【スーパーフォーミュラ】今季初テストを終えた小林可夢偉…「つかめてきている」
2015年シーズンは全日本選手権スーパーフォーミュラ(SF)に初参戦する小林可夢偉(28歳)が、鈴鹿での今季最初の公式テストを終え、チームメイトの平川亮とともに会見に臨んだ。手応えは「ちょっとずつ、つかめてきている」ようだ。
やはりF1表彰台経験者の参戦はSFに例年以上の、それも予想より大きな反響をもたらしている。平日のテストだというのに、可夢偉目的のファンが多数、パドックに来場。彼の今季の所属先であるチームルマンのベテランスタッフがマスコミを含めての対応に懸命の努力をしているほどで、影響力の大きさが窺える状況となっている。そしてテストでは異例のサイン会実施に加え、10日のテスト全日程終了後には、これも異例の会見がセットされた。
「去年の12月にも岡山でSFをテストしましたが、岡山には高速コーナーがほとんどないので、そこのところをジャッジする意味でも今回の鈴鹿テストは重要でした。ただ、天気があまり良くなかったですよね。まあ、最終的に2日目の午後、しっかり(ドライで)走れたのは良かったと思います。
このクルマの特性に合わせた走り方をつくっていかなければならないのは確かですし、それはセッティングに関しても当然そうなんですけど、自分のフィーリングで(セッティングを)こうしていったらいいんじゃないか、と思ったことに対してクルマが反応してくれているので、今のところ大きな問題はないのかな、と思っています」
鈴鹿はもちろん昨年もF1で走っているコースだが、「僕の乗っていたクルマ(F1)は遅かったんで」と前置きした上で、「SFはコーナーが速いですし、エンジンパワーではF1に及ばないところもありますけど、ブリヂストンのタイヤにはいいグリップが長くもつところがある。その点で、この鈴鹿を常に予選の感じで走っているようなレースがイメージできて面白いですね。楽しいクルマだと思います」との比較論を披露した。
今季は残念ながらF1のレースシート獲得ならず、SFに転身した可夢偉。だが、単なる腰掛けのつもりなどない。「1年間このレースをしっかりやって、僕の魅力(だけ)ではなくて、モータースポーツの魅力をもっと伝えていきたい。SFにはもっと盛り上がっていいと思える魅力がもともとあるし、そのために僕ができることもあると思うので」。小林可夢偉が出ているという「プレミアム感のようなものを出せれば」ということで、「他のカテゴリーの誘いは(現状)全部断って」、今季の可夢偉は様々な意味でSFにかけている。
今回の鈴鹿テストでは2日目の午後のセッションにおいて、中古タイヤを履いて出したタイムでしばらくトップをキープする場面も。中古タイヤでの今回の全体ベストタイムかもしれない好タイムだったが、最後の2周ユーズドタイヤでのアタックが他車の出した赤旗で中断されたことも含め、「昼から変えたセットの方が良かったとは思うんですけど、テストなのでタイムはあまり気にしていません。セットを変えていって、クルマがどう反応するか、ということの方が大事ですから」と冷静な自己分析と目的意識を語る。
そしてその目的も着々と進んでいるようだ。「自分のなかではちょっとずつ、つかめてきていますし、改善点もいっぱい見つかっています。このクルマ(ダラーラSF14・トヨタ)をしっかり理解してから、自分の運転をつくっていかないといけないな、という確認ができたことが今回の最大の収穫です。高速コーナーの動きや、僕の運転との相性を見るという意味で、いいテストだったと思います」。
次の岡山公式テスト(3月27〜28日)、さらには開幕戦鈴鹿(4月18〜19日)に向けて、さらに期待高まる可夢偉の周辺である。
そして可夢偉を僚友に迎えた、21歳にしてSF参戦3年目の気鋭、「目標はF1」と以前から公言している平川にとってもこれはいろいろな意味でチャンスだ。「可夢偉選手というF1の実績が長い選手とチームメイトになって戦えるわけですから、吸収できることはたくさんあると思います。楽しみです。でも、気持ちでは負けませんし、レースでも自分の実力を出して可夢偉選手の上にいられるようにすれば、いろいろと(F1に向けての状況も)変わるんじゃないか、とも思っています」。
今年は担当エンジニアが代わったという事情も含め、平川も今回の鈴鹿テストには「タイムより手応え」を特に重視して臨んだ旨を話し、「(2日目の)最後はトラブルが出て走れませんでしたけど、新しい発見もありましたし、いいデータも取れました。思い切ってコーナーに入っていける感じもありましたね」と好感触を語る。彼の飛躍にも期待大だ。
可夢偉&平川のKYGNUS SUNOCO Team LeMansは、今季のSFにおける最高注目度チーム。どちらが先にSF初優勝を果たすか、興味深いシーズンとなるだろう(平川のSF最高位は2位)。
- 遠藤俊幸