回するとは、もはやスーパーカーの領域だ。

公道での乗り心地は素晴らしくしなやか。ステアリングもシャシーも潤沢な情報を伝えてくる。しかし公道では、実力のほんの一端しかわからない。

やはり本領を発揮するのはサーキットで、その走りはセンセーショナルというほかない。レブカウンターの針がダイアルの3分の1を超えると、可変ジオメトリーターボは一切のラグを伴わずにブーストを上げる。排気音は大気を切り裂くような自然吸気のGT3とは異なり、やや機械的、ただしズシッと腹に応える迫力がある。

ステアリングは充分に軽くてフィールに富み、比較的クイック。パーフェクトだ。コーナリングが容易なことは拍子抜けするほど。ハードブレーキングののち軽く舵角を与えると、重いリヤが先に回り込むのだが、感覚的にはドライバーが回転軸の中心にある。このごく穏やかなオーバーステアが、911固有のアンダーステアを巧く相殺している。

限界域内のGT2 RSは後輪にズッシリと荷重が乗っているので、その挙動はマイルドにしてソリッドだ。ドライバーはそれに勇気づけられてスロットルを開ける。スピードが上がるに連れてオーバーステアの度合いが増え、後輪に掛かるトルクと325セクションの21インチ ミシュランカップ2との間でせめぎ合いが始まる。そうした一連のプロセスが、逐一ドライバーが伝わってくる。

この時点でGT2 RSは断トツの1位に躍進した。しかし、この勝負そう簡単には決まらない。

488ピスタは空車重量が1385kgでパワーは720ps。GT2 RSが1545kgで700psだから、160kgと20psのアドバンテージがある。しかし実際に走らせると紙の上の差以上に、パワフルに感じる。

488ピスタは全身がシャープなレスポンスの塊だ。スロットルはつま先の動きに瞬時に反応し、ステアリングのギヤレシオはGT2 RSよりはるかにクイックといった具合で、私は走り始め、その過激な反応にいささかたじろいだほどだ。

コーナリングも切れ味鋭い。ステアリングを切った瞬間にノーズが向きを変え、245セクションのミシュラン パイロットスポーツカップ2が旺盛なグリップを発揮して、エイペックスをかすめていく。

シャシー能力の限界ははるかに高いところにあるのだが、コーナーの曲率によっては素早くかつ正確な微舵修正を求めてくる。アンダーステアが出る一歩手前で軽くスロットルを緩めると滑らかにオーバーステアに転じ、必要に応じてEデフがトラクションを確保する。

こうして文字にすると、いかにもトリッキーなハンドリングに聞こえるが、実は488ピスタはドライバーをこの上なく勇気づけるスーパースポーツである。自分でも「やり過ぎか」と思うくらいレイトブレーキングを敢行しても、ABSは体感できるほどには介入しない。乗り手が求める通りに減速してコーナーに飛び込む。このときのフロントグリップの盤石振りが、乗り手にとって最高の味方になる。おそらくCTオフの状態でも最後のセイフティネットは張られているのだろう。

488ピスタは予想をはるかに上回る洗練されたロードカーでもあった。サスペンションはしなやかに動き、日常的なスピード域でも間髪を入れないパワーデリバリーを満喫できる。

低いシートに収まったドライバーをセナは温かく迎える。ドライビングポジションは完璧だし視界も秀逸、ステアリングも適度の操舵力でフレンドリーだ。

しかしひとたびピットロードを抜けて本コースを走り始めると、セナはすぐにその本性を露わにする。とにかく身体に伝わる振動が凄まじい。最高パワー800psに対して、乾燥重量1198kgに過ぎないから信じがたいまでに速いのはむしろ当然だ。しかし、セナが911GT2 RSと488ピスタとの間に一線を画しているのは純粋な加速力ではなく、旋回スピードにある。

ピレリ トロフェオRのグリップ、強力無比なブレーキ、前後左右のタイヤを連結した油圧サスペンション、巨大なリヤウイングがもたらす最大800gのダウンフォース。こうした諸要素が有機的に関連して、一頭値を抜いたコーナリングスピードを可能にしている。

M2が後輪を空転させてもがいた区間を、セナは盤石の姿勢でクリアしてみせた。ここでそのシーンを再現してみよう。ドライバーからするとエスケープゾーンを間一髪で逃れるといった感じまで制動を遅らせる。それでもセナがコントロール下にあるという自信は損なわれない。ステアリングを切って進路を変える際の、操舵力が徐々に増していく様子は、サーキット走行を日常的に行うドライバーの期待感にピタリとマッチしている。

少しずつビルドアップするロール量と、横Gとのシンクロも見事だ。コーナーのエイペックスを超えたところでもトロフェオRはグリップを残しているが、リヤがかすかに外に振れる。ここでひるんではならない。さらにパワーオンを続けるとターボのブースト圧が最高に高まるのに呼応して、リヤタイヤがパワースライドを始める。ステアリングによる修正は容易なので、結果的にインをキープした旋回ラインを辿ることになる。もちろん、これはタイムを度外視した、純粋に楽しみを求めたドライビングスタイルだ。

スライド走行に徹したドライビングは乗り手を没頭させるか もちろん答えは「イエス」。しかしそれは恐怖心と紙一重のスリルだろうと問われれば、私はそれに対しても「イエス」と答えざるを得ない。

興奮冷めやらぬ面持ちで、私たち試乗チーム一行は集合した。これからファイナリスト6台のランクをつけていく。

6位は全員一致で、BMW M2コンペティションに決まった。乗って楽しく、速い。それに6台中2人以上乗れるのはこれだけだ。しかしいかんせんカリスマ性に欠ける。それでも、今年登場したベストパフォーマンスカーの6位に着けたのは立派だ。

どれを5位にするかは揉めたが、結局ヴァンテージに落ち着いた。このアストンが本領を発揮するのはサーキットより公道で、とにかくドライバーを夢中にさせる。しかし488ピスタと911GT2 RSは、公道でもサーキットでもヴァンテージよりずっとフォーカスが鮮明に合っている。しかもこの2台は、公道での実用性をほとんど犠牲にしていない。これがヴァンテージ5位の理由だ。

4位にはアルピーヌが入った。試乗チームのなかには1位に推す声すらあった。乗り手を操縦の境地に誘うキャラクターと、純粋に走る楽しさが高く評価された。実際、公道ではコンパクトな外寸がモノを言い、大柄なライバルを簡単に置き去りにする俊足を示した。サーキットでも一部のライバルよりよほど楽しい。しかしアルピーヌのキーを、はるかに高価なスーパースポーツのキーと一緒に並べられたら、私ならこのフランス製スポーツカーを選ぶとは思えない。繰り返し申し上げるが、アルピーヌの4位は善戦だ。

サーキットでのセナは抗しがたい魅力だ。加速力、ハンドリング、そして制動性能。どれもが乗る者に畏敬の念を起こさせる。ただしその極限を見極めるには強い決意を要する。

今回試乗した6台のなかでセナはベストのサーキットカーかとの質問に、私は「イエス」と答える。究極のサーキットカーが欲しければ、セナを選べばよい。しかしセナは3位に留まった。

911GT2 RSと488ピスタはサーキットではセナに一歩譲るかもしれないが、この2台はセナより親しみやすく、よりエキサイティングで、なにより乗っていて楽しい。この2台でサーキットを走ると、もうこれ以上は必要ないと感じる。公道では乗りやすく、それでいてゾクゾク感を上手に伝えてくる。

この『2018 パフォーマンスカー オブ ザ イヤー』の栄冠を手にしたのは「488ピスタ」だ。911GT2 RSを僅差で抑えての勝利だった。サーキットではブレーキとギヤシフト、エンジンがわずかに優る。公道での楽しさも一歩上回る。卓越したパフォーマンスの持ち主なのに近づきやすいと感じる。穏当なペースで走っても楽しい。488ピスタほど、多彩な才能を発揮するパフォーマンスカーはほかにない。まさに「スーパー」という表現が相応しいスーパースポーツ、それがフェラーリ488ピスタだ。

TRANSLATION/相原俊樹(Toshiki AIHARA)

(GENROQ Web編集部)

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