最近タイヤメーカーがしきりに配合をアピールする「シリカ」って何もの?
この記事をまとめると
■最近シリカの配合をアピールするタイヤが増えている■タイヤに使われるようになったのはここ20年ほど■シリカの特徴やメリットについて解説する
本来は相反する性能を両立することができる
タイヤというのは発明以来、形は基本的に同じで、色も最初は白だったのがしばらくすると黒くなった。つまり長い間、黒くて丸いままということになる。黒いのはなぜかというのはよくネタになっていて、カーボンブラックと呼ばれる原材料が配合されているから。その名称からもわかるように炭素の粉で、これを混ぜることで分子の結びつきが高まり、ゴムの弾力性や強度を増すことができる。 長い間、そして今もカーボンブラックを使用しているものの、新たに使用されるようになってきたのがシリカと呼ばれる素材。物質としては珍しいものではなく、地球上では酸素の次に多いもので、いろいろな産業に使われている。別名ケイ素と呼ばれ、コーティング剤の成分として聞いたことがあるだろう。ちなみにタイヤに使われるようになったのはここ20年ぐらいだ。 タイヤに混ぜると、カーボンブラックのように分子の結びつきを高めてくれ、柔軟性に富む。また、低温やウエットでもしなやかさを失わないという効果を得ることができる。本来は相反する性能を両立しているのはシリカのおかげで、当初スタッドレスタイヤから使用され始めたのはこの利点のためだ。柔軟性に富みながら、形状に復元力も高く真円を保ちやすいことから、最近ではエコタイヤにも欠かせない素材となっている。さらに高温にも強く、熱ダレもしにくい。
シリカはゴムと混ぜにくい
かなり万能かつ高性能な素材なのだが、今まで普及していなかったり、カタログで大々的に採用を謳うにはワケがある。それはゴムと混ぜにくいというもの。従来のカーボンブラックは逆に混ざりやすいだけに、新たな課題として出てきたというわけだ。 カップリング剤と呼ばれる異なる素材を結びつける成分の選択、混ぜる温度や時間を高度にコントロールする必要があり、各メーカーのノウハウが必要となるだけに、採用を大きくアピールしているということがある。配合量は最近のタイヤでは大量といってよく、逆にカーボンブラックはかなり減ってきている(使っていないタイヤもある)。 さらにシリカにも弱点はあって、絶縁素材であること。タイヤは回転する際に静電気を帯び、そのまま帯電していると性能が低下してしまう。トヨタのアルミテープがいい対策例だ。カーボンブラックは炭素なので導電性が高く問題はなかったが、シリカではこの点が問題。その対策としてアース線をトレッドに埋め込んでいる。よく見ると数本の筋が入っていて、溝が細かくないバイク用だとわかりやすいので、機会があったら見てみてほしい。 最後に、これは欠点とまではいかないが、シリカは白いので大量に入れると黒さが出ないというのがある。わざわざ色をつけていたりするが、最近のタイヤは新品でも灰色っぽいのはシリカが原因だったりする。