右折中に後ろのバイクに右側から抜かれた! 交差点での「イン差し右折」は違法じゃないのか?
この記事をまとめると
■バイクのイン差し右折は合法か違法かを考える■横断歩道のある交差点では追い抜きも追い越しも禁止のために違法となる■横断歩道のない交差点で車線を変えずに前のクルマより先に右折するのも許されないと考えるのが妥当だ
横断歩道のある交差点での追い抜きは禁止
レースでは、コーナーのエントリーのブレーキング勝負で前のクルマのインを差し、オーバーテイクを決めるシーンは珍しくないが、ごく稀に街中の交差点でバイクが右折待ちをしているクルマの右側をすり抜けて、そのままクルマより先に曲がっていってしまうことがある。 あれって、法律的に許されるのだろうか? バイクの追い抜きに関してはグレーゾーンの部分があって、たびたび論議になるのだが、今回取り上げたケースでは、その交差点に横断歩道があれば、バイクの追い抜きは違法になる。 根拠になるのは、道路交通法38条3項。「車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(軽車両を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない」 ここに「側方を通過してその前方に出てはならない」とあるので、横断歩道のある交差点では、追い越しも追い抜きも違反になる。 大事なことなので、ここで追い越しと追い抜きについてもおさらいしておこう。 追い越しとは「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう」(道路交通法第2条の21) 一方、追い抜きについては、じつは法律=道交法ではとくに規定がない……。一般的に便宜上、クルマが進路を変えずに、進行中の前の車の前方に出ることを追い抜きという。 法律上、追い抜きに関する規定がない以上、それを禁止する項目がないわけで、車線変更を伴わない追い抜き、いわゆるすり抜けについて、違法性を問うのは難しい。
横断歩道のない交差点の追い抜きはグレーゾーン
ただし、下記の9つの場所では、クルマもバイクも追い越しは禁止。 ・標識などにより追い越しが禁止されている場所 ・道路の曲がり角付近 ・上り坂の頂上付近 ・勾配の急な下り坂 ・トンネル(車両通行帯の設けられた道路は除く) ・交差点とその手前から30m以内の場所(優先道路を通行している場合を除く) ・踏切とその手前から30m以内の場所 ・横断歩道とその手前から30m以内の場所 ・自転車横断帯とその手前から30m以内の場所 したがって、横断歩道のない交差点でも、進路を変えて前走車の前に出ることはNGになる。 では、横断歩道のない交差点で、車線を変えずに前のクルマより先に右折するのはどうなのか? 道路交通法 第30条(追越しを禁止する場所)を見ると、上掲の9つの場所では、「追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない」と書かれている。ここに『追い越すため』『前車の側方を通過してはならない』とあるが、追い越しではなく、追い抜きならOKともいえなくもないが……。 この辺がグレーといえばグレーだが、法律の趣旨からいえば、追い抜きだって許されないと考えるのが妥当だろう。まして交差点では、右折車と直進車の事故、右直事故が多いので、右折待ちをしているクルマをインカットして抜いていくようなマネは、危険なのでやめてほしい。 その反面、右折の矢印付き信号がある交差点だと、対向車が途切れているのに、矢印の信号が点くまで右折を開始しないクルマもたまに見かける。こういうクルマは、後ろのクルマをイライラさせ交通の流れが悪くなるので、安全が確認できたら速やかに右折を開始するよう心がけよう。