【試乗】プジョー・リフターロングはオシャレ家族に最高のミニバン! 生活臭ゼロで「爆乗り爆載せ」可能な3列7人乗り車
この記事をまとめると
■プジョー・リフターのホイールベースを延長したリフターロングに試乗した■延びたホイールベースは車内空間の拡大に直結し、重量増でもプジョーらしい走りはそのまま■生活臭のないクルマに家族と荷物を満載して遊びに行きたいとき、リフターロングはピッタリだ
延ばされたホイールベースをほぼそのまま室内空間に変換
ひとり暮らしだしいつも友達とつるんでるわけでもなく、一部で「このままいけば孤独死まっしぐら」とからかわれる身の上。ゆえに僕自身は2列目以降のシートの必要性をほとんど感じない日常を過ごしてるわけだが、世の中では3列目シート+7人乗り乗用車の戦いが静かに繰り広げられてるようだ。ミニバンよりも洒落た感じのするSUVや小振りのMPVの本来ならラゲッジスペースとなる場所にふたり分のシートを設置したモデルが少しずつ増えていて、ファミリー層に注目されてるようなのだ。 そうしたクルマの場合、たしかに3列目のシートが備わっていて7人乗ろうと思えば乗れるのだけど、いちばん後ろのふたり分のシートは補助席のようなもので、日常的に使うにはきついというクルマが多い。普段は折り畳んだり収納したりでラゲッジスペースにしておいて、いざ必要になったときにのみ利用する、いわばエマージェンシー用シートというのが前提だ。家族や仲間と出かけることが多い人が「ないよりはある方がいい」と思う気持ちは理解できる。 でも、せっかくなら洒落た感じがして3列目までしっかり使えるSUVや小振りのMPVのほうがいいんじゃないか? なんて思っていたりもする。今回ここで紹介するフレンチMPV、プジョー・リフターロングがまさしくそういうクルマで、印象がよかったからだ。 リフターロングは、日本では2020年からカタログモデルが販売されている5人乗りのリフターをベースにした、その名のとおりのロング版。ボディのサイズは全長4760mm、全幅1850mm、全高1900mmで、ホイールベースは2975mmとなる。スタンダードボディより全長で355mm、全高で20mm、ホイールベースで190mm大きくなっているが、それでも十分に扱いやすいサイズの範疇にあるといえるだろう。 全高が20mm高くなってるのは車体のサイズや乗車定員が変わったことに対応すべくサスペンションのセットアップをやりなおしたからだが、ホイールベースとオーバーハングが伸びた分は、もちろん室内のスペース拡大に充てられている。 3人分がそれぞれ独立した2列目シートの後ろに備わった3列目のシートも2人分がそれぞれ独立していて、前後に130mmスライドさせることができる。なので、大人が座ってもまったく窮屈な感じがしない。むしろ2人分が少し左右に離れているので、3人分がギュッと横並びの2列目よりも、スペース的にはゆったりしてるくらいだ。ミニバン並みとまではいかないけれど、しっかり日常的に使える3列目、なのである。 そのうえ3列目シートは折りたたむことも取り外すこともできるし、2列目もそれぞれ個別に折り畳むこともできるから、シートアレンジも多彩。3列目を取り外して2列目をフラットに折りたたんだ場合の荷室容量は、スタンダードボディの最大2126リッターに対して2693リッターと、567リッターも大きい。使い勝手がさらによくなっていることは、わざわざ考えたり想像したりしなくてもわかろうというものだ。 そうしたメリットを得るために支払った代償──つまり長くなった全長とホイールベースに+50kgの重量増──のネガティブな影響は、リフターロングの走りっぷりからはまったく感じられなかった。
+50kgの重量増を感じさせないプジョーらしい走り
パワートレインはスタンダードなリフターと同じ、1.5リッター直4ディーゼルターボと8速ATの組み合わせ。旧PSA系のさまざまなモデルに採用されて極めて評価の高い、130馬力と300Nmを発揮するお馴染みのクリーンディーゼルだ。 たった1750rpmで300Nmもの最大トルクを発揮するくらいだから、ゼロ発進の段階から力強いし、混雑していたりストップ&ゴーが多かったりする街中でも扱いやすいし、ワインディングロードだって勾配などないかのように頼もしく登ってくれる。速度の伸びもよく、高速道路でもじれったいような気分になることはまずない。実用エンジンとして「本当によくできてるな」とあらためて感服する。+50kgなんて体感的にはまったく影響していない。 プジョーはブランド全体がスポーティ&コンフォータブルな乗り味を示すことで知られているが、リフターも同様で、たとえばブランド違いの姉妹車であるシトロエン・ベルランゴと較べると硬めの乗り味を示す。フカフカとはしていなくて引き締まった感触があって、けれどそれが少しも不快じゃなくむしろ快適。しなやかな筋肉とよく動く関節と柔らかな肉球、みたいなプジョーらしいフィーリングの範疇にある。4つの足がギュッと踏ん張りながら路面をつかんで、背が高いのによく曲がる。何とも絶妙なのだ。 リフターロングも、まったくそのまま。車高を20mm上げてまで調整し直しただけのことはある。ワインディングロードではホイールベースが190mm伸びてることで内輪差に気を使う必要があるかと予想していたが、さほどでもないし、車体が355mm長くなったからといってタイトめな九十九折りでも持て余すほどではない。つまり、楽しく気持ちよく曲がれるMPVのまま、だ。 せっかくだから触れておくけれど、アウトドアでの遊びを意識してるところのあるリフターには、「ノーマル」「スノー」「サンド」「マッド」「ESC OFF」の5つのモードを切り替えることで悪路での走破性をキープする、トラクションコントロールをベースとした電子デバイス、アドバンスドグリップコントロールが標準で備わっていて、リフターロングもそれに準じている。 走ったのが真冬の軽井沢だったこともあって、雪が残る道や凍ったエリアを渡らないと先へ行けない駐車場などにも足を踏み入れることになったのだが、スタッドレスタイヤとのコンビネーションで、想像してた以上のグリップを見せてくれて軽く驚かされた。これなら前輪駆動でも問題なし、と思えるくらいの安心感だった。 日本車にはない独特の雰囲気、力強く楽しい走り、+2まで含めてだいぶ快適な居住性。さて、ほかに何が必要? リフターロング、なかなかいいぞ、と思う。 生活臭のない6人家族/7人家族向けのクルマが欲しいと考えてる人、家族や友達と連れ立って遊びに行くのが好きな人、4〜5人+ギア満載でアウトドアアクティビティを満喫しにいきたい人、などにはまさにピッタリ。きっちりとオススメできる1台、と断言しておく。