自工会池会長が批判、高校教育の3ない運動は「思考停止」
日本自動車工業会の池史彦会長は23日午前中の定例会見で、高校教育で行われている二輪車の「3ない運動」について、「思考停止している」と批判した。記者の質問に答えた。
70年代後半に始まった二輪車の3ない運動は、1982年(昭和57年)に高等学校PTA連合会(高P連)が宣言文を支持。全国的に広がりを見せた。免許をとらせない、買わない、乗らないの3つが柱になっていて、教育現場での生徒指導のあり方として定着した。このことについて、池氏は当時の運動に理解を示した。
「思い起こせば、3ない運動が起きた頃は、ある種メーカーが仕掛けたこともあるが、二輪車のブームで360万台が道路にはびこって、若い人たちがどんどん乗った。そんな中で暴走族というネガティブな人たちがでてきたことで悪いイメージが植えつけられた。それをなんとかしようという教育や親御さんたちの時代背景はわからないことはない」
その後約30年続いた運動は、07年の埼玉大会を最後に高P連が指示を取りやめた。免許の規制より乗って教える交通安全教育が必要だという意見が出てきたためだ。しかし、各地の教育委員会や学校校長会はいまだに運動の転換を明確にしないため、学校現場では交通安全教育よりが3ない運動の生徒指導が優先しているのが現状だ。
「地方の過疎化が進んで公共交通手段がない。そういう地方の親御さんの切実な悩みは、通学がしきれないので親が送迎をするとか、交通の便利のいい私立に入学させなければならないということ。それで最近では通学困難者への免許を認める傾向にある。そのかわりきちんと教育をする」
「そういう所では、学校の教育もきちっとしているし、警察の協力も行き届いている。自工会や二輪車普及安全協会も協力している。バイクに乗る高校生がどこの高校か、車両に掲げて通学しているので、とてもマナーよく運転している。(3ない運動をやめると)目見えて事故が減るし、(そういう所では)交通事故はは間違いなく減っている」
また、3ない運動を続けているある県について、名指しすらさけたもののこう批判した。
「高校生の入学説明会で、高校生にバイクは不要というビラを配る県がある。そういう県の主張は、高校生の事故はないということだけだが、(在学中の)3年間の事故が減っているというだけで、高校生が自転車に乗るとき、(社会人になって)自動車に乗るときはどうだということは思考停止している。ものすごい危機感はある」
さらに、こうした3ない運動で定着したイメージの払拭が課題であるとも、池氏は語った。
「安全教育やマナーの向上で二輪車の事故は減少傾向にある。二輪に携わるすべての人間が危機感を持っているのは、二輪は危ない、うるさい、迷惑だというネガティブなイメージをどう払拭するのかということ」
来月19日のバイクの日、自工会は、そのイメージ向上のために東京・秋葉原で「バイクの日スマイル・オン」イベントを開催する。
- 中島みなみ