タイヤが地面に着かず浮かんでいる! トラックの「謎機構」の正体とは
この記事をまとめると
■大型トレーラーはタイヤを浮かせて走っていることがある■これは「リフトアクスル」というメカニズムによるもの■その狙いは主に高速道路における通行料負担の軽減
日本では高速通行料金が安くなる
物流を支える大型トレーラー、多くの荷物を積むためにはたくさんのタイヤで支えなくてはいけない。トラクターヘッドで2軸4輪、トレーラー側で3軸6輪、あわせて5軸10輪といった大型車両を見かけることも珍しくないだろう。 そんな大型トレーラーの足もとに注目すると、ときおりタイヤが浮いていることがある。これは故障ではなく「リフトアクスル」というメカニズムによるもので、その狙いは主に高速道路における通行料負担の軽減だ。 たとえば、トラクターヘッドが2軸、トレーラーも2軸の4軸8輪の大型車両があったとして、トレーラー側の1軸を浮かせると、3軸6輪の状態になる。これにより、高速道路における通行料区分が「特大車」から「大型車」にダウングレードされる。通行料が下げるというわけだ。 だからといって自由にリフトアクスルをするのは違法行為になる。リフトアクスルシステムは、軸重(≒積み荷の重さ)によって自動的に上がったり下がったりする。空荷に近いときはタイヤを浮かせて運送コストを抑え、しっかりと荷物を積んでいるときはすべてのタイヤを接地させて、しっかりと支えるという非常に合理的な仕組みなのだ。 というわけで、リフトアクスルは高速道路の通行料を抑えるための仕組みと理解できるわけだが、それだけがメリットとは限らない。実際、海外でもリフトアクスルシステムは採用されている。 積載量が少ないときにタイヤを浮かせることが燃費にポジティブだからだ。大型トレーラーのタイヤは、ただ転がっているだけでもそれなりの走行抵抗がある。積み荷を支える必要がないときにタイヤを浮かせておけば燃費が有利で、その効果は5%程度が期待できるというのだから、かなり大きい。
空気圧によって作動させるのが基本
そのため高速道路を走らないようなトレーラーであってもリフトアクスルのメリットはある。とくに往路は空荷、復路は荷物満載といった使われ方をする場合には、リフトアクスルを採用するメリットは大きい。通常のロジスティクスであれば、できるだけ空荷状態が生まれないような運用を目指すが、木材や鉱物を運搬するような用途では必ず片道は空荷になる。そうしたケースでもリフトアクスルは有効というわけだ。 またリフトアクスルは車高調整機構と同義といえる機能であるから、荷役環境の改善にも活用できる。荷台の高さを調整することで荷物を積みやすくできるというメリットもある。こうした機構をプラスすることは車両価格を上げてしまうが、トータルで見たときのコストとしては抑えられるということで、選ぶ事業者は多い。 では、リフトアクスルというのはどのような仕組みになっているのだろうか。 簡単にいえば、空気の力でアクスル(車軸)を持ち上げるようになっている。空気バネでアクスルを引き上げるタイプ、チャンバーを使ってトレーリングアームを持ち上げるタイプなど構造は複数あるが、いずれにしても空気圧によって作動させることが基本となっている。 そのため、リフトアクスル機構はエアサスペンションとセットになる。 荷物を安定して運ぶことができるエアサスペンションは大型トレーラーでは採用しているケースが多く、もともと圧縮空気の配管やシステムを組んでいることがリフトアクスルシステムと親和性が高い。ゼロからリフトアクスルシステムを搭載するよりは、ずっとコストアップの幅が小さいことも、その普及につながっている。