上級国民のせいで酷い渋滞が緩和されない? バンコクの新駅建設にみる「格差社会」のひずみ

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この記事をまとめると

■タイのバンコクで主要駅が移設される■バンコクの慢性的な渋滞を解消するために行政は鉄道整備を進めている■だが上級国民の感覚で都市整備をするために渋滞が解消されない側面があるという

バンコクの幹線道路でも「私有地」が多い

 情報によると、2021年12月にタイの首都バンコクにある“フアランポーン駅”がその役目を終え、後継新駅となるバーンスー中央駅に全面的に業務が移管されるとのことである。 フアランポーン駅は、タイ国有鉄道(SRT)とバンコクメトロ(MRT)が乗り入れており、“バンコク中央駅”などとも呼ばれ、1897年の開業以来長い間バンコクの“表玄関”のひとつとなっていた。 興味深いのは、東京の渋谷駅など、既存の駅を大改修するのではなく、まったく別の場所に、新しいバンコクの中央駅を建設しているのである。日本でいうならば、東京駅をベイエリアに引っ越しさせるようなものともいえよう。 バンコク市内のコロナ禍前の交通渋滞は名物といえども、かなり深刻なものであった。コロナ禍となってしばらくはそんな渋滞も解消されたようだが、最近になって再び戻ってきているとのこと。モーターショー取材のために、バンコクへ向かうと筆者の利用する航空会社はスワンナプーム国際空港に到着する。しかし、モーターショー会場はバンコク市内中心部を挟み反対側にある。そのため、タクシー乗り場でドライバーにモーターショー会場近くのホテルまでと行き先を告げると大騒ぎとなる(「バンコクの渋滞を知っているのか」などとよく言われる)。 筆者はまだまだ修行が足りないようで、バンコクでタクシーに乗った時はまず料金メーターを入れてくれない。つまり、ドライバーとの交渉で料金が決まるのである。「渋滞が激しいのでメーターを入れるととんでもない料金になるので親切心でメーターを入れないのだろう(ドライバーはメーターを入れなければ、料金すべては自分のものとなる)」と前向きに考え、いつも料金交渉するのだが、プロドライバーが嫌がるほどバンコクの渋滞がひどいのは間違いないようだ。 行政も渋滞を緩和するためにバンコク市内の鉄道網の整備を続けているのだが、なかなか激しい渋滞の解消にはいたっていない。単純に経済成長に伴いマイカーが増えているだけではなく、東京のような抜け道がほとんどないのも大きな要因のようである。バンコク在住の知人がその背景について面白い話をしてくれた。「バンコク市内の道路は大きな幹線道路であっても、“私有地”が多いと聞いております。振興開発地域では、幹線道路へ向けた小道は、かつて奥まって建てられた有力者の別荘の玄関から大通りへ出る私道であったり、運河を埋め立てたりしたものが大半と聞いております」ということらしいのである。話の真偽は別として、現状を見れば思わず納得してしまう話である。

庶民の利便性よりも「上級国民」の意向が優先

 バーンスー中央駅からは、郊外へ向けた“SRT(タイ国鉄)レッドライン(東京でいえば、上野東京ラインなど中距離通勤電車といったところ?)”が開通しており、バンコク市中心部から地下鉄でバーンスー中央駅まできて、レッドラインに乗り換えると、それまでタクシーやバスしか交通手段のなかった、ドンムアン空港(バンコク首都圏のもうひとつの主要空港、ここならモーターショー会場に比較的近い)へ鉄道で行くことができ、交通渋滞に悩むことなく移動することが可能となった。ちなみにレッドラインの建設には日本が官民で深くかかわっており、車両も日本企業製のものとなっている。 まだまだ鉄道網全体としては不便なところもあるようだが、着実に充実してきており、いつの日か、渋滞の全面解消はなくとも、緩和に大きく貢献することになりそうだ。 コロナ禍直前にバンコクを訪れた時に、前出の現地在住の知人が興味深い話をしてくれた。「バーンスー中央駅の近くには、もともと“モーチット・マイ・バスターミナル(北バスターミナル)”があるのですが、中央駅とバスターミナルの距離が、歩いて移動するには微妙に離れているのです。中央駅があるのは再開発地域なので、よりバスターミナルに近い土地がなかったというわけでもないようです。日本ならば、中央駅とバスターミナルを直結させて利便性を高めるところなのですが、そのような発想がここ(タイ)にはないのです」とのこと。 ほかにも、大規模ショッピングモールを建設したのはいいが、最寄り駅から歩くのには微妙に離れているといったケースもあるとのこと。「都市設計をするような上級官僚は、日本でいうところの“上級国民”出身者が多いようです。このひとたちは当然裕福であり、幼いころから移動手段は運転手付きなどのクルマのみとなります。そのため、“駅とショッピングモールが直結していれば便利”とか、“鉄道駅とバスターミナルが直結していれば乗り換えに便利”という発想がもともとないことが大きく影響しているようなのです」とのこと。 確かに市内中心部でも、かつて日系デパートもあったショッピングエリアが高架鉄道の駅と駅の間にあるのが、いつも不思議に思えていた。知人にいわせれば、微妙に距離が離れていることで、たとえば駅とショッピングモールを結ぶ“モーターサイ(バイクタクシー)”が営業開始するなど、新たなビジネス創設に一役買っていると前向きに見ることもできるとも語ってくれた。 東南アジアの“格差社会”のレベルは日本の比ではないと言われているが、その“ひずみ”といっていいものが都市開発に及んでいるのならば、実に興味深い話である。

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