冬は「運転支援機能」の過信に注意! 「自動ブレーキ」や「クルコン」が十分な性能を発揮しない可能性アリ
この記事をまとめると
■先進運転支援システムの普及は事故軽減に寄与している■しかし雪道走行では十分に性能を発揮できないこともある■注意すべき点について解説する
雪道では制動距離が伸びる
警察庁の発表によると、令和3年(2021年)の交通事故発生件数は30万5425件、負傷者数36万1768人、死者数は2639人で過去最少となった。コロナ禍において自動車回帰の流れもあるなかで、すべての要素で前年比マイナスというのは、日本の交通社会が安全になっていることを示している。 その要素としてもっとも大きいのは、先進運転支援システムの普及だろう。とくにAEB(衝突被害軽減ブレーキ)の普及は、事故件数の減少に貢献しているはずだ。同時に、各種エアバッグや衝突安全ボディの普及は怪我を軽くすることにつながり、負傷者や死者を減らしていることは間違いない。 さらにACC(追従クルーズコントロール)や車線中央維持といった運転支援機能はドライバーの疲労軽減という点でも、またミスをカバーするという意味でも、安全な交通社会に貢献しているはずだ。電子制御が事故を減らしているといっても過言ではない。 ただし、そうした「運転支援」機能を過信してはいけない。とくに、雪道では十分に性能を発揮できない部分がある。 たとえばAEBの作動時を考えてみよう。筆者が知っている限り、道路状況によってAEBの作動ポイントを変えているというメーカーはない。つまり、ドライの舗装だろうが、滑りやすい雪道だろうが、同じ速度で走っている限り衝突を回避するためのブレーキングポイントはほぼ同じになるといえる。 当然、雪道は路面ミュー(摩擦係数)が低いために同じ位置からのブレーキングでは、舗装と同じように止まることはできない。衝突被害を軽減することはできても、衝突回避はできないというケースは少なからず生まれるはずだ。もっとも、人間の運転でも雪道では早めにブレーキをかけないと舗装路と同じように止まれないのは同様で、機械だから制動距離が伸びるという話ではない。
ACCの車間は長めに設定すると良い
同様の理由で、ACCを使う際にも積雪路では配慮が必要だ。先行車との車間距離を保つ際にエンジンブレーキ、機械ブレーキを併用するが、いずれにしても路面が滑りやすいときは制動に必要は時間や距離が長くなってしまう。 メーカーも安全マージンはとっているが、ユーザーとしても車間距離(3~5段階程度で調整できる)を長いほうに設定するなど、先進運転支援システムを安全運転に有効活用できるよう工夫することが重要だ。 これは雪道に限った話ではない。雨の日にACCを使う際は車間距離設定を長くするなど、状況に応じて調整することが重要だ。ACCのことを自動運転の入口といえる機能として説明することもあるが、まだまだ人間側で最適な設定をすることで自動運転的な振る舞いをする機能と捉えておくべきだろう。 また、最近の先進安全装備として白線(区画線)を検知して車線にあわせて操舵支援をしたり、車線逸脱を抑制する機能を備えたクルマも増えているが、そもそも積雪路では区画線が見えなくなっていることも多く、どこから路外なのか判別しづらい状況も多い。 つまり、車線中央維持、車線逸脱抑制といった機能は雪道では適切に作動しない可能性がある。その場合、クルマ側からコーションが出てくるものだが、ドライバーとしては、区画線を検知することを前提として先進安全装備は機能していないというくらいのつもりでいた方がいいだろう。 こうした判断をするには、先進安全装備がどのようなセンサーを使っているのかを理解しておく必要もある。前述した区画線認識はカメラで行なっているため、人の目で判別できないくらい路面に雪が積もっていればクルマ側の認識できていないと予想できる。 また先行車や歩行者を検知するセンサーについてもカメラを使っている場合は、雪が激しく降っている状況では十分な機能を発揮できない可能性がある(その場合はメーター内にワーニングが出るケースが多い)。 一方、ミリ波レーダーはそうした悪天候下でもカメラタイプよりはセンサーとしての機能は維持しやすい。平常時にはカメラだけでも十分に検知できるにもかかわらず、レーダーを併用しているシステムが存在しているのは、雪道のような悪条件における冗長性を確保するという意味もあるのだ。 冬は雪が積もるような地域であれば、クルマ選びの段階からそうした部分にも配慮するといいかもしれない。