【ホンダ F1】アロンソ語る…「マクラーレン・ホンダへの移籍は、正しい決断だった」
10日、ホンダ本社での会見に臨んだフェルナンド・アロンソは、新生マクラーレン・ホンダへの移籍に関して「ライト・デシジョン(正しい決断)だった」と話すなど、あらためて新たな挑戦への意欲と意義について語った。
2月1〜4日にスペインのヘレスで開催された今季最初のF1合同テストでは、他チームのようには走行距離を重ねることができず、ベストタイムも(客観的には)大きく見劣りする状況に終始したマクラーレン・ホンダ。一方でアロンソの古巣フェラーリは、連日好タイムをマーク。
もちろん最初のテストでのタイムや順位がシーズンの行く末を象徴するとは限らないが、こうなると『アロンソの移籍は正解だったのか』という議論が起きてしまうところだ。だが、彼は「フェラーリに残ることも可能だったけれど、自分は新たなマクラーレン・ホンダ(というパッケージ)に、とても高い勝利の可能性を感じて移籍した。正しい決断だった」と、キッパリと話した。
F1界で実力ナンバー1の評価を受けるようになって久しいアロンソが、マクラーレン・ホンダに大きな可能性を感じていることは日本のF1ファン(ホンダファン)にとって実に心強いところ。ただ、フェラーリには2010年から所属し、タイトル獲得こそならなかったが「5年間で3回、シリーズ2位になった」わけで、そこを飛び出してまでマクラーレン・ホンダ入りした背景には、マクラーレン(07年に所属経験あり)とホンダ(初の共闘)のパッケージが技術的に強力であるとの分析とは別次元の想いもあったようだ。
現在33歳のアロンソ本人が直接は覚えていない幼少時のことだと言うが、「父が僕のために作ってくれたゴーカートは“マクラーレン・ホンダ”だったんだ」。もちろんレプリカ仕様の、という意味だが、1988〜92年にF1最強を誇る存在だった“先代マクラーレン・ホンダ”はアロンソ一家の夢であり、当時の主力選手だった故アイルトン・セナは「僕のアイドル」であったのだ。
「父と家族にとっての夢が、レプリカではなく本物のF1マシンで実現するんだ。これはまさに、ホンダのキャッチフレーズである『The Power of Dreams』の具現化じゃないかと思うくらいだよ」
「(ルノー時代の05&06年に続く)3度目のタイトルを、必ずここで獲得したい」ともアロンソは語る。ホンダの国内の研究開発施設を見るなどしてきたことが彼にタイトル獲得を確信させるところもあったようで、ホンダ、ひいては日本についての好印象も語った。
「もともと僕は日本が好きだ。ホンダのエンジニアたちと一緒に仕事をするようになってからは、『日本にはこういう文化があるんだ』とか『こういうやり方もするんだ』というさらなる新発見もしている。日本の人たちは、とにかく自分の仕事に最大限のコミットメントと情熱をもって取り組むよね。技術レベルはもちろん高いし、本当のプロという感じがする」。まるでアロンソ自身のことを言っているようでもあり、それこそがホンダにシンパシーを感じるところで、移籍の決断を正しいと思える所以なのだろう。
ホンダの創始者である故・本田宗一郎に関する質問にも、「モータースポーツの歴史を変えたと言ってもいい人物で、世界にもほんの少ししかいない偉人のひとり。そういうミスター・ホンダ(と過去のF1参戦)の歴史を受け継いでいることが、今もホンダを魅力的で情熱あふれるホンダにしているんだと思う」という熱いコメントでアロンソで答えた。
ちなみに古巣であるフェラーリはイタリアの名門として知られるが、やはり“お国柄”というのはあるようで、「高いポテンシャルをもったチームだけど、(日本と比べると)一貫性というような面では及ばないところがある」とも。どちらも優れてはいるがタイプの違いがある、という意味で、しばらくタイトルに手が届かない状況が続いていたアロンソとしては、新しい環境で心機一新をはかる気持ちも移籍を後押ししたと考えられる。
バトンとのベテラン王者タッグ結成については、「我々にはふたり併せておよそ500戦のキャリアがある。F1を熟知した者同士の、いいコンビだ。彼がチームメイトでとてもハッピーさ」と、早期熟成が必要なマクラーレン・ホンダには自分たちがベストコンビであるとの旨を語るアロンソ。彼はマクラーレン・ホンダでの自身のタイトル獲得を確信している、しかしそれが「簡単ではない」ことと、現行ルール下での他社製パワーユニットが2年目であるのに対して今年が初年度のホンダが追う立場であることも分かっているからこそ、「いつ勝てるか、それは(今はまだ)分からない」とも言う。
だが「チームともホンダとも、とてもオープンかつ緊密に仕事を進めることができている」ことこそが最大の武器だろう。次回テスト(2月後半、スペイン・バルセロナ)での熟成進化、そして開幕戦オーストラリアGP(3月15日決勝、メルボルン)では目下の下馬評を覆すほどの好パフォーマンスを期待したい。そして「移籍の決断は正しかった」ことを成績面でも自他ともに認められる日の到来を、一日も早く実現してほしいものである。
- 遠藤俊幸