【SAS FORUM 15】ビッグデータ・アナリティクスに期待される4領域
4月17日、グランドハイアット東京にてSAS FORUM JAPAN2015が開催。日本電気、ビッグデータ戦略本部孝忠大輔氏により「データサイエンティストが語るビッグデータによる価値創出」と題した講演が行われた。《撮影 北原梨津子》
4月17日、グランドハイアット東京にてSAS FORUM JAPAN2015が開催。日本電気、ビッグデータ戦略本部孝忠大輔氏により「データサイエンティストが語るビッグデータによる価値創出」と題した講演が行われた。
SAS TechNewsの“SAS Partner Network”でも執筆を担当しているという孝中氏。2003年日本電気入社後、DWH/BIシステム(経営情報をもとに経営の意思決定を促進するシステム)の構築を経験し、流通・サービス業を中心にデータサイエンティストとして分析業務を実践しているという。
◆来る2050年 資源不足への対応にはICT活用が要か
「現在から2050年にかけて都市人口は35億人から63億人へ、水需要は1.6倍、食糧需要1.7倍、エネルギー需要1.8倍、温室効果ガス1.5倍となることが予測されている。世界人口の増加により高まる資源需要と、地球への負担を鑑みると現在の生活スタイルを続けるには地球2個分の資源が必要と言われる」(孝中氏)。
そして資源不足を解決するための重要な策のひとつとしてICTの活用を挙げる。ICT利用により社会インフラの高度化を図ることができる、そしてこの際に価値を創造するカギのひとつとなるのがビッグデータの活用という。
◆NECが提唱する“三位一体のビッグデータ活用”
NECビッグデータ戦略本部によれば、2012年から2020年にかけてセンシングによって取得されるデータは15.5倍へと増えることが予測されている。データを採取する「センシング」、データを“情報”に変える「アナリティクス」、さらに情報をビジネス目標にそった価値に変換する「アクチュエーション」、この3つのプロセスがそれぞれ欠かさずに行われる、“三位一体のビッグデータ活用”を孝忠氏はNECの取り組みとして提唱する。
この3つのプロセスそれぞれの役割を、わかりやすいイメージで説明するとどうなるか。気象を例に説明すると、センシングが天気図、アナリティクスが台風進路予測、アクチュエーションが避難勧告。交通を例に説明すると、センシングが渋滞状況の表示、アナリティクスが渋滞の予想、アクチュエーションが渋滞回避のためのルート推薦や信号制御にあたるという。
◆ワイパーから降雨状況、スマートフォンから渋滞状況を把握
センシングのプロセスでは「現在様々に技術が発展しているため多種多様なセンサーデータを集めることで新たな価値創造が可能となっている」と孝忠氏。センサーの例としてコネクティッドカー、スマートフォン、室温センサー、ウェアラブルセンサーなどを挙げた。
センサー技術の拡大にともない、センシングによって分かることも拡大する。人、顔のセンシングにより個人認証や感情、意図、ヘルスケア情報がわかるようになる。また社会、施設に対するセンシングではインフラ劣化や災害、防災や犯罪に関わる情報が得られる。自然・環境にかかる情報では資源探索や地震、津波、環境汚染に関わる情報など。センシング技術の拡大により、さらに大規模で深い考察が可能となるという。
「例えばワイパーの動作情報を集めることで降雨状況を詳細に見える化できる、スマートフォンの位置と移動速度の情報を集めることで混雑・渋滞状況を取得することも可能になる」(孝忠氏)
また現在進んでいる、映像解析技術の発展についても言及。従来は映像処理が困難であった、暗闇、霧、もや等の悪条件下においても観察対象をクリアに視認する技術が発達し、天候、時間、季節にかかわらずに認識処理をすることが可能となったという。
また観察対象はヒトの顔のみならずヒトの集まり(群衆)へ。群衆に関する3つの特徴「混雑度・密度」「移動方向・体向き」「定常性」を定量化し、通常時からのずれにより異常性を判定する解析もおこなえるようになった、と説明された。「最近は“迷子を捜す”という試みもしました。群衆の中から違った動きをしている人を認知して見つけ出すことでこういったことも可能」になっている(孝忠氏)。
◆ビッグデータに期待される4つのこと
続いてアナリティクスのプロセスについて。孝忠氏は、現在アナリティクスに顧客が期待していること(約800件の商談の類型化結果)は、4つの領域に集約されると指摘する。
1つ目はオペレーションの高度化や最適化(29%)。プラントなどの大規模施設異常の予兆監視や保全、自動車など輸送機器の品質の向上、社会インフラの安全管理の高度化に活かされる。
2つ目は製品・サービスの価値向上・改善(24%)。商品の需要予測による生産・発注の最適化。電力需要予測によるビルや都市のスマート化。適正価格予測による利益拡大などに活かされるという。
3つ目は情報管理の強化、犯罪・不正の検知(21%)。企業内の要管理情報の検出による情報ガバナンス強化、金融取引の不正検知、治安維持・監視の強化など。
そして4つ目は顧客獲得、維持、販売促進(23%)。商材・サービスのマッチングによる販売促進、ポイント・クーポンの効果分析による顧客獲得、カメラ画像を使用した動線分析によるマーケティング強化に活用される領域だという。
- 北原 梨津子