「プロダクトデザインには『驚き』が必要」BMWデザイナー 永島譲二 名古屋芸術大学
現在、クリエイティブディレクターとしてBMW各車のエクステリアを手がける永島譲二氏による「デザイントーク」が11月10日、名古屋芸術大学で開催された。
これは2018年度に永島氏が同校の特別客員教授に着任したことを記念し、現在開催中の永島氏のイラスト展「ヨーロッパ自動車人生活」に合わせておこなわれたもの。イラストは『カーグラフィック』誌の連載で使われたものに加え、描き下ろし作品も含まれている。
同校の芸術学部デザイン領域にはカーデザインコースがあり、トークはおもに学生に向けてデザインやブランドの価値を説くもの。しかし学生のほか、自動車メーカーやサプライヤーをはじめとする企業関係者やデザイナーも聴衆として多数参加していた。
トークはまず「海外で日本製品は高い品質や信頼性によって買われているが、退屈という評価が多い」ということを紹介。これは「どれも横並びの見た目でブランド不明、存在感が薄いせいではないか?」と永島氏。
またデザインとは、市場の要求を満たすだけのものではないと続けた。市場の要求に100%応えるだけではダメ、とのこと。「クリエイティビティ、インスピレーションそれにパッションといったものは市場にはない。デザイナーが加えなければならず、これで120%のものを作り出さなければいけない」という。このプラス20%の部分は、顧客から求められていない「驚き」や、理屈で説明できないものだとする。
さらに、高いオリジナリティを備えた製品は、マーケティングの結果で生み出されたものではない、とも説く。独創的で新しい市場を開拓し、後に他社から追随製品が出てきたようなかつての製品は「買う人がプロダクトを選んだのではなく、プロダクトが買う人を選んでいた」と永島氏。これによって「存在感があって所有する満足感が得られ、リスペクトされる特別なプロダクト」が生まれたのではないか、とのこと。
このほか、日本企業や日本人に対する厳しい指摘もあった。BMWには世界中から多数のデザイン学生のポートフォリオが送られてくるが、日本の学生からの応募は見たことがないという。全体的にシニカルな内容も多く含んだトークだったが、日本に暮らす日本人では気づきにくい部分を鋭く突くものだった。
なおイラスト展「ヨーロッパ自動車人生活」は11月13日まで開催。開場は同校西キャンパスのアート&デザインセンター。学生以外も自由に観覧することができる。
- 古庄 速人