インド都市交通の事業機会を探る…大和合同会社 大和倫之氏[インタビュー]

業界 レスポンス

日本とは桁違いの規模と複雑さを有し、常に変わり続けるインド、そこに住まう現地人ですら「何がこの国の標準か」を知る者はいない。「一般的なインド」で定量化する伝統的な事業計画では、初めの一歩は踏み出せない。

南インドを拠点とし、日系企業の事業展開やコンサルティングを手掛ける大和合同会社 代表の大和倫之(やまとともゆき)氏に話を聞いた。

5月25日開催のオンラインワークショップ 「インド都市交通の事業機会を探る120分」はこちら。

---:インドを訪れた時、現地の方に、インドは北と南で大きく2つに分かれていて、人種や文化が違うということを聞きました。

大和氏:何も知らない人にインドを説明しようとすると、インドは北と南に分かれていて、北の人は白くて背が高くて、南は黒くてずんぐりむっくりで、という話をしがちです。でもそれは、日本人は東京人と大阪人に分かれますというのと同じです。東京人は綺麗な標準語を話し、大阪人は大阪弁でちょっと粗雑な感じです、と説明されて、それを聞いた外国人が「日本人は2種類に分かれるんだ」と理解するのと、似たような話ですね。

---:今回のセミナーでは、そういった大雑把なインドの全体論ではなく、「都市」に視点を置いて理解を深めていこうということですね。

大和氏:そうですね。例えば私が拠点にしているベンガルールという都市は、高原に位置していて、マイスールという隣街のマハラジャ(王様)が避暑地にしたのが起源と言われています。

標高1000m弱の高原都市で一年を通じて気候がいいので、富裕層が避暑に集まりました。航空宇宙や防衛などの産業が発達し、それらがベースになって2000年のY2K問題があった前後からIT産業が集積し、2021年現在はこれらIT産業のベースがあるがゆえにさまざまなスタートアップが誕生している。そういった経緯を踏まえると都市への理解が深まるのではないでしょうか。

---:なるほど。都市の成り立ちを知ると、その町の風土や気質への理解が深まりそうですね。

大和氏:そうですね。首都であるデリーには政府機関が集まり、インド各州の出先や世界各国の大使館があります。西のムンバイは、貿易港・商都として金融や貿易などを中心に発達した歴史があります。

食も地域によって異なり、それぞれのスパイスや具材を使ったカレーがあります。インド全体を見れば、お酒を自由に飲める環境は少ないですが、ベンガルールはパブ文化がありマイクロブルワリーも50か所近くあります。

---:モビリティに関してはいかがでしょうか。

大和氏:主要都市に直接アクセスするのは空路が便利ですが、ビジネスパーソンや富裕層、外国人に限られます。地方都市には航空便が通じてないところも多く、そういったところへは最寄りの空港から車で半日や丸1日かけて移動することも普通です。

鉄道に関して言えば、高速鉄道の計画もありますが、いわゆる在来線が中心です。時速は数十km、特に遅いものだと線路が古く途中停車する時間も含め、平均すると時速20〜30kmという路線もあります。ベンガルールからデリーまで飛行機だと2時間半ですが、電車だと1日半くらいかかる。飛行機だと安くても5000〜6000円から1万円するところが、電車だと数百円か数千円くらいでも行けてしまいます。似たような価格帯で夜行バス、いわゆるスリーピングバス(寝台付き)もあります。例えば500kmくらいの距離を一晩かけて移動するんです。

---:幹線道路や道路網は整備されているんですか。

大和氏:そうですね。NHと呼ばれているナショナルハイウェイ、日本で言う国道が全国に通じています。都市と都市の間、複数車線が続いてずっと時速80~100kmで走り続けられるような主要幹線道路もあるのですが、それも整備されたのはここ5年くらい。道の問題、車両の問題等、いろいろな要因がありますが、以前は80キロも出したら怖い感じでした。

国道と言っても未舗装のところや、あるいは昔の街道みたいなところもあって、私も過去に100km程度を移動するのに7〜8時間かかったことがありました。雨が降るとぬかるんで、いろんなところに穴ができて車が落ちてしまう、生活道路を兼ねているため街中を抜けるのにひどい渋滞に巻き込まれた、お祭りに遭遇して身動きが取れない、などということもありました。他に道路がないから、どうにもならないのです。

---:都市の内部の移動についてはどうでしょうか。私が昨年インドに行ったときは、Uberが非常に便利だったのですが、渋滞がとにかくキツイという印象でした。

大和氏:そうですね。特にデリーを例にすれば、メトロは非常に充実していて、東京の地下鉄の総延長を既に超えています。IT企業の経営者など、以前は車で通勤するのが当然でしたが、2時間渋滞にはまるのは時間がもったいないという理由で、メトロで移動する人も多くなっています。

でもまだそれはデリーなど極めて限られた都市や区間だけですし、所得水準や役職・身分によっても交通手段が違ってくるのです。Uberも最近はだいぶきれいになりましたが、ドロドロのひどい車が来ることもあります。

---:リキシャもまだ街中でよく見かけますね。

大和氏:リキシャは庶民にとっては重要な足ですから、まだいっぱいますね。また最近ベンガルールなどの大都市だとシェアドバイクが出てきて、新しい電動バイクを街角で借りられるというサービスも始まっています。

---:渋滞に対する対策は進んでいるのでしょうか。

大和氏: はい。国道の整備が進んで、先ほど述べたように時速100km近くで都市間を移動できるようになったのがまず大きいですし、ベンガルールの街中だと高架や立体交差などの渋滞対策が進んでいます。あとは日本でいうETC、日本人が想定するものとはまったく違いますが、自動収受システムもここ1年くらいで導入されました。

また駐車についても、数年前まではお金を払って停める、という感覚はなかったと思うんですが、最近、有料化されるところも増えています。自宅前の路上に車を停めるのが当たり前だったのに、年間いくらかでチケットや権利を買ってください、という話も始まっています。

---:自家用車に対する消費者のニーズも変化してきたようですね。

大和氏:はい。もともとマルチスズキが50%を大きく上回るシェアを握っていて、日本の旧規格の軽自動車の車体に800ccのエンジンを積んだ車がつい最近まで新車で売られていました。

ですが、さすがに安全基準や排ガス基準が厳しくなってきています。2020年4月からBS6(※)が標準とされ、車両の価格も上がりました。EVメーカーも現れています。

※インドの排ガス基準「バーラト・ステージ」。BS6はユーロ6に相当する

車検制度はありませんが、15年廃車ルールを政府が導入を始めていますし、車両のスペックや装備関係に関しても変わってきています。洗車に対する意識も変わりました。

---:ホコリまみれのクルマもありましたが、綺麗にしているクルマも結構見かけましたね。

大和氏:そうですね、だいぶ綺麗にするようになりました。日本で最近流行ってる泡のフォームで洗車するサービスを提供するスタートアップもいます。

また、マフラーを変える、というまではいかなくとも、ホイールを変える、ステッカーを貼る、くらいのドレスアップニーズはあります。昔は後ろに乗る人のためだった車ですが、オーナードライバーが増えている、という変化もあります。

---:EVについてはいかがでしょうか。あまり見かけなかった気がしますが。

大和氏:今もまだそれほど多くはないですが、4輪では国産や韓国ブランドのEVが走っています。いわゆる市バスは何千台という規模でEVを導入している都市もあります。

3輪のリキシャは国産のEV専用車が出ています。グルガオンあたりでは、鉛バッテリーを積んだ中国製のリキシャも多いですね。ベンガルールではスマートなデザインの2輪のEVも見かけます。乗用車はまだそれほどでもないですが、用途の違う車両にも目を向けると確実に増えてきています。

大和氏が登壇する5月25日開催のオンラインワークショップ 「インド都市交通の事業機会を探る120分」はこちら。

  • 佐藤耕一
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