4WDと水平対向だけがアイデンティティじゃない! 世界初のCVT搭載量産車はスバル車だった
この記事をまとめると
■世界で初めて量産車にCVTを搭載して発売されたのはスバル・ジャスティだった■高価でクリープがなく、機械式変速比制御による動きなどで普及はしなかった■当時のノウハウが現在のスバルのCVT「リニアトロニック」に活かされている
世界で初めて量産車にCVTを搭載したのはスバルだった
今では多くの国産コンパクトカーに採用されているトランスミッションであるCVT。これはいわゆる無段変速機であり、変速比を幅広くとることが容易なため、出力の小さなクルマでも走行性能と燃費性能を両立させることができ、コスト面でも多段ATよりも安く済むというメリットがある。 そのため、軽自動車~コンパクトカーといった比較的ローパワーの車両に使われることが多いのだが、そんなCVTを量産車として初めて搭載したモデルをご存知だろうか? それこそが1984年にスバルがリリースしたリッターカー、ジャスティである。 このジャスティ、当初はリッターカーとしてデビューしたのだが、1985年10月には1.2リッターモデルを追加し、1987年2月に世界初のCVT搭載モデルをリリースしたのだ。 このこのCVTミッションはオランダのヴァン・ドルーネ社と共同開発したスチールベルト式CVTであり、スバルでは「ECVT(電子制御電磁クラッチ式無段変速機)」と呼んでいた。 だが、量販グレードが80万円台だったジャスティにおいてCVTモデルは7万円ほど高価であり、直接的な販売増にはつながらなかった。 また、乗り味もクリープがなく、エンジンの回転数と速度がアンマッチな点や機械式となっていた変速比制御によってギクシャクした動きを見せることがあった点も、当時広く普及しなかった理由と言われている。
ECVTでの経験が現在のリニアトロニックに活かされている
しかし、CVTのメリットを見抜いていたスバルは、軽自動車のレックスやサンバー、ヴィヴィオといったモデルにもECVT搭載車を設定し、当時提携関係にあった日産へも供給。2代目マーチに「N-CVT」という名称で搭載されていたほか、フィアットのパンダとウーノにも搭載されていたのだった。 ただ、このECVTは「電子制御電磁パウダークラッチ」を用いており、その名の通りパウダー状の磁性鉄粉を用いてトルクの伝達を行うのだが、このパウダーが経年劣化でサビたり磁力を帯び続けたりすると適切な伝達管理ができなくなり、最悪の場合走行不能になるというトラブルが発生してしまうのだ。 もちろん修理も可能だが、比較的低価格帯の車両に搭載されていたこともあって乗り換えを選択するユーザーが多く、気づけばECVT搭載車はかなり希少となってしまった。 ただ、このような経験があったからこそ、スバルは現在「リニアトロニック」と呼ばれる大トルクにも耐えうる、ドライバビリティの高いCVTを開発できたとも言えるのではないだろうか。