「SOSが使えない」KDDI通信障害で浮き彫りになった自動運転時代への大きな課題

業界 レスポンス

2022年7月2日に発生したKDDIのau携帯電話サービスの通信障害は、単にスマホでの利用にとどまらず、自動車メーカー各社のコネクテッドサービスにも大きな影響を与えた。通信が5Gへの転換が進む中で、障害発生時のクルマにおける今後の課題や対策を考えてみた。

大規模通信障害でコネクテッドサービスなどに影響

2日の朝、まだ寝床にいるとき、親戚が「私の携帯につながらない」と自宅の固定電話にかけてきた。「なんで?」と思いながらスマホを確認すると、ステータスバーには○印に斜め線が入った“通行禁止”マークが表示されていた。そのアイコンには電波がフルに受信できているステータスも重なって表示されているにも関わらずだ。過去にエリア外へ出掛けて「圏外」を表示したのは知っているが、こんな表示は初めてだ。

試しにワイモバイルで契約している妻のスマホに発信してみたが、確かに通話もできなければLINEでの送信もできなくなっている。auを使っている子供達にもつながらない。これはおかしい。すぐにドコモで契約しているiPhoneでチェックすると、そこにはauで通信障害が発生している記事があふれていた。7月2日午前1時半ごろから通信障害が発生。寝ている間に世の中は大変なことになっていたのだ。

そして、通信障害が発生してから86時間を経て、auは5日の午後3時36分、音声通話・データ通信に問題がないことを最終確認。ようやく完全復旧にこぎつけた。KDDIによれば最大3915万回線に影響が出たとし、これはKDDI史上最大の通信障害となったと明らかにした。

障害が発生した原因について、すでに多くのメディアが伝えているので、ここでは詳しくは述べない。要はルーター交換作業中にトラブルが生じ、音声通信が約15分ストップしたことが最初のきっかけ。その切り戻し作業をする間に予想以上のアクセスが集中。ここで輻輳(ふくそう)が発生し、データ通信を巻き込んだ全国規模の通信障害に発展したというものだ。

問題はその影響の範囲が想像以上に大きかったことだ。一般ユーザーが使うスマホだけにとどまらず、ヤマト運輸や気象庁のアメダス、バスの運行管理、空港にまで影響が及び、一部の銀行では屋外ATMといった業務にも障害が発生した。中でも多くの人が意外に感じていたのが、トヨタやスバル、マツダ、スズキのコネクテッドサービスなどに影響が出たことだ。

いざという時の「ヘルプネット」が使えない

実は、トヨタはKDDIの第2位の株主で、2020年3月にはコネクテッドカー技術の研究開発を推進することを目的に業務資本関係を結んでいる。その関係性から、このトヨタグループ4社が提供するコネクテッドサービスは、au回線を使ってサービスを提供していた。そのため、この通信障害が発生した間は、通信を使ったカーナビの交通情報や目的地検索、エアコンの遠隔操作などが使えなくなり、緊急通報システムである「ヘルプネット」への通報やオペレーターとの通話する機能が利用できなくなっていたのだ。

特にこのヘルプネットが使えなくなっていたことは深刻に捉える必要がある。なぜかと言えば、ヘルプネットは「SOSコールボタン」など専用スイッチを押すか、あるいは搭載車両のエアバッグが展開後に自動通報によってオペレーションセンターにつながる仕組みで、この通報から状況次第では警察や消防などへ取り次ぐ重要な役割を担っていたからだ。今回の通信障害は、少なくともこうした事態にも対応できなくなっていたことになる。これは開発が進むドライバー異常対応システムにも影響を与えることになるだろう。

一方で、今回の事例だけでなく、これまでの通信障害がクルマの走行そのものに影響を与えることはなかった。それはコネクテッドカーとはいえ、その機能はあくまでクルマが単独でセンシングしながら走行しており、仮に何か異常があってもドライバーの操作が優先される仕組みになっているからだ。つまり、現状のコネクテッドカーでは、通信障害でネットワークが遮断されてもクルマの走行に影響は受けることはないのだ。

とはいえ、完全自動運転を視野に入れた未来に目を向けると、今回ほどの大規模な通信障害はその実現へ向けて、大きな課題を白日の下にさらしたとも言える。

完全自動運転に向けた大きな課題

身近なところでも、日産の「プロパイロット2.0」は、高精度3次元地図やGPS、ミリ波レーダーなどを活用して、ハンズオフ運転を可能にする高度な運転支援を実現した。しかし、それとは別に搭載されているカーナビからの情報がないとハンドル支援は作動しない設定となっている。つまり、地図データがOTAによって最新版に更新されていなければ、ハンズオフでの走行は不可能となるわけだ。

これは、自動運転「レベル3」を実現したホンダの「トラフィックジャムパイロット」も似た状況にあり、走行条件として「高精度地図および全球測位衛星システム(GNSS)による情報が正しいこと」とされている。

そして、ドライバーレスでの走行を可能とする将来の「レベル4」になると、通信障害はさらに大きな影響を受けることになる。

前述のように、一般的な自動運転システムは高精度3次元地図を必須とし、交通情報をはじめとする周辺の情報は常時取得していることで安全な走行を実現できている。こうした状況下で大規模な通信障害が発生すれば、クルマは緊急避難として路肩に停止させられ、おそらく乗員は障害が復旧するまでまったく動けない不安な状況が強いられることになるだろう。

5Gの実用化で『C-V2X』のハードルは下がったが

中でも深刻な状況を生みそうなのが、携帯電話の通信技術を使った『C-V2X』で構築されたクルマと協調するためのシステムだ。元々は『V2X(Vehicle to Everything)』と呼ばれる通信インフラでスタートし、クルマだけでなく人など様々な対象と通信し合うことで移動運転の高度化を進める計画でいた。しかし、使用する周波数帯の空き状況の違いから日本と欧米では異なる周波数帯を使わざるを得なくなっていた。

そんな矢先、国土が広く、携帯電話の通信技術に長けた中国からC-V2Xが提案される。それまで携帯電話の回線は通信速度が遅く、高速で移動する車には不向きとされていたが、それが5Gの実用化によってそのハードルは一気に低くなった。同じく国土が広いアメリカなどからも賛同が得られ、これでV2Xは一気にこの方向へと動き出したのだ。

ただ、C-V2Xで使うのは携帯電話の通信技術。自動運転が社会インフラとして定着している中で通信障害だけでなく、大規模な災害や停電、もっと言えばハッキングされたときの状況も考えておかなければならない。もちろん、そうした事態に陥った時でも、ドライバーがそれに代わることで回避はできるはずだが、自動化が当たり前となっている中でクルマを運転する人材が足りなければ、それこそ世の中は大混乱に陥るだろう。

まずは通信障害を起こさないための再発防止策を

そのためにも重要なのは、まずは通信障害を起こさないための再発防止策を徹底させることだ。それでも今回のようなことが起きた場合はどうやって安全を担保するのか、いわゆるフェールセーフのような体制作りが欠かせない。一つの方法として、電力供給体制がエリアごとに融通し合うように、通信でもそうしたバックアップ体制の構築も考えられると思う。また、車両側にも異なる通信回線の搭載を義務付けても良いのではないだろうか。

こうした状況を想定しつつ、試行錯誤を繰り返していきながら早い段階での“耐性づくり”が欠かせないのだろうと思う。

  • 会田肇
  • 通信障害下ではヘルプネットが使えなくなる。(トヨタ ヴォクシーのSOSコールボタン)《写真撮影 中野英幸》
  • ボッシュのC-V2Xのイメージ(参考画像)
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