守りに入らず攻め抜いて世界観を追求! 新型トヨタアルファード/ヴェルファイアのデザインを解説

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両者の距離感をしっかり取って各キャラクターをより明確に

 フルモデルチェンジとマイナーチェンジ。デザインを作り上げるうえでは、どちらにも違った苦労がある。フルモデルチェンジの場合は、当然ながらイチからすべてを作り上げていく苦労。そしてマイナーチェンジの場合には、限られた範囲の変更でどれだけ魅力を高めていくかという苦労だ。

 とりわけアルファード/ヴェルファイアのように、デザインが市場から高く支持されているモデルの場合、そもそものデザイン完成度が高いだけにその魅力をさらに高めることは至難の技。ゆえに、従来の魅力を損なわないことを最大の狙いとして、「守りに入ったデザイン」にするという選択肢が取られたとしても不思議ではない。だが、今回のマイナーチェンジでデザインチームが選んだのは、「攻めに攻め抜く」という選択肢だった。

「ご指摘の通り、守りに入るという選択肢もあるだろうとお考えになる方は大勢いらっしゃると思います。とくに高級車の場合は当然かもしれません。ですが我々は、高級車だからこそ攻めるべきだと考えたんです。市場から高いご支持をいただけたとしても、決して保守的になるのではなく、つねに新しい魅力をお客様に提供していきたいという想い。それは開発チームだけでなく、アルファード/ヴェルファイアに対する全社をあげての想いでもあるんです」(今飯田さん)

 高い完成度のデザインをさらに高めていくということ。その高いハードルに挑むためデザインチームが最初に行なったのは、徹底的にアルファード/ヴェルファイアのオーナーの声に耳を傾けるということだった。

「まずはわれわれデザイナー自身が各地のディーラーに赴いて、販売の最前線に立つ営業の方を通して、お客さまが感じている好評点と不評点を徹底的に認識するということから始めました」(濱野さん)

「お客さまの声は好評点がほとんどだったのですが、ヴェルファイアに関してはもっと攻めてほしいという意見がありました。一方で、初代のようなクールなイメージも欲しいという、方向性がまったく違う声もありました」(今飯田さん)

 デザインチームのリサーチ作業はさらに続く。初代・先代のユーザーごとに、「パワフル」や「スマート」、「クール/斬新/ハイセンス」などといった、アルファード/ヴェルファイアを語る数多くのキーワードを使って好評点・不評点を徹底的に分析し、アルファードらしさ、ヴェルファイアらしさをイチから見つめ直す作業を実施した。

「アルファードでは、従来型でも十分に表現できていた“アルファードネス”をさらに上方向に伸ばすこと。ヴェルファイアについては、少し豪華さが見え過ぎていて、アルファードの立ち位置に寄り過ぎていたのではないかと考え、もっとお客さまが望むクールでハイセンスな方向にしっかり舵を切っていこうと。さらに、標準ボディはクールテックな方向に、エアロボディはよりダイナミック・アグレッシブな方向で、両者の距離をしっかりととって、ヴェルファイアらしい姿をしっかり表現する。こうした考えのもと、実際のデザイン開発を進めました」(今飯田さん)

 アルファードとヴェルファイアの魅力をそれぞれでさらに際立たせ、さらには標準ボディとエアロボディの差別化をより明確にする。デザインチームが採った手法は、いわば、4つの車形をデザインするというものだ。先述の相反するふたつのユーザーの要望にも、しっかり応えられる方向性と言える。

「アルファードはフォーマルな場面で使われるお客さまも多く、たとえば政治家の方にもふさわしい立派さや高級感が必要です。そのための表現として重要な鍵を握るのはフロントのグリルですが、その変更についてはグリルの限られた枠のなかで色々な試みを行うだけでなく、もっとフロントを大きく変えてチャレンジするとか端正な方向に振るなど、色々な幅の方向性を模索しました」

「その結果から見えてきたのは、グリルの先端のアルファードマークからすべてが始まり、立体がリヤに向かって流れていくというデザインコンセプトです。加えて、グリルやヘッドランプ、メッキ加飾やバンパーなどをシームレスに融合させたデザイン。これらの方向性は、候補として描かれた3つのデザイン案のすべてにも貫かれていて、最終段階まで揺るぎない価値としてデザインに盛り込まれることとなりました」(北角さん)

内外装に加えボディカラーでもキャラクターの世界観を追求

 2015年に3代目アルファードが登場した際には、ボディサイドの豊かな抑揚に大きな注目が集まった。今回のビッグマイナーチェンジで生まれ変わったフロントマスクは、その特徴的な抑揚に対してさらに一体感を感じさせる、流れるような自然な融合を果たしたデザインと言えるだろう。

「ヴェルファイアについては、そもそもアルファードに寄ってしまったように見える原因がなんなのかを考えるところからスタートしました。真ん中に大きなグリルがあってランプがあるという、ある意味でクルマの王道的なデザインに近づいたことが原因なのではと分析し、それをもとにアイディアを展開しました。なかでも大切にしたのは、クールでハイテク感のある印象と、高級感との印象のバランスです。クールテックは行き過ぎると高級感と相反した印象を与えてしまうんです」

「最良のバランスを模索するために、一度はグリルがほとんどないというアイディアまで試しました。いくつものアイディアはデザイン過程が進むなかでふたつに絞られました。一般的なデザイン開発では、さらにそれをひとつに絞って立体モデルを作り、ブラッシュアップを図っていきますが、今回はふたつの案の両方を立体化して検討しました。1台の車体の右と左でデザインが違うというモデルを作ったんです。異例なことではありますが、クールテック感と高級感のさじ加減は本当に微妙で、スケッチだけでは判断できなかったんです。片側をよくしたらもう片側もよくしていくという煮詰め方を行なって、最終案に向けて完成度を高めていきました」(小島さん)

 大胆に生まれ変わったエクステリアは、空力性能にも徹底的に配慮。従来を超えることを目標に最後の最後まで風洞実験を繰り返し、0.1mm単位での修正を繰り返して完成させている。

「ランプの光らせ方にもこだわりました。フロントもリヤも2段になっていることをしっかりと見せるデザインです。従来型のヴェルファイアのフロントは、下側がターンランプだけなので、昼間はしっかり2段に見えますが、夜は上だけが光って見えていたんです。今回のデザインではフロント、リヤともに、夜間でもしっかり2段に見えるデザインになっています」(小島さん)

 攻めるデザインという意志は、外形カラーにも貫かれている。エアロボディ専用の新色として追加されたダークレッドマイカメタリックは、トヨタのLサイズ高級ミニバンとしては初の試みとなるものだ。

「ダイナミックアグレッシブなエクステリアをさらに際立てる新色です。数百メートル離れていても、新しいクルマが近づいてくることがわかるイメージで作り上げたカラーです。エスティマでも赤は設定されていますが、こちらは質量感を持たせたインパクトのあるダークなレッドです」

「また、定番のシルバー系カラーについても、今回は豪華勇壮、エレガントなど、上品さをより感じていただけるスティールブロンドメタリックを新設定(標準ボディのみ)しました。赤味を少し足したエレガントな印象で、とくにアルファードのふくよかなドア断面の陰影が美しく見えます。また、法人需要が伸びていることから、フォーマルなシーンにもふさわしいグラファイトメタリックも設定、こちらもこだわりを持って作り上げたカラーです」(山川さん)

 エクステリア同様、インテリアについても、いくつもの進化点を見つけることができる。なかでも注目したいのは、エアロボディにも追加された最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」の内装だ。

「ここ数年の社会の変化も見すえて、ヤングエグゼクティブや若いユーザー層をターゲットに、大胆不敵さを色でも表現することを狙いました。大きな特徴はホワイトの内装と、シルバーの木目調加飾です。この加飾にはインナー3Dプリントという手法を採用しており、光の当たり具合で凹凸がよりしっかり見えます。じつは標準ボディの加飾と同じ工法・木目なんですが、シルバーにすることで陰影がより深く出るんです」

「また、メーターについてもエグゼクティブラウンジ専用デザインを用意しました。ライトゴールドのメッキリングを施し、よりラグジュアリーな印象です。一方ほかのグレードでも、それぞれのイメージに合った加飾を施しています。ハイブリッドでは先進イメージを、標準ではより上品さが感じられる方向性に振ってあります」(山川さん)

 こうして作り上げられたアルファード/ヴェルファイアの新デザイン。その進化は、内装・外装ともにマイナーチェンジの枠では収まり切らないほど大胆なもの。攻めに攻めたデザイナーの熱い想いは、クルマの随所から感じ取ることができるだろう。

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