先進安全装備の普及で修理代も高額に、自動車保険はどう変わるのか【岩貞るみこの人道車医】

業界 レスポンス

いくら安全運転を心がけていても、もらい事故は防げない。それに、突然の意識消失で事故を起こす可能性だってある。そのときに威力を発揮するのが任意保険だ。ほとんどの人が入っていると思う(入っていない人は、今すぐ!)。

では、そのなかでも、車両保険となるとどうだろう。私はつけていない。保険料が高いからだ。以前、バブルの真っ盛りにはじけてポルシェ『928』を買い車両保険をつけたら、年間の保険料が50万円を超えてびびったことがある。とっとと解約して以来、一度もつけていない。

しかし、ここへきて状況が変わってきた。安全運転支援技術の搭載である。衝突被害軽減ブレーキ(以下、AEB)のセンサーはバンパーについているものがあり、これまではバンパーをちょこっとぶつけても「まっすぐになればいい」くらいの感覚だったのに、今は修理代が高くなり「入っていればよかった、車両保険!」となるわけだ。

一方、AEBがあれば、衝突&追突事故は減っているはずだ。そこを含めて自動車保険の今はどうなっているのだろう? そこで、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)に聞いてみた。

追突事故はAEBの普及で半分になった

まず、車両保険対応は年間60万件ほど。そのうち4割が単独事故で、4割が相手のいる事故とのこと。残り2割はゲリラ豪雨などの自然災害で、最近、この件数が高くなりつつあるという。クルマも昨今の気候変動の影響を受けているのである。

さて、追突事故数はというと、自動車メーカーの発表データと同様、AEBが普及する前の、5〜10年前と比較して追突事故は半分ほどになっており、毎年、国が算定し、各保険会社が保険料を決めるベースとする数字では、事故が減って、2〜3%ほどユーザーに還元(つまり保険料を安くする)できるという。2021年11月以降の新型車はAEBが義務化されたこともあり、これから保険料は下げモードになるのではという見立てもあるそうだ。

また、バックビューモニターの普及により後退時の事故も減っているとのこと。こちらも、2022年5月から新型車に対して義務付けられたので、さらに事故が減り、保険料が安くなることが期待される。

では、ユーザーの車両保険の付帯率はどうなのだろう。損保ジャパンによると、乗用車全体の65%ほどが付帯。そして、この5年間で10%ほど付帯率が上がっているという。なるほど、やはりAEBの普及〜ちょこっと追突でも修理代爆上がりが影響しているようにもみえる。

一方、事故って車両保険を使う人は約10%。つまり、10人に一人か、10年に一度しか使っていないことになる。さらにこの割合が近年、少し減ってきたという。これは、今の保険制度が、一度保険を使うと3年間は保険料がぐーんと上がり、長い目で見ると保険を使わないほうが得になるかもしれないからだ。実際、10万円くらいの修理代の場合、整備工場から「使わないほうがいいですよ」と勧めれるという声を多く聞く。

「ディーラーで」保険に入ることのメリットも

では、車両保険の加入に傾向はあるのだろうか。損保ジャパンのデータでは、乗用車では、新車購入時から最初の車検までの3年間は約80%が付帯するそうで、なかでも輸入車は、約95%が入っているという。ただ、5年をすぎると付帯率が下がり60%くらいになるそうだ。

私が以前、車両保険をやめたとき、最後まで悩んだのは、飛び石でフロントウィンドウが割れたときのことだ。おなじように思う人は多いかもしれない。しかも、ガラスにAED用のカメラが装着されていたら、ガラス交換と同時に調整も必要になり修理代は高くなる。そこで最近、注目されているのは、新車をディーラーで買ったときに「ディーラーで」保険に入ると、フロントウィンドウやタイヤの修理を一定額の補償してくれるサービスである。

メルセデスベンツの「安心プラス」、ボルボの「プレミアムプラス」、フォルクスワーゲンの「プレミアムケア」など、例えばフロントウィンドウの飛び石などは10万円までの修理を1万円の自己負担で直してくれる(条件あり。詳しくは各社のサイトで)。一番のポイントは、これを利用しても等級が下がらないことだ。輸入車メーカーが大々的にアピールするのでだいぶ認知されはじめたが、実は、国産メーカーも数社、何年も前から取り組んでいるシステムである。ディーラーにしてみればユーザーの抱え込みという目論見もあるのだが、ユーザーのメリットも当然、大きい。

車齢が伸びた今「故障」にも対応する保険

さて、コロナで景気が低迷する前から、クルマを長く乗り続ける人が増えている。となると、今度は故障に出くわす人が増えてくる。損保ジャパンによると、ロードサービス出動理由の約7割は故障なのだという。

これまで車両保険は、故障は対象外だった。しかし、車齢が上がるということは、故障に出くわす可能性が確実に高くなっているということ。こうした実態を受けて損保ジャパンでは2019年1月から、5年以上経過した車両に対して車両保険を付帯している場合のみ、プラス8000円ほどの保険料で100万円までの修理代を出すプランを開始した。長く乗り続ける今、これからは故障に着目した保険選びも必要なのかもしれない。

また、これまで損保ジャパンの車両保険は、動物による損害は対象外(エコノミータイプ。フルカバータイプの車両保険はすでに対象)だったのだが、エコノミータイプも対象となることになった。理由は、動物との事故が多いからだ。東京でも、落下物のうち2割は動物。千葉ではキョンが増殖しているし、日本全国の山間部に行けば鹿やイノシシ、タヌキやクマも出てくる。小動物であってもバンパーにぶつかれば、AEDのセンサー調整は必須。「入っていてよかった、車両保険」と感じる機会となるだろう。

◆保険は今後、ドラスティックに変わる

最後に、今後、自動車保険はどう変化するのか聞いてみた。

「コネクテッド技術でメーカーが持っている走行データを元に保険料を設定するプランを一部車種で始めています。これまでは車種ごとに保険料を設定していたのですが、この人は安全運転なので保険料はこのくらいと、人ごとに設定しようというものです。まだ手探りで少しずつですが、ほかの大手の保険会社さんもいっしょにやっているので、あるタイミングで一気に普及する可能性があります」(損保ジャパン)

そうだ、そのとおりだ! 安全運転の塊のような私としては、同じ車種に乗る一部ユーザーの事故などで保険料が高くなるのは解せない。若い人だってうまい人はいる。若いっていうだけで保険料が高いのは納得がいかないだろう。

保険はこれからドラスティックに変わる。一度はいった自動車保険も、そのまま継続ではなく、自分の今の車両と運転に見合った内容を見直していく必要がありそうだ。私もね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。内閣府SIP自動運転推進委員会構成員。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

  • 岩貞るみこ
  • ドライブルートには鹿が出る《写真提供 損害保険ジャパン》
  • ロードサービスの約7割は故障によるもの。《写真提供 損害保険ジャパン》
  • 狩猟犬などの飼い犬だって、飛び出してくる。《写真提供 損害保険ジャパン》
  • 衝突被害軽減ブレーキの認知・普及のイメージリーダーとなったスバルのアイサイト《写真撮影 雪岡直樹》
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