かつて「ソリッド」と「メタリック」しかなかったクルマのボディカラーの進化っぷりが衝撃だった
この記事をまとめると
■かつてクルマの塗装はメタリックカラーとソリッドカラーしかなかった■しかしいま技術進化により、新たな塗装が生まれている■光輝塗装は付加価値の高さを感じさせるがそのぶん高価だ
かつてはソリッドカラーとメタリックカラーのみだった
かつてクルマの塗装は、ソリッドカラーかメタリックカラーのいずれかしかなかった。ソリッドカラーとは、いわゆる単色塗料のことで、溶剤に樹脂と顔料(色の粉末)を溶かしたもの、メタリックカラーとは、これにキラキラと輝く光輝材(メタル粉=アルミ粉)を混入したもので、この2タイプがクルマの塗装として主力を担ってきたことはよく知られるとおりだ。 ところが、塗装技術の進化により、アルミ粉を使うメタリック塗装以外にも輝きを放つ塗料が考案され、メタリックとは異なる輝きを見せる塗装として、市場で人気を集めることになった。こうしたメタリック以外の輝きを持つ塗装に、どんなものがあるのか整理してみることにしよう。 その前に、塗装の基本だが、ソリッド塗装は下地(プライマー層)、ベース色層、クリア層の3層塗装になることに対し、キラキラと輝きを放つ塗装は、ベース色とクリア層の間にさらに光輝層の塗装を持つ4層塗装になっていることを覚えておいてほしい。光輝塗装は、ソリッドカラーより一工程多い塗装となるため、コスト的に割高な塗装となる。 まず、メタリック以外の輝きを放つ塗料として登場したのがパール塗装だ。その名称から、真珠を光輝材に使う塗料と思いがちだが、実際には雲母(マイカ)を使う塗料である。場合によって「パールマイカ」という名前が使われることもあるが、内容は同じである。雲母は、半透明の幕が幾重にも重なる構造を持つため、光が当たると層ごとに異なった反射を示し、真珠のような深みのある光沢を見せる素材である。 また、このパール塗装と同じ考え方で作られた塗装方法がラメ塗装で、光輝材(ラメ)がパール塗装より粒子が粗い(大きい)分だけ、派手に目立つ光輝感となる。
インパクトのある塗装はその分高価になる
見る角度により、色が変わって見えるマジョーラカラーがある。輝きはメタリック塗装と似ているが、光の当たる角度によって色が変わって見える塗装で、1998年のフォーミュラ・ニッポンにチーム・インパルの車両がこのマジョーラカラーで登場し、一躍大きな話題となった塗装である。 多層の塗色構造とすることにより、光の反射を表面層と中央層の二部分に分け、分光効果によって発生する干渉波長を利用し、入射角度の変化に伴い、人間の目には異なる色として見えることになる。このマジョーラカラーは、組み合わせる色によって見える色も異なり、インパルのフォーミュラはアンドロメダ(グリーン/パープル)と呼ばれるカラーで塗られていた。なお、このマジョーラカラーは日本ペイントの登録商標で、アンドロメダというカラー名も同社のカラー呼称である。 キャンディのように、透き通って厚みのある輝きを見せるキャンディ塗装がある。カスタムペイントで多く使われる塗装方法で、下地に黒、次にメタリック層(シルバーorゴールド)、そしてクリアカラー層(着色層)で仕上げる方法で、非常に厚みのある発色(見え方)となり、見応えのある塗装の仕上がりとなる。 ほかには、ソリッド塗装の派生タイプで、マットブラック仕上げがある。自動車の塗装といえば、光沢のある仕上げが一般的とされてきたが、スーパースポーツカーや高級車で艶消し黒の塗装が用いられる例があった。表面を凹凸に仕上げる方法で艶消しとした塗装だが、塗装表面に凹凸があるため、ホコリや汚れがつきやすく、また塗装表面をこすると凹凸面が均されて平滑化され、艶消しが保てなくなる手入れの難しい塗装仕上げである。 見る側に新鮮な印象を与えるいくつかの光輝塗装は、通常の塗装とは異なる見え方となって付加価値の高さを感じさせてくれるが、その分だけ高価な塗装であることも記憶の片隅にとどめておこう。