【バンコクモーターショー15】3輪ビークルの新しい可能性を探るコンセプト…ヤマハ03GEN-f
昨年、3輪スクーターの『トリシティ』が話題を呼んだヤマハ。この3輪レイアウト、LMW(リーニング・マルチホイール)構造の可能性をさらに拡大するべくデザインされたのが『03GEN-f』だ。
このコンセプトモデルは、プレスリリースによると「トリシティをベースにした」とのことだが、実際はやや異なる。「たしかにトリシティの車体やメカニズムを参考にしているため、パッケージレイアウトやホイールベースなどの数値はトリシティとほぼ同等です」と説明するのは、ヤマハデザイン本部・コーポレートデザイン部で先行デザイン開発を手がける田中総一郎グループリーダー。
「ですが、トリシティをベースにして作ったというのは事実ではありません。あくまでトリシティのサイズ等を参考にした、というだけのことです。これはトリシティの発展形を探る目的のものではなく、LMWの小型スポーツモデルを探るものなのです」とのことだ。
たしかに、昨年ヤマハが発表した『01GEN』と『02GEN』は、特定の商品の未来形を予告するコンセプトではなく、従来なかった新しい商品の可能性を探る提案だった。03GEN-fもまた、そうした目的でデザインされているのだ。このため想定排気量も設定されていない。
03GEN-fのテーマは「フューチャー・レーシング」。デザインを手がけたティーラティ・ティーラビットによれば、新しい感覚で「レーシング」のイメージを表現するものだという。「小型スクーターのサイズで、刺激的なスポーツ走行が楽しめる乗り物というアイデアです」。
LMWの特徴である安定性の高さや転倒しにくさを、安全マージンの大きさと解釈。コーナリング時に思い切りよく車体をバンクさせることが可能になり、いっそうスポーティな感覚が味わえるというわけだ。
近未来的なスタイリングは、LMWにおけるスポーティ表現を模索したもの。トリシティはふたつの前輪へ覆いかぶさるようにボディがあり、フロントまわりのボリュームが大きくなり、やや重量感がある。スポーツモデルでは重さを感じさせない、軽快感のあるシャープな造形とした。
そこで左右の前輪を独立した存在と捉えてそれぞれにフェンダーを与え、ホイールの内側にもスタイリッシュなカバーをあしらった。そして上のカウルもヘッドライトやサスペンションアームをカバーする最低限度のサイズにされている。
フロントまわりを大きな塊ではなく、小さくシャープな造形の集合体にすることで、軽快感やスピード感を演出している。またリアまわりはレースマシンのように跳ね上げられ、躍動感を表現。CVTケースやマフラーもボディと同じ調子の造形が与えられ、全体をスマートにまとめている。
「トリシティはあくまでコミューターですが、同じくらいの車格でスポーツモデルを作るとしたら、どんなデザインがあるのか?という研究です」と田中グループリーダー。「LMWというのはまだ新しい商材ですから、じっくり大切に育てていきたいですね」とのことだ。
なおプレスリリースではクロスオーバー感覚の『03GEN-x』についても記述されているが、こちらはバンコクショーには展示されていない。
- 古庄 速人