なぜ真冬に館山で ロードスター !? JR東日本&マツダ「ありそうでなかった」奥深い駅レンタカーコラボ
この真冬に、オープンカーでドライブなんて誰がするんだ…。サービス内容をみて、最初はそう思った。しかし、現地に行って担当者にあれこれ質問してみたり、マツダ担当者の話を聞いたりしてるうちに、「これありだわ」と実感してしまった。
マツダロードスター開発主査・チーフデザイナー 中山雅氏も現地で体感してみて「ありそうでなかったコラボ」と唸った企画。それが、JR東日本グループとマツダのコラボによる「オープンカーde体感!! 南房総ドライブ」だ。
JR内房線 館山駅西口にある駅レンタカー館山営業所(JR東日本レンタリース)の期間限定企画で、12月1日〜3月31日の4か月間、マツダ『ロードスター』(ND)S Special Package(AT車) を3時間4860円、1日(1暦日)9720円でレンタルできるというサービス。
これが予想以上に好評で、用意した2台の予約枠が「あっという間に埋まる」というからびっくり。ロードスターのレンタカーは、巷にいろいろあるのに、なぜこんなに人気なのか。盛り上がりのヒントを探りに、現地に行ってみた。
◆帰りの列車内ではみんなでお酒で乾杯しながら
「アクアラインも土休日になると渋滞が激しくて、都心と木更津の間が3時間かかるときもある。そうなると、せっかく木更津・館山エリアにクルマで遊びにきた人たちも、渋滞を避けるように、昼過ぎに帰ってしまう」と房総エリアドライブのリアル事情を教えてくれたのは、JR東日本 千葉支社 総務部企画室 地方創生担当 森原大輔課長と、同社木更津駅 山口一男 駅長。
「土休日は『新宿さざなみ』という特急が、新宿と館山の間を2時間20分で結んでいる。こうした房総特急でグループに来てもらって、憧れのオープンカーをレンタルしてほしい。房総を走って、帰りの列車内ではみんなでお酒で乾杯できます」(山口駅長)。
「房総エリアは観光地が駅から離れているところが多いので、駅まではJRの電車できてもらって、駅からはちょっと非日常的なドライブが楽しめるオープンカーで思いっきりドライブしてもらいたいですね。そして帰りは疲れを癒やしながら電車に揺られてゆっくり帰ってもらえる」(森原課長)。
◆なぜ真冬にオープンカーなのか
房総特急は、高速バスやマイカーに客を奪われ苦戦しているのも確か。しかし、高速バスやマイカーにはない、電車ならではの「いいね」がある。たとえば静かな車内の高速バスは、ちょっとした会話もひそひそ話になる。特急列車であれば、座席を転換して座席を向き合わせながらわいわいできる。山口駅長がいっていたとおり、帰りはお酒も飲める。トイレは各車にあるので、高速道路のSA・PA休憩を気にせず気軽に乗れる。
このあたりは、個人間カーシェアにも単独レンタカーにもないところ。駅まではゆったりと特急列車で、現地ではマツダが得意とする「ちょっと勇気を出せば誰もが手に入るオープンカー」を思いっきりドライブできる。助手席から運転する彼氏や友だちをパシャっとやって、インスタ映えもねらえるのだ。
では、なぜこんな真冬のど真ん中の4か月間に、オープンカーなのか。その答えのヒントになるのが、マツダロードスター開発主査 中山雅氏のトークにあった。
◆走るスポーツタイプの露天風呂
JR東日本千葉支社は2月2日、イオンタウン館山で南房総の魅力をアピールするイベント「オープンカーde南房総観光」を実施した。マツダも協力し、ロードスターや『CX-8』などのカーラインナップを実車展示。JR東日本レンタリース社員がオープンカーでめぐる南房総ドライブおすすめコースを来場者に伝授。そして、マツダの中山氏は当日行われた特別講演で、こんなことを話していた。
「ロードスターの幸せ感は、座ってみるとわかります。サイドのドアがちょうどお風呂の湯の高さにある。だから、ルーフとサイドウインドウを開けて、シートヒーターやエアコンをオンにすると、まるで露天風呂に浸かってるような気分になる。ぜひこのあたりを、房総の道を走らせながら体感してほしいと思います」。
そうか。この“走るスポーツタイプの露天風呂”を体感するならばこの季節、というわけか。そして、次にこんな疑問が湧いてくる。「そもそもなぜ館山駅前の駅レンタカーに、ロードスターが選ばれたか」だ。
◆企画の起源は、JR東日本社員のロードスター愛
実は、この企画の発想の起源は、JR東日本のロードスター乗りにあった。JR東日本 千葉支社 総務部企画室の佐藤裕史さんが発案し、車内はもちろん、自治体やマツダを巻き込み実現へとこぎつけた。マツダの中山氏は、このコラボについてこう話す。
「『旅をもっと楽しむ』という同じ方向で、JR東日本と(マツダが)手を組んだ例ですよね。これ、なかなかありそうでなかったコラボレーションでしょう。実際に千葉の館山まで列車できて、ロードスターを走らせてみると、クルマを売る側と列車を走らせる側の思いがつながって、あらためて大事なことを教えてくれたような気がする。現地へ来て、点と線がつながった感じ」(中山氏)。
◆出会いをくれる初代ロードスターの功績
お酒も好きというマツダ中山氏。「お酒をたしなみながら帰れるというのは大きいですよ。われわれ酒飲み側からも、おもしろい試みだと思いますね」と笑う。そして、JR東日本 佐藤さんと初対面でも、初代ロードスター(NA:1989〜1997年)乗りという共通点で、すぐに打ち解けたとも。
「やっぱりね、鉄道会社社員としてではなく、初代ロードスター乗りとして、いちオーナーとして話してくれる。そうなると、こっちもオーナーの立場で話せる。初代ロードスター乗りとしての接点で話せるんです。
初代はね、とくにそういうコミュニケーションに貢献してるんだな、とこういう場でも実感する。ファンの方たちが自主的に動いているミーティングなんかも、『もう止められない、止まらない』という感じです」(中山氏)。
◆アフォーダブルであることの証
広島から遠く千葉の館山までやってきて、初代ロードスター乗りという共通点だけで生まれる「出会い」について、中山氏は、こう教えてくれた。
「マツダロードスターが好きな人って、年齢も性別も地位も学歴も関係なくて、とにかくいろいろな人がいるんです。それって、乳幼児をかかえたママ友のようなね…。
大人になるといろいろ、身につけてるものとか、外見とか、地位とかで人を見がちですけど、ロードスター乗りにはそういった見方はないですよね。そういった広がりがある点が、マツダロードスターのアフォーダブル(affordable、入手可能な、手に入れやすい価格)なところかなとも思います」(中山氏)。
- 大野雅人