「薬不足」で浮き彫りに、「業務停止命令」の影響とユーザーの不利益【岩貞るみこの人道車医】

社会 レスポンス

薬の供給不足が問題になっている。

知人のひとりは、定期的にクリニックに通っている。診察が終わると医師から出された処方箋をもって、クリニックのとなりにある薬局で薬をもらって帰るのが、ルーチンである。半年ほど前のことだが、その日は時間がなくて診察後に薬局に寄れなかったらしい。翌日、自宅そばにある薬局に行ったのだが、薬がないと言われてしまった。

めずらしい薬ではない。どこにでもあるような一般的な薬だ。これまでにも、家のそばや、買い物ついでに寄った薬局で出してもらったこともある。薬剤師さんは、申し訳なさそうにこう言ったという。

「医薬品メーカーはコロナ関連の対応があり、生産調整に入っているんです。」

その後も5件ほど薬局をまわったが、すべて同じ回答だった。最後にいった薬局では、

「クリニックの隣にある薬局なら、確保している可能性が高いので、そちらに聞いてみてください。」

そういわれた。なるほど、いつも大量に扱っている薬なので、多めに在庫を持っている可能性が高いのか。結局、クリニックの隣にある薬局で手に入れることができ、ことなきを得たそうだ。

コロナだけではない薬不足の原因

薬不足の原因は、コロナだけではない。

2021年11月に大阪市にある、日立物流西日本の物流センターで火災が発生したのだが(執筆時点で、放火であることが判明)、この物流センターでは医薬品が保管されており、やはり、薬が手に入りにくくなって、医療関係者がお互いに情報を共有しあう様子がうかがえた。

そして、もうひとつ深刻なのは、ジェネリック(後発医療品)の不足である。この原因は、医薬品メーカーの不正による業務停止だ。

2020年12月に、福井県にある小林化工が、水虫薬に睡眠導入剤を混入させたことから始まっている。服用した患者が交通事故などを起こす被害まで出ていて、ドライバーとしても見逃せない事件である。報道によると、小林化工は長年、不正な工程で製造をしていたことが明らかになり、業務停止命令を出されている。

これを受けて、全国の都道府県が医薬品メーカーに飛び込みの立ち入り調査を行うなどした結果、複数のメーカーでも同様に製造工程に問題があり、業務停止命令が出された。これにより、あちこちで薬不足が深刻化しているというわけだ。

不利益をこうむるのはユーザー

業務停止命令は、とても厳しい罰である。それだけに、企業は自らを律し、規範意識を高めた行動をとるよう促す効果もある。

ただ、それでも従わないところは出てくる。その結果の業務停止なのだが、しかし、それで不利益をこうむるのはユーザーだ。それにはちょっと、納得がいかないところがある。

現在、日本の各地で、運転自動化レベル4の車両を走らせる実証実験や実装が行われている。そのほとんどが、公共交通が成り立たなくなった地域。なかにはタクシーですら撤退をし、移動の手段がまったくないところもある。自動運転車の運行は、その土地で生きていくための最後の希望なのである。

しかし、ここでも医薬品メーカー同様、運行を担う会社の不正が起こったらどうなるのか。慣れとともに、規範意識が薄れるのは、よくある話だ。また、自分たちの利益のために不正をしようと思わなくても、地域住民の役に立ちたいという思いから、なにかのトラブル時にも運行させ結果として不正をするケースも出てくるだろう。

そのときに、罰則が業務停止命令であれば、一瞬にして地域住民は移動の足を奪われることになる。かといって、ゆるい罰則であれば抑止効果は低く、命を載せて走る公共交通機関としての責任を感じてもらえない可能性もある。

拡大はなにを生み出すのか

経済産業省では国土交通省と連携し、運転自動化レベル4の車両を使ったサービスの実現・普及に向けて、新たなプロジェクト「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」を立ち上げた。2022年度に限定したエリア・車両での遠隔監視のみ(人は同乗しないレベル4)での自動運転サービスを実現させ、2025年度までにエリアと車種を拡大し、40カ所以上に展開するとしている。

数の増加は質の低下という言葉があるように、拡大はなにを生み出すのか。そこも含めての実証実験なのかもしれないが、ただ、技術が向上しても、運用するのは人である。ユーザーにとって便利、かつ、不利益のない制度整備も急がれる。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

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