子どもにとってシートベルト=安全装置ではないという現実【岩貞るみこの人道車医】

社会 レスポンス

2022年8月7日22時過ぎ、大阪府堺市の阪和道にある料金所で大人2人、子ども3人が乗る乗用車が横転する事故があり、後部座席にいた6歳男児が車外放出され、また助手席にいた母親が亡くなった。まずは亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、ケガをされたご家族の回復を願うばかりである。

執筆時点で詳報は入っておらず、6歳男児が後部座席のどこに、どのようにいたのかは不明だ。車外放出=シートベルト未着用という声もあるが、大人用のシートベルトをしていたとしても6歳の小柄な体格であれば、車外放出は十分に起こり得る。

子どもに対してシートベルト=安全装置ではない

大人用のシートベルトは6歳児に対して安全装置としてまったく機能しない。自動車メーカーは、取扱説明書などに「身長145cm以下(車種によって異なる)は、チャイルドシート(学童用のジュニアシートを含む)をしろ」と書いている。子どもの骨格に合わない大人用のシートベルトでは、車外放出こそしなくても、衝突速度や角度によっては首にかかって頸椎損傷、腹にかかって内臓破裂を起こすのだ。子どもに対してシートベルト=安全装置ではない。凶器に豹変するのである。

ただ、家族のなかに子どもが多くなると、乗用車のどこにどう座らせるのか困るケースが出てくるだろう。子どもが3人のときは、後席左右にチャイルドシートを装着し、そのあいだの中央席に年長のきょうだいを座らせるパターンになることが多そうだ。

ただ、前述のとおり、大人用のシートベルトは子どもには通用しない。この場合、後席中央には大人が座り、助手席にもうひとつチャイルドシートを付けて子どもに座らせるやり方が想定できる。ただ、気を付けてほしいのは、助手席はチャイルドシートが正しく装着できなかったり、助手席エアバッグと顔の距離が近くなって逆に凶器になることもある。ゆえに、クルマごとに慎重に検討する必要があるだろう。

チャイルドシート装着義務が免除されるケースとは

チャイルドシートの話になると、よく聞かれることがある。

「大人2人分は、子ども3人分として乗員を計算していいはずだが、それは今もそうなのか」

私が運転免許を取得した40年前(!)、教習所で教わったこの一文は、まだ生きている。つまり、5人乗りの乗用車でも、大人3人と子ども3人が乗ることができることになる。この場合の子どもは、道路運送車両法により「12歳未満」とされている。

では、チャイルドシートはどうすればいいのか。運転席と助手席に大人がそれぞれ座り、後席に大人1人と子ども3人ということになるのだが、かさばるチャイルドシートをひとつ、ないし、ふたつ付けると4人が座るスペースがなくなってしまう。

道路交通法施行令には、こういう場合は、チャイルドシートは使わなくていいと書かれている。衝突したときを考えるとぞっとするけれど、法的には装着義務が免除されるのである。

このとき保護者は、なにもしないより、せめて大人用のシートベルトでもした方がいいと考えるのか、子ども2人に対して大人用のシートベルト一本をかけるという暴挙に出ることがある。しかし、正直なところ気休めでしかなく、安全装置としての効果はまったくない。

子どもの安全な乗車環境は、法律も車両も追いついていない

チャイルドシートはその他にも、タクシーやバスは免除されている。また、とっても太っていたり、ケガの治療中や障がいがあってチャイルドシートが適切に使えない場合は、例外として使わなくていいことになっている。

とはいえ、万が一の安全を考えると、チャイルドシートは命綱だ。子どもをとりまく安全な乗車環境は、法律も車両も追いついていない。だから保護者が工夫をする必要がある。私の友人は3人目が産まれたと同時に、3列シートのミニバンに乗り換えた。これもひとつの正しい選択だろう。

楽しい夏休み。どうか事故のない、事故に遭ったとしてもケガが少なくてすみますように。そして、子どもたちが、楽しい思い出が作れることを願っている。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家

イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

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