【SUPER GT】GT500王者コンビ 山本尚貴とジェンソン・バトンが語る今季と近況、そして今後

モータースポーツ レスポンス

SUPER GT/GT500クラスでホンダ勢8年ぶりとなるチャンピオン獲得を果たした山本尚貴とジェンソン・バトン。チーム国光で2018年シーズンを戦ったふたりが激闘を振り返りつつ、その近況と“今後”について語った。

2009年F1チャンピオンのジェンソン・バトンは今季、SUPER GTへの自身初のフル参戦を、F1時代から縁深いホンダの協力のもとに実現した。往年の名手“クニサン”こと高橋国光総監督が率いるチーム国光に加入し、コンビを組んでNSX-GTを駆るドライバーはホンダ国内戦線のエースである山本尚貴。実に豪華な体制となった。

だが、それで即タイトル確実、というほどGT500は甘いフィールドではない。バトンもそれはもちろん承知していた。今や世界でも珍しいタイヤ戦争があるカテゴリーゆえのタイヤの扱いの難しさ、そしてそのタイヤにはF1のようなウォーマーは使えない規則なので、冷えた状態から走り始めねばならないこと、さらには速さの違うGT300クラスのトラフィックを縫っていく術も身につけなければならない。

「全部、難しかったよ(笑)」とバトン。「学ぶことはたくさんあったし、(チャンピオンを決めた)最終戦までいろいろ学んだ。でも、僕は素晴らしいチームで走れたし、GT500のベテランであるナオキ(山本尚貴)がいてくれたからね。大変なシーズンではあったけど、とても楽しいシーズンだった」。さらにバトンはこう言う。「新しいことにチャレンジして、『やっぱりレースって楽しい』と思ったよ」。

勤続疲労とでも言おうか、近代F1には少し辟易していた面もあったと思えるバトン。SUPER GTという新たなフィールドへの挑戦には、リフレッシュ効果もあったのかもしれない。そして、世界の頂点を極め、38歳になった今でも学ぶ喜びを得られるところが、彼の才能のひとつだろう。

来季2019年についての活動は未定だが、現在は世界耐久選手権(WEC)の2018/2019シーズンにも並行参戦しており、「今年は21回くらい渡航したんじゃないかな?」と忙しい年だったことに触れ、「2019年もGT500に参戦するならば、もう少し落ち着いた年にして、テストにも(もっと)しっかり取り組みたいと思っている。よりコンペティティブになりたいからね」。カーナンバー1をつけての戦いに、バトンはさらなる本腰を入れる構えのようだ。

さて、今回の取材日は11月26日。バトンと山本、そして高橋国光総監督がホンダ青山本社1階での「チーム国光 応援感謝 ファンミーティング」に出席した当日だが、SUPER GT最終戦での戴冠決定から2週間ほど経っている。この2週間は「(WEC上海戦もあるなど)忙しかったけど、素晴らしい2週間だったよ」とバトン。

そして山本も、「たくさんの人から祝福していただき、そのたびに『GT500のタイトルを獲ったんだな』と実感しています。素晴らしい時間を過ごせていますね」と振り返る。あらためて、ホンダ、日産、トヨタ(レクサス)が競う国内最高峰クラス、ハコ車の世界最高峰といってもいいレースのタイトルを獲った重みを感じている様子だ。

と同時に、山本にはF1という夢が「可能性は限りなく低いと思いますけど」、再び目の前に姿をあらわした2週間でもあった。この日の前日まで、山本はF1最終戦アブダビGPに視察に行っている。「今日のファンイベントも大切ですから、決勝はチェッカーフラッグまでは見られませんでしたけど、ホンダのおかげで金曜のフリー走行からF1を現地で生で見させていただけました」。イベント前の取材機会、報道陣からの山本への質問は、自然と“そちら”が中心になっていく。

今季の山本はスーパーフォーミュラ(SF)でもホンダエンジンを背にタイトルを獲得しており、GT500の王座も獲ったことで、F1参戦に必要なスーパーライセンス取得のためのポイントが規定の40点に到達。今年に関しては2冠奪取が40点到達の必須条件であり、それを見事にクリアしたことになる。

「(今はルール的に)それがないと話が始まらないですからね」。実際に40点を獲ったことの意味は、やはり大きかったといえるだろう。ただ、40点を獲ったからF1に乗れるわけでないことは当然であり、また、それとは別の次元で山本には考えるべき要素もたくさんあったようだ。山本自身にとっては、40点を取ったことで、あらためて自身のF1への考えを煮詰める作業が(短い時間のなかで)始まった、ともいえる状況だった。

山本は家族や先輩ドライバーとも話をしたという。そして「F1を生で見て、判断材料にしたい。現地(今季最終戦アブダビGP)に行くべき、と思いました」。ホンダからも『F1に対する気持ちはどうなんだ?』という話があったそうで、「僕や家族のことも考えて、僕の気持ちも尊重してアブダビに行かせてくれたことに感謝しています。行って良かったですし、素晴らしい経験ができました」。

そしてまとまった、現在の山本の考えは「可能性が低くても、チャンスがあるなら自分からそれを手放したくはないし、手放してはいけないと思いました」というものだった。つまり、この機にF1参戦を目指す意思を内外に向け、明確にすることだ。

「レーシングドライバーなら一度は憧れるのがF1ですし、僕自身も小さい頃からアイルトン・セナに憧れていました。(最近は)自分のなかで少し距離を置いていた部分もあるのですが、今年こうして(F1王者の)JB(バトン)と組んで結果を残すことができて、ちょっとチャンスがあるかもしれない状況にもなり…。本当に貴重な時間(シーズン)を過ごせたと思います。夢はなかなか捨てられないですし、可能性がゼロでないなら挑戦すべきだと思いました」

「アブダビに行って、F1の良さも、そして国内(SFとSUPER GT)の良さもあらためて理解したつもりです。まず、比べるべきではないな、ということが分かりましたね。違いはいろいろとありますが、ファンとの距離が近いのは国内の魅力ですし、F1のステータス性もやはり特別で、目指したい、と思わせてくれるものが詰まっていました」

「ヨーロッパのレースで戦っているホンダの若手の気持ちを考えると、(30歳の)自分が40点取ったからといって手を挙げてはいけないのではないか、という思いもありました。ただ、日が経つうちに、自分のF1への気持ちを再確認していくなかで、国内で結果を出した自分がチャンスを得られるかもしれないということが結果的には今後の若手のためにもなり、小さな子供たちの夢にもつながるんじゃないか、と思うようになりました」

来季のホンダ製パワーユニット(PU)搭載F1チームのレースシートは、山本とバトンがここに収録されている話をしてくれていた時点では、トロロッソのそれがまだ1席、未発表だった。ただ、同じ日(欧州時間)のうちに、それも埋まっている(A.アルボンが起用された)。

山本も自覚するように、F1のレースシート獲得は簡単な話ではない。国内トップ戦線で“ダブル・カーナンバー1”の栄誉を背負って戦いつつ、F1の可能性も模索していくのが来季の現実的な選択肢か。大相撲の大関昇進の基準ではないけれど、スーパーライセンスのポイントは直近3年の合計を見るので、今年の2冠奪取で稼いだ計35点はしばらく有効、2020〜21年を睨むのは“あり”だろう。ただ、F1参戦となると年齢的な要素も絡む。とにかく状況はラクではないわけだが…。

相棒バトンは、かつて自分が全力で挑み、頂点を極めた場所への挑戦を山本に推奨した。「誰にでもチャンスがあるカテゴリーではないのだから、チャンスがあるならトライするべきだろう。ナオキはSFとGT500の両方で頂点に立って自らの能力を証明した。次にそれを証明すべき場所はF1だと思う」。

「可能性がゼロに近いとしても、夢をもって過ごせている今は幸せだと思います」とも語った山本尚貴、いつの日か彼に朗報がもたらされることを期待したい。この日のファンミーティングに集った人々も、高橋国光総監督や、チーム国光、チーム無限(SFの今季所属先)のメンバーも、そう思っていることだろう。

  • 遠藤俊幸
  • 左からバトン、高橋国光総監督、山本尚貴(SUPER GT最終戦もてぎ)。《写真提供 Honda》
  • 山本尚貴《撮影 遠藤俊幸》
  • ジェンソン・バトン《撮影 遠藤俊幸》
  • 11月26日にホンダ本社で開催された、チーム国光の“凱旋ファンミーティング”。《撮影 遠藤俊幸》
  • 左から山本尚貴、高橋国光総監督、バトン。《撮影 遠藤俊幸》
  • 左から山本尚貴、高橋国光総監督、バトン。《撮影 遠藤俊幸》
  • 左から高橋国光総監督、山本尚貴、バトン。《撮影 遠藤俊幸》
goo 自動車&バイク
トップ
中古車
車買取・査定
車検・整備
自動車保険
バイク
バイク買取・査定
ランキング
ニュース
特集
まとめ
Q&A
サイトマップ