チャンスは一生に一度!アジアクロスカントリーラリー2020に挑むメカニックの卵たちの想いとは?

コラム Clicccar

日本全国梅雨入りし、夏はもうすぐ!という季節がやってきました。

しかしながら世界的に見ると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束のゴールはまだ見えず、わが国でも高校野球をはじめ、多くの競技が開催中止に追い込まれているのはご存知の通りです。もちろんモータースポーツも例外ではなく、多くの大会が延期、もしくは中止という状況になっています。

8月にタイ〜マレーシアで開催が予定されていた「アジアクロスカントリーラリー2020」(以下 AXCR)もその例に漏れず、10月末以降への延期が発表されています。
今回は、まだ今年の開催時期が決まっていないAXCRへの参戦に向けたマシンを製作している自動車整備の専門学校、中央自動車大学校のお話です。

D1GPのチャンピオンドライバー川畑真人選手も参戦した2019年

アジアクロスカントリーラリーとは、山岳部やジャングルなど、アジアの特徴ある地形、路面状況、自然の中で毎年8月に行われているラリーレイドです。WRCのような、あらかじめコースの下見をし、綿密なペースノートを作ってタイムアタックを行うラリーとは違い、開催期間中毎日、走行前日に渡されるロードマップを頼りにゴールを目指す冒険的要素も強いものです。

走行前日の夜に渡されるルートマップ

AXCRの開催地域はタイ、マレーシア、シンガポール、中国、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーと広範囲にわたり、2020年大会はタイをスタートし、マレーシアを目指す総距離2000km、ラリー後半にはセパンインターナショナルサーキットのコースも組み込まれるなどバラエティに富んだ7日間のステージが予定されています。

2020年に予定されているルート

また、AXCRはアジア最大のFIA公認クロスカントリーラリーですが、F1やWRCなどの世界選手権やダカールラリーのようなハードルの高さもないため、日本からのプライベーターの参加が多いのも特徴です。元F1ドライバーの片山右京、元WGPライダー青木拓磨、元PWRCチャンピオン新井敏弘ら世界的な選手から、スーパーGTやジムカーナといった国内競技のチャンピオン経験者など、ジャンルの違うドライバーも数多く参戦しています。

篠塚建次郎選手(2016/2017年)

中央自動車大学校は、千葉県にある高等課程・専門課程を含めて300人程度と、比較的小規模な自動車整備の専門学校です。中でも最もハードルの高い1級整備士を目指す4年制のコースは現在18名。この18名が、東南アジアの過酷なクロスカントリーラリーを走りきる強靭なマシンの製作を担当します。

マシンの製作(2019年)

この作業は、まず前年に出場したラリー車を完全に分解することから始まります。過酷な東南アジアのラフロードを全開で走りきったクルマの傷みは、舗装率の高い国内で乗られたものとは次元が違います。各部が固着してしまったり、変形していたりと、マシン製作前の準備段階からそのハードルは高く、分解だけでも大変な作業です。学校で用意した実習車からでは得られない発見も少なくないようです。そのような作業は整備士の卵にとって素晴らしい経験なのです。

川渡りなど水に浸かるコースでは土などがマシンの細部にまで入り込んでしまうのだ(2019年)

でも、それは学校が考える理由のひとつにすぎません。実はもっと大きな理由があるそうです。

意外と言っては失礼かもしれませんが、アジアクロスカントリーラリーという非日常生活に身を置きながら、在学中に社会との接点を持つという経験をすることこそが最大の目的だそうです。

担当の先生いわく、学生時代に様々なジャンルのチーム関係者や他チームとの交流など、外との接点を持ち続けながら高いハードルを越える経験というのは、社会に出た時に実はとても大きな力になるそうです。マシン製作によって得るものは技術だけではなかったのです。

このプログラムは、より良い整備士へのステップであると同時に、仮に卒業後に整備士以外のどんな道を選んでも、生き生きと進んでいける高い人間的な力を備えるための大切なステップだったのです。

マシンの製作(2013年)

この取り組みは、かつて日本で開催されていたWRCラリージャパンにオフィシャルとして参加するなど様々な形で行われてきましたが、2013年からは「CTSステップアッププログラム」と名付けられ、AXCRを舞台に続けられています。学校の教育方針とAXCR側の車に携わる若い世代に対する考え方が、このプログラムを生み出したと言えるでしょう。

前述のようにこのプログラムでは、マシン製作は1級整備士を目指す4年制コースの学生が担当しますが、その中から毎年4〜6名がメカニックとして現地でチームに帯同します。その選考においては本人の希望、成績、適正等が総合的に考慮されるそうですが、なにより優先されるのは現地に行ってメカニックとしてしっかりと活躍したいという「やる気」だそうです。

参戦マシンと製作した4年生全員で記念撮影(2019年 お台場MEGAWEBでの参戦発表会)

技術と意欲が認められて選抜された学生メカニックは、ラリー期間中、競技車と同じように国境をまたぎ、2000kmの旅をしながら整備を続けます。現地に来られなかった仲間とともに作り上げたマシンが無事にゴールまでたどり着けるよう、毎日整備する事はとてもプレッシャーを感じる作業でもあると、このプログラムを経験した先輩は語ります。それは、ともに厳しい練習に耐えながらもレギュラーになれなかったチームメイトの想いも背負いながら試合に臨むスポーツ選手のようなものかもしれません。

現地での整備風景。設備のない場所で行われる毎晩の作業は実はとても過酷です(2017年)

さて、そんな想いで臨む学生たちのアジアクロスカントリーラリーですが、冒頭に述べたように今年2020年は新型コロナウイルス感染症に翻弄され、スケジュールが未定のままです。現時点では10月末以降への延期とだけアナウンスされていますが、まだまだウイルスの状況は予断を許しません。また、開催時期が決まったところで年明けに大切な1級整備士の試験をひかえる彼らが延期されたスケジュールに対応できるのか、こちらも不透明ではあります。

マシン製作やラリーへの帯同は、技術を十分に学んだ4年生だけに向けられたプログラムです。つまり4年間の学生生活でチャンスは1回。世間では春夏の甲子園大会の中止をうけて様々な意見や、救済プランが多くのメディアでも取り上げられていましたが、新型コロナウイルスの猛威は高校野球を筆頭とした学生メジャースポーツやプロスポーツだけの問題ではない事は言うまでもありません。頑張っている全ての人に立ちはだかっているのです。

彼らの作ったマシンが東南アジアの大地を疾走して欲しいのはもちろん、開催時期が変わっても4年生みんなが先輩方と同じような経験をできることを今は願うばかりです。

苦労して仲間と作り上げたマシンの完走を喜ぶ学生。この年のドライバーはタレントのヒロミさん(2014年)

次回は、今までの先輩方の活躍を振り返りながら、このような状況の中で今年のマシンを製作している現役の学生の模様をお伝えします。

(高橋 学)

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