ドイツのメガサプライイヤー、ZFが新型スープラも採用した8速ATの次世代バージョンをお披露目!【ZFグローバルテクノロジーデイ2019】

コラム Clicccar

少し自動車に詳しい方ならば、「ZF」というメーカーの名前を聞いたことがあるはずです。正式社名は「ZFフリードリヒスハーフェンAG」。Zは「Zahnrad(歯車)」Fは「Fabrik(工場)」の略で、フリードリヒスハーフェンは創業地であり、現在も本社を構えている場所の地名(ドイツ南部で、スイスとの国境が目の前)です(ちなみにAGは「Aktiengesellschaft」の略で、株式会社のこと)。

ZFはいわゆるサプライヤー(部品メーカー)なのですが、単なるいちサプライヤーではありません。乗用車および商用車の分野において、ドライブトレーンからシャシー系コンポーネント、セーフティ・テクノロジーに至るまで、ありとあらゆる製品を網羅しており、40カ国・約230拠点において約15万人もの従業員を擁する、世界最大級の「メガ」サプライヤーなのです。

ちなみに、2018年の売り上げは369億ユーロとのこと。1ユーロを約120円として計算すると、なんと4兆5000億円! サプライヤーと聞くと、自動車メーカーを支える縁の下の力持ち的なイメージがありましたが、ZFの規模の大きさはアンビリーバブルです。

そんなZFの創業は1915年のこと。かの有名なツェッペリン飛行船用のランニングギアの製造から、ZFの歴史は始まりました。1920年代に入ると自動車部品市場に参入を果たし、乗用車および商用車用のトランスミッションの製造を開始、1960年代には初のオートマチックトランスミッションを市場に投入しました。

ZFはその後、ショックアブソーバーメーカーのザックス、安全関連部品大手のTRWオートモーティブといった会社を傘下に加えることで、着々とその規模を拡大。ドライブライン、シャシー・テクノロジーを中心に、「環境」や「安全」、「自動運転」に関わるテクノロジーを数多くの自動車メーカーに提供しているのです。

ZFは開発中の最新技術や今後の方向性をお披露目するイベントを定期的に行っています。今年は、ドイツのブランデンブルク州にあるサーキット「ユーロスピードウェイ・ラウジッツ」にて開催され、ドイツのみならずアメリカ、ブラジル、中国、そして日本と世界各国のメディアが集まりました。

ちなみにこの「ユーロスピードウェイ・ラウジッツ」のオーバルコースでは、かつてCARTが開催されたこともあり、2001年にはアレックス・ザナルディが大クラッシュしたことを覚えているレースファンの方もいるかもしれません。

7月上旬に開催された「ZFグローバルテクノロジーデイ2019」のキーワードは、「#MobilityLifeBalance」でした。

本来は楽しいものであるはずの移動(モビリティ)ですが、一方でとかくストレスを生み出すものである、とZFは投げかけます。その原因は、いまだに解決されることのない都市部の渋滞や悲惨な交通事故、深刻な大気汚染といった問題です。しかし、移動は人間の基本的な欲求です。今後、多くの人々が簡単に手頃な価格で利用することができ、安全かつ快適なモビリティがますます必要とされるはず……。

「#MobilityLifeBalance」には、そうしたZFの思いが集約されています。モビリティが人間の生活を豊かにする。ZFではそんな社会の実現のため、EVや自動運転、さらに安全性や快適性を向上させる技術の研究・開発を進めています。そうした成果の一環を、今回のイベントで垣間見ることができました。

ZFの主力アイテムといえばトランスミッションです。なかでもFR車用オートマチックトランスミッションはZFの独壇場で、「8HP」と呼ばれる8速ATはアルファロメオ、アウディ、アストンマーチン、ロールスロイス、ランボルギーニなどなど多くの自動車メーカーが採用しています。特にBMWはほとんどのFR車がこの8HPを採用しており、Z4と基本メカニズムを共用するトヨタ新型スープラのトランスミッションも、この8HPを搭載しています。

ちなみに、HPの「H」は「Hydraulic(油圧)」 、「P」は「Planetary gear set(遊星歯車)」を表しています。

2008年に生産が開始された8HPは、BMWのF01型7シリーズに搭載されて世の中に登場しました。現在は第3世代まで進化を遂げており、新型スープラに搭載されているのも、この第3世代です。

8HPのドライバビリティにおける特徴は、なんと言ってもキレのいい変速フィーリングです。スロットルオンして加速する際にはスパスパッと小気味良くシフトアップしてくれて、ドライバーはスポーティな加速感を味わうことができます。

そしてこのたび、「ZFグローバルテクノロジーデイ2019」の会場において、第4世代8HPの技術説明が行われました。

第4世代8HPの大きな特徴は、「電動化」を前提に開発されたことです。

ZFでは、2030年になっても、まだ70%のクルマがエンジン(内燃機関)を搭載しているだろう、と推測しています。そんな中でCO2排出量を削減するには、プラグインハイブリッド化が一番可能性がある、とも述べています。

80〜100kmのEV航続距離があればディリーユースを十分賄うことができますし、充電ステーションが周囲にないときに電池切れになっても立ち往生する心配がありません。特に中国のような国では「パーフェクトソリューションだ」とのことです。

同時に、コストが低いマイルドハイブリッドも有望な選択肢です。充電ステーションのようなインフラが整っていない国(例えばポーランドは、充電ステーションがほとんどないのだとか)なら、プラグインハイブリッドよりも向いています。

【2022年以降はMHEVとPHEVが主流になる】

2030年に向けてはクルマの電動化が避けられない方向なのは間違いありません。が、いずれのシステムが主流になるかはマーケットにもよりますし、時代の流れによっても変わってきます。未来を正確に予測するのは困難です。

そこで今回開発された第4世代8HPでは、電動化を考慮しただけでなく、モジュール設計によってコンベショナルなエンジン(内燃機関)、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドにフレキシブルに対応できるようにしたのも大きな特徴となっています。

【第4世代8HP・コンベンショナル仕様】


こちらはコンベ仕様ですが、BSGが付加されます。BSGとはベルト駆動式スタータージェネレーターのこと。エンジンの始動用のスーターターと発電用のジェネレーターの役割を兼ねるモーターを高出力化することによって、発進時や加速時のアシストして利用することで燃費向上を図るもの。コンベ仕様ではありますが、これもいわゆる「マイルドハイブリッド」の一種です。

【第4世代8HP・マイルドハイブリッド仕様】


マイルドハイブリッド仕様では、48V仕様のモーターを搭載します。これはエンジンと直結して配置することも、エンジンとトランスミッションの間に配置することも可能です。ハイブリッドの定義では、前者を「P1システム」、後者を「P2システム」と呼ぶのですが、P2システムではエンジンをクラッチで切り離してEV走行することが可能です。

【第4世代8HP・プラグインハイブリッド仕様】


プラグインハイブリッド用は、ZFが本命視しているものです。コンベ仕様やマイルドハイブリッド仕様で存在していたトルクコンバーターの代わりに、150kW/450Nmのモーターと、ILE(インテグレーテッド・ローンチ・エレメント)を内蔵します。

【第4世代8HPのCO2削減量を第3世代と比較】


こちらは、第3世代と第4世代のプラグインハイブリッド仕様を比較したもの。モーター出力が強化されたほかにも、第3世代では外付けだったパワーエレクトロニクスがトランスミッションのハウジング内に内蔵されたほか、ギヤシフトを行う油圧システムをコンパクト化(配置に必要なスペースが3.1リットルから1.8リットルに)、オイルポンプも2基から1基に統合されるなど最適化が図られたことが分かります。

また、モーターを制御するパワーエレクトロニクスは、従来の第3世代8HPでは靴箱ほどのサイズがありましたが、第4世代8HPではトランスミッションのハウジング内に収められています。これは省スペース化を実現するだけでなく、自動車メーカーにとっては車体の組み立てが簡略化される、というメリットもあります。また、車内の高電圧ケーブル数が減るため、安全性の向上にもつながります。

さて、第4世代8HPでは、どれくらいの低燃費化が見込めるのでしょうか。下の図は、2Lガソリンエンジン(190kW/400Nm)を搭載した車重1,689kgのクルマを想定し、WLTPモードでCO2排出量をシミュレーションしたものです。

第3世代8HP+BSGと第4世代8HP+BSGを比べると、その差は1g/kmとなっています。「それだけ?」と思われるかもしれませんが、そもそも第3世代8HP自体がかなり高性能なものなので、トランスミッションの進化分だけでマイナス1g/kmを達成するのも大変なのです。

そして、マイルドハイブリッド仕様(P2仕様)では、第3世代8HP単体(BSGなし)に対して最大15g/kmのCO2削減を実現。さらにプラグインハイブリッド仕様では、長距離のEV走行が可能なため、具体的な数字は明かされなかったものの、CO2削減量は相当なものとなることが推測されます。

この第4世代8HPは、2022年からZFの乗用車向けATの主力生産工場であるドイツ・ザールブルッケンで量産が開始されます。すでにBMWとFCA(フィアット・クライスラー・オート)が採用を決めており、特にBMWとの契約は、単独のビジネスとしてはZF最大規模の取り引きとなるものだとか。

電動化を前提として大幅な効率化が図られた第4世代8HPですが、我々クルマ好きにとっては、運転して楽しいかどうか、というのも重要な要素。その点も、第3世代からどのような進化を遂げているのか。今回の発表ではそうした点には触れられなかったので、2022年以降、自分で運転して確かめられる日が来るのを楽しみに待ちたいと思います。

(長野達郎)

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