【アプリリア カポルノルド1200 トラベルパック 試乗】充実の電子制御、ロングツーリングに出かけたくなる…青木タカオ
パッと見の印象では大柄に感じた車体も、跨ってみると見た目よりもコンパクト。クッション厚のしっかりあるシートも座り心地が良く、高めのウインドシールドの装備といい、ライダーとパッセンジャーが長時間にわたって快適なライディングを楽しめるよう配慮されている。
1197ccの水冷DOHC4バルブ90度Vツインは、フラットに力強いトルクが出て扱いやすい。低回転から粘り強く、高回転も気持ちよく伸びていく。パワーバンドが広く、神経質なところのない、どこからでもアクセルが開けていけるエンジンだ。
電子制御も充実している。「aDD」(アプリリア・ダイナミック・ダンピング)セミアクティブサスペンションは、路面状況やライダーの操作情報(スロットルの開閉、ライディングポジション、ブレーキキング)を感知して、フロントフォークとリアのダンピング設定を瞬時に自動調整する。
4段階の電子制御プリロード(ライダーのみ、ライダー+パッセンジャー、ライダー +サイドバッグ、ライダー+パッセンジャー+サイドバッグ)に加え、自動調整モードも備えていて、リアの高さを常時検知して最適な車高値に補正し続けてくれる優れものだ。
「aTC」(アプリリア・トラクション・コントロール)は、あらゆる路面状況においても最大限のグリップを得るためのもので、レベル設定は3段階。スポーツライディングに向く「Level 1」だと足まわりがビシッとし、もっとも路面のミューが低い時に向いている「Level 3」だと、サスの動きが穏やかになって乗り心地を優先してくれる。
雨の日に「Level 3」を選び、スリッピーな路面でわざとアクセルを雑に開けてみたが、横滑りはおろか車体の姿勢が崩れることもなく平然と走り続けた。ツアラーとしては、じつに頼もしい装備だ。
「SPORT」「TOURING」「RAIN」、3つのエンジンマップが選べる「ライド・バイ・ワイヤ・システム」は、スロットルレスポンスが変わるものだが、「SPORT」を選んでもピックアップが唐突すぎるほどシャープになるわけではなく、扱いやすさはそのまま。中高回転で「TOURING」よりもパワーが盛り上がり、そのフィーリングは痛快なもの。
このバイクの味わい深さというか真価は、もっと長い時間、長い距離を走って見えてくるだろう。クルーズコントロール、24リットルの大容量フューエルタンク、29リットル容量のパニアケースなどの装備を満喫するべく、ロングツーリングに出かけたくなる。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★★
タンデム:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。
- 青木タカオ