乗務員不足で減り続けるタクシー! 過疎地域の「移動手段がない問題」の解決は海外では当たり前の「ライドシェア」にあり
この記事をまとめると
■国交省が過疎地域など公共交通の不便な地域の移動手段を議論する有識者検討会を行った■稼働台数が減少しているタクシーについても話題にあがった■タクシー減少の対策にはライドシェアサービスの活用が効果的と考えられる
タクシー乗務員が圧倒的に足りない
報道によると、国交省(国土交通省)が2月20日に過疎地域など公共交通の不便な地域の移動手段を議論する有識者検討会の初会合を行ったとのこと。会合ではタクシー業界への参入規制緩和や、自家用有償旅客運送(つまりライドシェアサービス)の活用拡大などが出席者から出ていたという。なお、この会合では5月下旬に具体策の中間とりまとめを行うとのことでもあった。 この会合は公共交通機関の手薄な過疎地域を対象にしたものとのことだが、タクシーについては都市部でも稼働台数の減少傾向が顕在化し、さらに常態化している。これは高齢などを理由としてタクシー乗務員から離職する人の数に対し、新たにタクシー乗務員になる人の数が圧倒的に少ないことが挙げられる。 近年では大学卒業後そのままタクシー乗務員になる若年乗務員が話題となっている。話を聞けば確かに若年乗務員は離職率も低いとのことだが、若年層が就職を目指すタクシー事業者は東京の一部大手タクシー事業者に限られているといっていいだろう。準大手や零細タクシー事業者では、乗務員としてだけでなく社会人として教育していく余裕がないこともあるが、タクシー乗務員を目指す若年層でもブランド志向が高く、また保護者を安心させるためにも大手事業者を目指す傾向が高いとも聞いている。 国交省は令和4年度第二次補正予算&令和5年度当初予算による、バス・タクシー・レンタカー事業に関する補助事業を進めるべく業界への要望調査を本稿執筆中に行っている。この補助事業には旅客運送事業者の人材の確保というものも概要として紹介されている。 けっして景気が良いとはいえないなかでも広く世の中では働き手不足がまん延している。そのなかでタクシー乗務員を目指す人は少ないのが現状。政府としてはおもに乗務員の収入向上や、二種免許取得費用などの補助で新たに乗務員を目指す人を増やそうとしているが、すでに金銭面での条件向上だけでは集まりにくいのが現状となっている。 テレビニュースなどで、ドライブレコーダーの映像としておもに酔客によるタクシー乗務員への暴行動画の紹介がひんぱんに行われている。また、タクシー強盗に遭遇する危険はいつもつきまとってくる。交通事故に対する不安も大きく、単にケガをするだけでなく、場合によっては逮捕され容疑者としてメディアで実名報道されるケースもある。 正社員採用される広い意味での法人タクシー乗務員も、サラリーマンであると考えると、一般的なサラリーマンより就業するリスクはかなり大きく、家族がタクシー乗務員への就職に反対するケースのほうが、昨今でのタクシー乗務員が集まりにくい状況の主要な要因ではないかともいわれている。 正業として日々従事しようとすると二の足を踏んでしまうこともあるだろう。タクシー事業者に稼働率向上を促すというだけではやはり問題解決はなかなか進まないだろう。そこで、やはり検討したいのがライドシェアサービスの導入である。一般ドライバーが空いた時間を利用し、自分のクルマでアプリにより配車要請された場所へ迎えに行き、目的地まで送迎するというのがライドシェアサービスのあらまし。
日本もライドシェアサービス導入が望まれる
先日訪れたインドの首都デリーでは、とくにわれわれ外国人の移動の足としてライドシェアサービスが定着していた。アプリから目的地を入力して配車要請すれば、原則会話もせずに目的地まで運んでくれる。筆者は都合により現金決済しかできなかったが、通常はクレジットカード決済となるので、支払いに関する面倒もない。インドのライドシェアサービスの料金は世界一安いともいわれており、使い勝手はかなり良かった。 遠距離ではスズキ・スイフトサイズのコンパクトセダンにし、近距離移動ならば三輪タクシーを呼ぶなど、用途に応じて車両クラスを選ぶこともできるので、とにかく手足のように使うことができた。配車要請するときに料金が確定するというのも、まさに明朗会計となり安心して利用できる。 日本でも大手タクシー事業者などがグループを組みんだいくつかのアプリ配車サービスを利用できる。利用手順はほぼライドシェアのそれと同じなのだが、すべてとはいわないが、筆者の利用しているサービスでは迎車回送料金が課金されてしまうところが気になる。 また、これは筆者個人の感覚なのかもしれないが、タクシーを呼ぶことになるのでインドでライドシェアを利用するような気軽さはなく、利用に際して気持ちを構えてしまうことが多い。たとえば都内の道路端でアプリ配車で呼ぼうとしても迎車回送料金を徴収されることを考えると、「少し待てば流しのタクシーがくるかもしれない(迎車回送料金を払わなくて済む)」などと考えてしまうこともある。 地方都市では、アプリをダウンロードしてさえおけば、そのサービスに参加している事業者がその地域にある限りは、確実にタクシーを呼ぶことができるため、一概に否定するつもりはない。 インドはタクシーというものがほぼ存在しない特殊な地域だが、たいていはタクシーとライドシェアは共存することが多い。そのような地域では、「近場はライドシェアで距離のある移動はタクシー」などと使い分ける人も多いと聞く。 筆者の住む地域もタクシーを無線配車してもらおうと電話すると、「今日は動いているタクシーが少ないので時間がかかる」「配車できない」などと案内されることも目立つ。そんなときに「ライドシェアがあったらなぁ」と思うこともある。 タクシーの稼働台数がなかなか増えないなか、空いている時間だけ自分のクルマで稼ぐことができるライドシェアサービスは、まさにフードデリバリーに従事するようなもので、ライドシェアで移動手段の補完をすることはさまざまな人の間でウインウインな結果になるのではないだろうか。 ただし、運ぶものが料理ではなく人間であることを考えると、利用者個々の自己責任という考え方が希薄な日本では、結果的にタクシー並みの利用コストを利用者が負担することになってしまうのではないかとも筆者は考えている。