新型オービスの将来を占う超重要裁判!45キロ超過のスピード違反取り締まり、その測定値は正しかったのか!?

コラム Clicccar

 ご報告が遅くなって申し訳ない。
 2020年2月13日(木)10時〜10時30分、本邦初の超重要裁判の判決期日がさいたま地裁であった。

さいたま地裁。一般来庁者は正面に見えるB棟からのみ入れる。入ってすぐ手荷物のX線検査を受け、金属探知ゲートをくぐる。拒否する者は庁舎に入れない。

 どれほど超重要か。まずはご説明しよう。
 表立っては2013年から警察庁は「新たな速度違反自動取締装置」の導入へ動きだした。確かに「新たな」であり、私は「新型オービス」と呼んでいる。ネットでは、新型オービスのうち固定式も含めてなぜか「移動式オービス」「移動オービス」と呼ばれる。
 新型オービスは、単に新しいオービスが登場したというだけではない。そのへん、関連記事「新型オービスの背後にある警察の野望。スピード違反の取り締まりが民間委託されるのか!」をご参照いただければ。

 新型オービスは、日本のオービスの老舗、東京航空計器(以下、TKK)と、日本には初上陸、世界展開の企業であるSensys Gatso Group(本社はスウェーデン。以下、センシス)が競合する形になっている。
 さいたま地裁の裁判は、センシスの新型オービスのうち固定式(※)により時速105キロ(45キロ超過)と測定・撮影された若い男性が、測定値を否認する事件なのである!

Sensys Gatso Group(本社はスウェーデン)の固定式オービス。私が警察から開示を受けた大量の文書によれば、商品名はSWSS(Speed Warning Safety System)。型式はNK1005だ。縦長の筐体にフラッシュ、レーダー測定機、カメラが内蔵されている。(写真提供:オービスマニア)

 センシスのオービスの測定方法は、固定式も可搬式も「トラッキングレーダー式」だ。聞いたことがない。いったい何なのか。
 この裁判の証人尋問で詳細がわかった! 本邦初の裁判であり、今後の全国の同種裁判のリーディングケースとなるため、検察官(若くて穏やかそうだが有能な男性)が、4人もの証人を申請し、異例の長時間をかけて尋問したのだ。
 たかが45キロ超過のスピード違反裁判なのに、合議(裁判官3人で審理)になった。これも異例だ。

 センシスのトラッキングレーダー式は、接近してくる車両を0.047秒間隔で測定し続ける。同時に、次の0.047秒後の位置を予想し続ける。予想位置が10回中6回以上一致すればその車両にID番号を付す。
 ID番号の付いた車両が撮影ポイントへきたとき、取り締まりのための測定をする。さらに、車両が電波の照射範囲にいるうちは測定と予測を続けて万全を期す。

 特に私が仰天したのは、ID番号を付けた違反車両を追跡した課程をすべて記録し、グラフにして警察に提出するという点だ!
 日本の従来のオービスは、写真に焼き付けられた測定値があるのみ。装置の何がどう働いてその測定値になったのか、裏付けは一切ない。ところがセンシスのオービスは裏付け(トラッキングデータ)を提出できるのである。
 こりゃかなわん。日本の従来のオービスはガラパゴスだ! そう思わざるを得ない。日本人としてちょっと悲しかった。というか恥ずかしかった。

 2019年11日21日に結審。求刑は罰金9万円だった。
 これほど超重要な裁判なのに、たかが罰金9万円? しょぼっ。そう感じる方もおいでだろう。
 だが、速度違反の量刑は超過速度や車種や、高速道路か一般道路かといった外形的な要素で決まる。
 オービス裁判だけで200件ほど傍聴してきた私からすれば、相場的には8万円のはず。9万円は重い。「検察官、ふっかけたな」と感じた。

 そうして2020年2月13日、初公判から1年半ほどかかったその超重要裁判の、ついに判決言い渡しの日がきたのである。
 傍聴席には主に黒スーツの男性が10数人いた。警察と検察、センシスの社員たちだろう。TKKの社員もいたかもしれない。
 その男性たちおよび被告人がどう考えたかわからないが、私からすれば、判決は有罪以外にあり得ない。
 従来の国産オービスの裁判は、写真に焼き付けられた測定値しかなく、かつ、いわば「焼き付け値」は定期点検でノーチェック。「ウソでしょ?」と思うかもしれないが本当だ。メーカー社員が「プラス誤差は出しません」と、せいぜい1時間程度の証言をすれば有罪なのだ。そんな裁判を私は長年にわたりたくさん傍聴してきた。
 ところがセンシスのオービスにはトラッキングデータがある。今後のリーディングケースになるため検察官は2万%の完璧立証をやった。有罪以外にあり得ないではないか。罰金9万円か8万円で間違いない。

 被告人を証言台のところに立たせ、裁判長が判決を言い渡した。

「主文。被告人を罰金9万円に処する。その罰金を完納できないときは金5千円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」

 判決理由は非常に簡潔。従来の日本のオービス裁判の紋切り型と同じ、テンプレート判決だった。トラッキングデータのことはスルー。10分間で閉廷となった。
 気合いを入れて2万%の完璧立証をやった検察官は内心、カクッとずっこけたのではないか。
 けれど、もしもトラッキングデータに触れたら、従来の国産オービスの裁判で有罪を書きにくくなる。格好がつかない。そんな政治的判断もあったのでしょうよと、私は検察官を慰めてあげたい。

 とにかく、日本へ初上陸したセンシスのオービスは、さいたま地裁のこの裁判で優秀性と信頼性の高さを立証された。司法のお墨付きを得た。
 今後、測定値を否認する運転者が現れても、従来の国産オービス以上にさくっと有罪にできる。撮影する写真はカラーなので「映っているのは俺じゃない」という否認も通りにくいだろう。全国の警察は自信をもって、安心してセンシスのオービスを使える。

埼玉県北本市内の国道17号線、歩道に設置されたセンシスの固定式。制限速度は60キロだ。(写真提供:オービスマニア)

 さあ、こうなると、TKKの新型オービス(スキャンレーザー式)はどうなんだ! である。
 警察庁はあからさまに「TKK推し」のようで、センシスよりTKKの新型オービスのほうがずっと多く購入されている。測定値を否認する運転者がけっこういるはずだ。
 20年以上もオービス裁判に注目し傍聴し続けてきた私としては、TKKの新型オービスの否認裁判をなんとしても傍聴したい!
 どうか情報をお寄せください。裁判所が遠方でも行きますので!

(今井亮一)

今井亮一【いまい・りょういち】
交通違反・取り締まりを取材、研究し続けて約40年、行政文書の開示請求に熱中して約20年。裁判傍聴マニアになって17年目。『なんでこれが交通違反なの!』(草思社)など著書多数。雑誌やテレビ等々での肩書きは「交通ジャーナリスト」。2020年の目標は東京航空計器の新型オービス(レーザー式)の裁判を傍聴すること!

【関連記事】
クルコンとオービス、どっちが正しい! 新型オービス初の裁判は前代未聞の体制に【新型オービス否認裁判・前編】
https://clicccar.com/2019/11/12/929353/

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