【日産 エクストレイル ハイブリッド 発表】日本市場にはハイブリッドの記号性が必要だった
5月13日から発売される、日産『エクストレイル ハイブリッド』について、商品企画本部、日本商品企画部、リージョナルプロダクトリーダーの藤井真氏にお話を伺った。
かつてはクリーンディーゼルをラインナップしたこともあるエクストレイル。今新たにハイブリッドを投入する背景は一体何だったのだろう。
「いわゆるエコパワートレーンに対する要望は、2013年レベルで31%、それが2014年の調査では44%にも上昇し、それはとりもなおさずハイブリッドを求めているのです。エコパワートレーンとしてディーゼルの要望というのは、日本市場に関する限りこれまでの調査ではごく僅かでした」と藤井さんは語る。さらに、現場サイド、即ち販売店からのフィードバックではハイブリッドがラインナップされていないと、検討対象にもならないという話が来るという。
「つまり、ハイブリッドという記号性がないと売りにならないというのが、今の日本市場の現状ともいえるのではないでしょうか」。これがハイブリッド投入の最大の要因である。ガソリン仕様の2リットル直4エンジンと1モーター2クラッチという組み合わせは、日本市場だと『フーガ』や『スカイライン』などと同じだ。しかし、それらはいずれも縦置きエンジンとトルコンATの組み合わせ。これに対してエクストレイルの場合は、横置きエンジンとCVTの組み合わせだ。ならばこのメカニズムは新たに開発されたのか。
藤井さんは「アメリカ市場で売っている『パスファインダー』やインフィニティ『QX60』にはこのレイアウトのハイブリッドが搭載されていて、細かい詰めは異なりますがレイアウトとしてはこれらと同じです。だから、ゼロから開発したというわけではありません」 と解説してくれた。
“SUVのハイブリッド”としての特徴について尋ねてみた。
「元々タフさを売り物にしてきたエクストレイルですから、そうした部分では拘りを持って作りました。だから、初めから後輪をモーターで回すいわゆる“e四駆”という考え方はなく、ちゃんとプロペラシャフトで後輪を駆動するメカ四駆という手法を採ったことではないでしょうか。実はこのジャンルでメカ四駆を採用しているハイブリッド車は稀少なんです」と話す。
そして、「単に燃費だけを追求するならば、より転がり抵抗の少ないタイヤを装着するなどして引き上げることもできたでしょうが、やはりSUVとしての走りは重要ですから、オールシーズンタイヤの装着も譲れない部分でした」と語る。
確かに、考えてみると後輪をメカ四駆で駆動するハイブリッドモデルとして思い当たるのは精々スバル『XVハイブリッド』あたりだけだろうか。というわけで本格派四駆でありながら、燃費に優しく依然としてタフな性格を持ち合わせているというのが、エクストレイルハイブリッドの特徴のようだ。
エンジンはMR20DDと名付けられた2リットル4気筒直噴エンジン。その型式から性能に至るまでガソリン仕様と全く同じだが、実は数値には表れないものの、ガソリン仕様とは細かく異なっているそうだ。藤井さんの説明によれば、「まず補器類を駆動するためのベルトがありません。このほか対ノッキング性能を引き上げ、オイルシールを低フリクションタイプのものに変更するなどの改良を図っています」ということだった。
さらにボディ側でも燃費を引き上げるための対策が打ってあった。
「エンジンのアンダーカバーを大型化し、併せてボディセンター部分の下面左右両側に、下面を整流するカバーを取り付けています。それにリアエンドのマフラー直後にも風の巻き込みを抑制するフラップを取り付けました。これらの結果、空力係数CD値は、0.35から0.33に上がっています」ということだ。アンダーカバーを取り付けたことによって、地上高は1センチ下がったものの、デパーチャーアングルやアプローチアングルは変わらず、SUVとしての機能性は損なわれていないという。
価格的には基準車+41万円というレベルに収まっていて、4WD仕様の20Xが301万1040円という設定だが、これは従来装備されなかったエマージェンシーブレーキパッケージを装備したものだから、ハイブリッドだけの価格上乗せはこれよりも少し低いということになる。
- 中村 孝仁