バッテリーとブレーキパッド、整備の現場に変化が訪れている理由【岩貞るみこの人道車医】

業界 レスポンス

私が免許を取得した昭和の終わりごろ、クルマにエアコンは標準装備されていなかった。ついでに、重ステに窓は手巻きが当たり前である(わからない言葉はGoogle先生に聞こう)。

しかし技術の進化と社会のニーズが相まって、そこからいろんなものが装着されてきた。ここ数年の装着ラッシュは運転支援技術と環境技術(電動化を含む)である。電気自動車(以下EV)が主役になる日はまだ見えないものの、ハイブリッド(以下HV)やプラグイン・ハイブリッド(以下PHEV)は当然の波となって押し寄せている。

そうした中、消耗部品にある変化が起きているという。2022年3月に開催されたIAAE(国際オートアフターマーケットEXPO)2022のセミナーで、この状況に対して注意を呼び掛けていたのは中村オートパーツ株式会社の社長である中村秀隆さんである。IAAEはBtoBなので、相手は整備関係者だ。しかしこれはユーザーにも関係のある話ではないか。中村さんに現状と注意点について話を聞いた。

変化が起きている代表的な部品として挙げられるのは、バッテリーとブレーキのディスクパッドだそうだ。

アイドリングストップの普及でバッテリー売上増

少し古い数字で恐縮だが全日本自動車部品卸商協同組合(データ化は自動車新聞社)によると2006年を100としたとき、9年後の2015年、バッテリーの売り上げは123.3%と増加。一方、ブレーキパッドは83.7%と減少している。

中村さんは、バッテリーの売り上げ増加は、アイドリングストップの普及にほぼ比例しているという。信号待ちでエンジンが止まると同時に、燃料消費を抑えられた秒数がインパネに表示されガソリン代が浮いたと細々とポイ活をするがごとく喜んでいた私としては、バッテリー交換のタイミングが早くなるんだったら、エコロジーでもエコノミーでも全然ダメじゃんと意気消沈である。

一方のブレーキパッド。こちらは、HVやPHEVに組み込まれた、アクセルペダルを離すと同時に速度が落ちるタイプの回生ブレーキにより、フットブレーキの踏み方が明らかに変化しているためだ。では、どのくらい違っているのか。

ブレーキパッドは、走り方によって個人差が大きく正確なデータを出しにくい。なので、中村さんの肌感覚で教えてもらった。一般的なエンジン搭載車が4万kmでブレーキパッドを交換しているのに対し、回生ブレーキの付いているHVの『プリウス』になると、10万〜20万kmほど交換なしで走れるという。さらに、ほぼ車速ゼロまで速度を落とすことができる強力な回生ブレーキが装着されているEVになると「交換せずに、車両の寿命を終えるだろう」という。

整備事業者にとっては、売り上げ減少で困るのかもしれないが、これはユーザーにとっては朗報だと言えるかもしれない。

ESCの装備で変わった「ブレーキパッドの減り」

ただし、中村さんは、注意すべき点があると言う。ESCの普及が進み、後輪のブレーキパッドの減りが早くなっているというのだ。ESCは、コーナリング中に車両を安定させるため、後輪の左右どちらか(カーブの内側)に、ちょいちょいっと自動的にブレーキをかけるシステムである。

一般的に、走行中にドライバーがブレーキペダルを踏むと前につんのめるように荷重がかかるため、前輪のブレーキパッドが減る。ゆえに、これまでブレーキパッドの交換は、前輪9:後輪1という肌感覚だったそうだ。ところが、ESCが装備されてきたいま、前輪7:後輪3になってきているというのだ。

特に、ミニバンで多人数が乗って重くなったり、SUVのようにもともと車重のあるクルマだと、後輪のブレーキパッドの減りは早い傾向にあるという。

こういう話を聞いていると、たぶんタイヤも同じ流れなのだろうと想像できる。特にHVやEVは、エンジンのみのクルマよりも車重が100kg前後重い。タイヤへの負荷もそれなりにかかっているのではないだろうか。

クルマが進化すれば整備も変わる

中村さんは言う。

車検や12か月点検で、これまでの経験や感覚より早いタイミングでバッテリーや後輪ブレーキパッドの交換を提案されることが出てくるかもしれないが、車検を安く通すことだけを考えず、車検後の2年間を安全に走るために必要な整備を受けるよう心がけてほしいと。

どうやら、整備士は口下手な人が多く「安くやってよ」と言われると、その期待に応えようとしてしまう。また、安価で車検を提供するところに客をとられるのではないかという不安もよぎり、本当に必要な整備の提案ができなくなってしまうこともあるのだそうだ。昨今の急激な物価上昇もあり、車検や点検代を少しでも抑えたいと思う気持ちはわかる。しかし、クルマが進化すれば整備も変わる。交換部品の質やタイミングも変わってくるのだ。

今、安全なクルマではなく、次の車検や点検まで安心安全に走れるように。クルマの健康を守るのも、ドライバーの義務なのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家

イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

  • 岩貞るみこ
  • 電動車は回生ブレーキにより、ブレーキパッドの減りが少ない(写真はイメージ)《写真撮影 宮崎壮人》
  • ESCの普及で、後輪のブレーキパッドの減りが早くなっている。SUVのような重い車で顕著だという(写真はイメージ)《写真撮影 雪岡直樹》
  • ESCの普及で、後輪のブレーキパッドの減りが早くなっている。SUVのような重い車で顕著だという(写真はイメージ)《写真撮影 雪岡直樹》
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